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第36回1000字小説バトル Entry1

招待状

 昔好きだった女が初めて僕に電話をかけてきた。彼女は中学時代の仲で、ただ僕の片思いだったのだが、卒業する時に彼女の携帯番号を聞いたのだった。彼女に彼氏がいた事は知っていた。だが関係をそれまでにする事は出来なかった。彼女は彼氏に男に電話番号を教えるなと言われていて、そのかわりに僕が彼女に僕の電話番号をしつこく教えていたのだ。単純な番号だったため彼女は覚えていてくれたのだろう。東京に上京してきて三年が過ぎていた。彼女からの言葉はこうだった。
「あたし結婚したから。それで招待状送りたいんだけど住所昔のままでいい?」
「うるせえ」
僕はすぐに電話を切った。あの時の彼氏と結婚したのだろう。僕はそいつに負けたのだ。
 それから僕は友達と待ち合わせしていた池袋に向かった。東京に来てからその友達としか遊んでいない。言ってしまえば僕の性格が内向的なのかもしれない。
 僕はこの世の終わりのような顔をして道を歩いていた。そんな僕を見つけた客引きのお兄さんが肩を叩いて声をかけてきた。
「どうですか、ソープなんですけど一時間抜き放題なんで」
僕はかまわず無視したがそいつはしつこかった。前を歩く僕の肩を何回も叩いてきた。
「お兄さん、抜き放題ですよ。抜きたいんでしょ?」
僕は腹が立って振り返った。するとすぐにそいつは叩くのをやめた。前を向き直して歩く僕の背中にそいつの声が聞こえた。
「オナニーすんなよー」
僕は悔しくて泣きそうになってきた。だが戻って殴ってやる勇気もない。
 待ち合わせしていたゲームセンターに着くと友達に笑い話のようにさっきの事を話してやった。だが友達は笑わなかった。
「そいつボコりにいくぞ」
僕の顔にまだ泣きそうな顔が残っていたのかもしれない。僕は友達に引っ張られてさっきいた客引きの所まで連れて行かれた。
「あいつか?」
僕は頷いた。とたんに友達はそいつに向かって走り出した。そいつは友達に気付いて客引きをやめてボーッと見ていた。友達が振りかぶるとそいつはてのひらを顔の前に持ってきた。そいつはあっけなく地面に転がった。僕はあとを追ってそいつの前まで行った。唾を吐いてやった。
「オナニーしてやるよ」

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