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第34回1000字小説バトル Entry14

春のスケッチ

春の河原の土手に、ヨモギが生えていました。
川の水は透明で、さらさら流れていました。
細い体をした魚の群れが浅瀬を泳いでいました。
ヨモギの芽が出ると、それを摘みに親子がやって来ました。
「お母さん、これがヨモギなの。」
と子供が聞きました。
「そうよ。それが草もちになるのよ。」
とお母さんが答えました。
「摘んでもいいの。」
と子供が聞きました。
「いいのよ。やわらかい芽だけを摘むのよ。」
とお母さんが答えました。
子供の小さな指が、柔らかなヨモギの芽を摘みました。
ヨモギからとてもいい匂いがぷーんとしました。
子供はヨモギの芽を摘んで、紙の袋に入れました。
お母さんと子供はいくつもいくつもヨモギの新芽を摘みました。
紙の袋がいっぱいになるとお母さんが言いました。
「もうこれで草もちが作れるわ。」
お母さんと子供は帰って行きました。
夕日が西の空に広がっていました。
飛行機が長い雲の尾を引いて飛んで行きました。

次の朝になりました。
太陽はまだ出てはおらず、東の空が茜色に染まって、
白いうろこ雲がを空の半分を覆っていました。
老夫婦がやって来ました。
「おばあさん、これがヨモギの芽なのかい。」
おじいさんは聞きました。
「そうよ。これがヨモギの芽なのよ、おじいさん。」
とおばあさんは答えました。
「これがヨモギ茶になるのかい。」
とおじいさんが聞きました。
「そうよ。ヨモギの芽を摘んでそれを干してお茶にするのよ。」
とおばあさんは答えました。
「それで私の体も良くなるかな。」
とおじいさんが聞きました。
「そうねえ。良くなるとといいわねえ。」
とおばあさんが言いました。
おじいさんとおばあさんはヨモギの芽を摘みました。
紙の袋がいっぱいになりました。
おばあさんは、袋の中の匂いをかぐと
「いい匂い。」
と言いました。
ふたりは手をつないで帰って行きました。
東の空にはもう太陽が高く昇っていました。

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