第29回1000字小説バトル Entry2
砂というものは物を隠すのに非常に良い場所である、
ということが分かった。その証拠に、隣の犬も、妻も、
野崎さんも見つかることなく、行方不明のままなのだから。
私は年に一度、この限り無く広がる砂地を訪れる。
皆、元気だろうか。
犬のジョンはここへ、妻は海を見渡せるあそこ。
野崎さんは枯れ草が舞っているあの辺りだ。
ジョン、あの狭い庭と違って、ここなら思う存分駆け回れるぞ。
令子、ここならストレスを感じる事なく、お前の好きな海を
毎日眺めていられるだろう。
そして、
野崎さん・・・毎日、口癖の様に『疲れたよ。何処か広い、
静かなところでゆっくりしたいなあ。』と言っていた願いが
叶いましたよ。
皆、元気かい?
ひゅう、と、冷たい風が、砂地にくるくる旋毛をまき、
私は静かに震えながら涙を流していた。