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第36回1000字小説バトル Entry23

Good bye, to you.

爪がぴかぴか光っていた
マニキュアも爪磨きもつけてないのに、と不思議に思いながら私は自分の爪を眺めた
「ねぇ、爪が光ってるのよ」
足で彼の肩を押しながら私は尋ねた。彼は何かくぐもった返事を返したように思う
指の隙間から天井が見えた。寝転がってる床からごつごつした床の感触がした。彼の部屋は無機質的だ。必要な物しかない
ガラスのテーブル、黒くて冷たい感触のシンプルな本棚、小さな冷蔵庫
それらはすべて理路整然としていてあまり人心地はしなかった。もし、彼がいないのであればこんな部屋絶対泊まったりしないと思う。遠くから時計の音が聞こえた
「もう寝る?」
私は急に寂しくなって答えた。いや、と彼は確かに言った
「凛子」
凛子は私の名だ
彼はようやく机から体を離してこちらを振り返ってくれた
「なに」
私も起き上がって向き合う
「話をしようか」
もちろん彼が話すことは御伽話でも世間話でもなく、私は私の予感が当たってしまったことを後悔した
「聞きたくない」
馬鹿らしいと思いつつ聞いてみる。彼は少し困った風に笑った。彼の優しい態度に、私はもはや決定的な事実を目の前に突きつけられさせてしまった。何かよくない時や抜き差しならない状況の時、彼は決まって優しくなる。泣きそうだった
「凛子、泣かないで」
優しい彼は辛そうに言って私の涙まで封じ込めてしまった
手を伸ばして彼は私に触れた。抵抗しないのを見ると体を近づけて抱きしめてきた
目の前にあるのに
こんなに近くにあるのに
私はただがむしゃらに彼の背中をかき抱いた。みっともない女のように泣いて縋ったら、あるいはまだ繋げるのでないか。どんな最悪な状況で構わないからそばにいさせて。ただ私はすぐそばにある、本当にすぐそばにある彼の体温を感じていた



こんな幸福な朝がかつてあっただろうか。私は窓から差し込む朝日もカーテンに写る日の色も好きになれなかったこの部屋も今感じている暖かい体温も無心に眠っている彼も、皆幸福であればいい、と思った。体を少し伸ばして、彼の顔を覗き込んだ。彼は安らかに眠っていた。私は、早く起きてくれた私にとても感謝した
Good bye,to you.
やがて起きて二人は少し気まずく不自然な感じに朝食を食べ、それからきっとさよならを言って別れる。今度会っても私はもうあなたの恋人じゃないし、あなたは私の恋人じゃない。もう、キスはできないんだね
Good morning,On this day called today.

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