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第37回1000字小説バトル Entry12

一本イッといた。

 暑い日ざしに肌を焼かれ、二人の少年は夏から逃げるように家の中へと駆け込んだ。それまでこの二人は夏の日の下、かけずりまわって遊んでいたのだが、のどの渇きは忍耐でどうにかなるものではない。

「たしか、ナントカ病になるから、水はちゃんと飲みなさいって言われたんだ」
「へーえ」

 友達を自宅に招いた少年は母に言われたことを思い出しながら台所へと進んでいった。招かれた少年は、いつもリーダーシップな友達に、いつものように付いて歩いた。
 少年たちのテリトリーには公園というものが無かった。かと言って、川の水がそのまま飲めるほどきれいな地域でもなく、小遣いをもらうという意識さえ芽生えていない少年たちが水を得るためには、一度自宅に戻る必要があったのだ。中途ハンパな田舎に育つと、こんな面倒はままあった。が、自分のいるところにしか世界を持たない子供には、どこでも同じではあったかもしれない。

「たしか、アレがあったんだよねぇ」
「なになに」

 招いた少年は冷蔵庫を開けて中を見回した。
買い置きの納豆。父のビール瓶。得体の知れない色をしたビニール袋。たくあん。つくづく、子供にうれしくないものばかり置いてある家だ。しかし、少年は目当てのものを一発で探り当てた。目当てのものがドアポケットの一番手前にあれば、それは当然のことだが。
 母が飼っている「きのこヨーグルト」(ヨーグルトきのこ?)の容器の横にあったそれを少年はうれしそうに持ち上げた。

「ヘイ、麦茶! おまち!」
「おー!」

 招いた少年が麦茶のビンを乱暴に机に置き、親指を立てると、招かれた少年は感動の拍手を惜しまなかった。

「ホレ行け。遠慮はなしじゃ」
「おー。なんか甘くない? この麦茶」
「甘い? ウチは麦茶に砂糖なんて入れないけど?」
 訝りながら麦茶を口に含んでみる。確かに甘い。砂糖なのか、どことなく、フルーティーな感じがしなくもないが、

「いや、これはむしろうまいラロ」
「うんううん。うまヒ」

 あまりの美味さに、ついつい一瓶あけてしまった。こんなに美味い麦茶ならまだまだ飲めそうだったが、二人の顔は紅潮し、何故かロレツも回らない。無性に暑苦しいし。なのに夏のいわゆる湿度過多による暑苦しさとは違うし……。

 気付いた時、二人は仲良く布団に寝かされていた。
 後で聞いた話だが、梅酒の原酒を1本空けるというのは、子供にはとても無理のある行為だったそうだ。

 死ななくてよかった。

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