←前 次→

第36回1000字小説バトル Entry37

鬼教師

 その頃、私はとある高校の教師をしていた。その学校はいわいるレベルの低い高校で、もろん偏差値はかなり低く、生徒達も一筋縄でいかない連中ばかりで、問題には事欠かなかった。そんな中で私は、誰からも恐れられる鬼教師であった。校長さえも私と話す時は、最低でも警備員を2人を付けていた。当然、生徒達からも徹底的に恐れられ、嫌われ、卒業式の日など体育館裏等で、ほぼ全校生徒から「ヤキ」を入れられたりもした。私も黙ってやられているワケもなく、後に彼らを一人ずつ半殺しにした。しかし、奴等もさる者で、私の家にトラックで突っ込んできたり、夜道で後ろからナイフで背中をひと突きなんて事もあった。それは生徒と教師というより、まるで暴力団同士の抗争であった。
 
 そんなある日、一人の教師が我が校へ赴任されてきた。彼は熱血漢の固まりのようなさわやかな体育教師で、私と生徒達の度重なる抗争を見る度に、当然のように止めに入ってきた。そして、いつも私にこう言った。
「暴力では何も解決しませんよ。」
そう言う彼の顔面を、私は必ず一発殴った。しかし彼は、それでも怯む事はなかった。そんな彼が生徒達に愛されていたかというと、そうでもなかった。むしろ逆に「うざったい」という理由で、私以上にひどい目に会うようになっていった。そうしていつしか私に向けられていた暴力は、100%彼へと流れていった。私はとてもラッキーだった。それでも彼は無抵抗主義を貫いた。鍛え上げられた肉体で、生徒達の暴力を受け止めていった。生徒達の攻撃もドンドンエスカレートしていって、とうとう彼は戦車で跳ねられ、地面に叩きつけられた所をゾウに踏まれ、この世を去る事になった。彼の壮絶な死に、さすがの生徒達も心を動かされたようだった。その証拠に、その後、学校から暴力が消えた。私も、これには「負けた」と思わずにはいられなかった。彼の生徒に対する愛は本物であった。私は彼の葬式の1週間後、校長に辞表を提出した。
 帰り道、彼の言葉が何度も私の頭の中を駆けめぐった。
「暴力では何も解決しませんよ」
そんな事を考えながら歩いていたら、チンピラにぶつかり、3発殴られた。

←前 次→

QBOOKS