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第30回1000字小説バトル Entry27

子守唄

 ああなるほどな、とあたしは思った。
 公園のベンチに腰掛けながらあたしは、ああなるほどな、と思った。
 太陽がさんさんと降り注いでいる。小鳥が小さく鳴いている。青い空に、まるでおもちゃみたいな雲が浮かんでいる。
 緑の芝生。白いベンチ。ブランコ。滑り台。
 この季節にしては暖かな日差しの12月の公園で、独りベンチに座りながらあたしは、ああなるほどな、と思った。
(やっと解かった気がする)
 あたしは公園を眺めた。
 ハトの群れ。冬なお緑の木々。
(やっと解かった気がする)
 視線の先の様々なもの。様々な命。様々な死。様々な繰り返し。様々な世界。世界。
 世界。
(それらはただそこに在り。それらはただそれだけで美しく。それらはただそれだけで永遠で。)
 ああなるほどな、とあたしは思った。
 世界。世界の意味。世界の美しさ。
(やっと解かった気がする)
 やっと。
(世界は美しく。どこまでも美しく)
 冬の日差しの中、暖かな光の中あたしは、ああなるほどな、と思い、なるほどだから、だから、だからだからだからアハハハハハハ!
(だから全部くだらないんだな)
 と解かりアハハハハハ、アハハハハ! 笑いが止まらなくなった。
(全部くだらない)
 アハハハハ、アハハハハハ!!
(全部糞食らえ)
 アハハハハ、アハハハハ! ああおかしいアハハハハハハ!
 あたしは笑いながらバッグを探り、拳銃を取り出した。
 拳銃。
 駅前のガイジンが三万円で売っていた拳銃。自分への誕生日プレゼント。初めて心から欲しいと思った、小さな黒い十字架。
 拳銃。
 あたしは優しく、抱くように銃口を胸に押し当てた。
 それは黒く、冷たく、堅く、人工的で、だから優しくて。
 とても嘘っぱちで、だから優しくて。
 子守唄のように、優しくて。
「さよなら」
 呟いてみた。
「さよなら」
 さよなら美しい世界。さよなら暖かな世界。さよなら正しい世界。さよなら。
「さよなら」
 さよなら夏の海。さよなら冬に降る雪。さよなら思い出達。
「さよなら」
 さよならパパ。さよならママ。
「さよなら」
 せよなら愛すべき世界。さよならあたしを愛してくれた世界。そしてあたしがどうしても愛せなかった世界。どうしても許せなかった世界。
「さよなら」
 呟いてみた。
 何故か涙が溢れ出して頬を伝った。
 その涙の暖かさがイヤで、あたしは引き金をひいた。
「さよなら」
 子守唄のようなさよならと破裂音を、あたしは確かに聞いた。

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