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第30回1000字小説バトル Entry9

適時

「また降ってきた」
「本当だ。お前雪って好き?」
「別に嫌いじゃないよ。ただバイクだと危なくなるから、それが嫌だ」
「気をつけたほうがいいぜ」
「ああ、死ぬときは派手にふっ飛んでやるよ」
「やめろよ、縁起でもない」
「でも、どうせ事故るなら即死のほうがよくない?」
「まぁな、植物人間なんかになってもなぁ」

「俺、前に事故で鎖骨が折れただろ? ぽっきりと」
「ああ、治るのに半年以上かかったやつな」
「あれは辛かった。手術で肩になんか入れられて、半年してまた肩開いて」
「うぅ、気持ちわりぃ」
「手術中の写真見せてもらったんだけど、肩のとこぐちょぐちょ」
「もうやめようぜこの話、気分悪い」

「だな。まぁそれで、今は元気だけど……」
「なに?」
「うん。俺は本当は、あの事故で死ぬべき人間だったんじゃないかって」
「……」
「事故の後、まったく心動かされる出来事が無い。」
「そうか? それなりに楽しんでるように見えるけど」
「それなりにな。でもそれらは、あってもなくても同じことなんだ」
「いまいち、つかめないな……」
「人には、その人だけに与えられるイベントみたいなものがあると思うんだ」
「それはなんとなくわかる」
「どんなにつまらない人生だろうと、そのイベントは確実に現われる」
「ああ、気づかない馬鹿もいるけどな」
「そういうことだ。それはもう俺には起こりえない」
「そんなことはない」
「極端に言ってしまうと、事故の後は生きてないのと同じだ」
「考えすぎだ。まったく気づかなくても普通に生きてるやつもいる」
「確かに。羨ましいな」
「お前もそうなればいい」
「だめなんだ。俺は終わったことを感じ、そのことを理解してしまっている」
「かまわないだろ。楽しさや悲しみを感じられれば十分だろ?」

「お前にはわからないよ……」
「なら自殺でもしたらいい」
「……」
「……」
「そんなに怖い顔するなよ。別に絶望的になってるわけじゃないんだ」
「……」
「ただそういう話をしたかっただけなんだ」
「じゃあ全部うそってことか?」
「いや違う。本当だ。紛れもなく本当だ」
「なんだ。自殺したがってるんだと思った」
「お前がどんな顔するかと思ってな。ちょっと悲観的に話しただけさ」

「俺は死ぬべき時に死ねるかな?」
「さぁな」
「いつなんだろ」
「さぁな」

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