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第29回1000字小説バトル Entry1
いつものように帰宅したサキはパソコンのスイッチを入れた。
夜の冷え込みが厳しくなってきているせいか
おきまりのアイスカフェラテがカフェラテへと変わった。
ひとくち飲むと、右手のマウスはメ−ルボックスをクリックする。
仕事がらみが2件、それとケンからのメールだった。
サキは当然のようにケンへの返信メールを打ち始めた。
ケンとはサキが思いをよせている人のことだ。
最後に?マークがくるような内容を、必死に考えた。
実はこのマークが1番大切で、これがあれば返事が返ってくる率が高くなる。
つまり、質問したら必ず答えが返ってくるというサキのよみだ。
returnキーをたたくと、ニンマリした。
サキは返事が来るのを待ちがてら、仕事のメ−ルの返信作業に入った。
ようやく一段落つきケンからの返事をチェックした。
しかし、何度送受信をクリックしても何も受信されない。
「おかしい」
仕事が残っていて家のパソコンの前から離れられない……というメールがきていたのに。
「まずい」
そう思うのもつかの間だった。
頭の中では次々と変なよみが生まれていく。
なぜ?という言葉に答えるように、いろんなよみが闇をつくりあげていった。
しかし、考えようによってはいくらでも闇を吹き飛ばすことはできるのだ。
もしくは電話をかければそれこそ一件落着するのに、サキは携帯電話に目も向けない。
どうやら勝負にでたらしい。
気を紛らわそうとするが、ぜんぜん効果はない。
こうしている間にも時間が闇を育てていく。
この待ち時間がどんどん頭の回転を速めていくのだ。
「なんてこった」
「待ち」に踊らされているのが手にとるようにわかった。
「待ち」が私をあざ笑っている、「待ち」が私を食いはじめている!!
じっとしていられなくなったサキは部屋中を歩き回る。
いっこうに返事は来ない。
だいたいこんなことを勝ち負けと考えることがおかしい。
しかし、サキはいつかは勝ってやると毎回挑戦しては破れ去っていた。
イライラが限界まできていた。
ちらちら横目で携帯電話を見ている自分がいる。
「またしても私は負けるのだろうか?」
「いや、あともう少し……」
サキは携帯電話の短縮番号を押した。
「もう限界」
また負けてしまったのだ。
しかしケンの声が聞こえたとたん、そんなことはどうでもよくなった。
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