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1000字小説バトル

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1000字小説バトル
第100回バトル 作品

参加作品一覧

(2007年 11月)
文字数
1
(本作品は掲載を終了しました)
ウーティスさん
2
紫生
1000
3
ごんぱち
1000
4
1000
5
SuzzannaOwlamp
490
6
越冬こあら
1000
7
とむOK
1000
8
ぼんより
1000
9
太郎丸
1000
10
(本作品は掲載を終了しました)
ウーティスさん
11
蛮人S
1000
12
るるるぶ☆どっぐちゃん
1000

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Entry1

(本作品は掲載を終了しました)

Entry2
月蟲ナイト
紫生

「そうだ、奈落にゆこう」
「そうね、奈落にゆきましょう」
 そんなセリフを呟きながら幼いカップルがゆらゆらとよこぎってゆく。
 勘が騒いだので呼び止める。
「あっ、ちょっと待って。僕もいっしょに、その奈落とやらに連れていってはもらえませんか」
 スローモーにふりかえってフワリと笑う二人は、双子のようによく似ていた。
「良いですよ。ちょうど今宵は月蟲ナイトですから」
「そうよ、年に一度の月蟲ナイトですもの」

 秘密クラブ「奈落」には、大勢のゴスグロパンクでアングラな子供達がひしめいていた。
 眼帯や松葉杖の子が多かったが、体中を包帯でぐるぐる巻きにして芋虫のように這い回っている子、ぞろりとした着物を女郎モードで羽織っている子、カリガリ博士を真似た風なマント姿の子もいて、昭和の怪奇漫画がそのまま立体になったような壮快な眺めだった。
 テーブルには血や汚物なんかでつくったみたいな危なげな料理がたくさん並べてあってグラスを手にするとアンモニアがにおった。
 近くで誰かがパタリと倒れた。
「死ぬ?」
「たぶんね」
 子供達は口々に呟きながら、蛙のから揚げを口につっこんだままヒキツケを起こしている人物を遠巻きに眺めている。
 皆の関心がひとつに集中している隙をついて、次の余興が盛大にわりこんできた。
 ガッシャーン! 物凄い音をたてて天上のシャンデリアが落下したのだ。下敷きになった子供らが血まみれで、叫んだり放心したり笑い出したりしている。何人かはピクリとも動かない。
「すごいね、これ。人、殺しちゃっていいの?」
 そばにいた少年に尋ねると、
「平気平気。だってここはアナーキーな場所だから。それに生きることにも興味のないヤツばっかだからね」
「みんな自殺志願者なの?」
「まさか。積極的に何かをしたいなんて、誰も思ってやしないさ。キミだってそうなんだろ?」
 言われてみれば確かにそうかもしれなかった。
 目の前で酷いことになっている人間を見たせいか、ふいに命の炎がたぎり、少年は少女を犯し始める、少女は少年を殴り始める。乱交、殺戮。手のつけられない熱狂の坩堝。
「あなたは特別だから助けてあげる」
 ひとりの少女がこまねく。手に手をとって僕らは逃げる。
 あれ、でもここ、地下だよ。
「さあ、あなたには三つの選択肢があるわ。ひとつは臓器を売る。もうひとつはポルノ。さいごは……」
 しまいまで聞かずに奇声を上げて少女を連打した。血風が吹いた。
月蟲ナイト 紫生

Entry3
カップ
ごんぱち

「ぃらっしゃっせー」
 やる気のないコンビニ店員の挨拶を聞き流しつつ、スーツ姿の四谷京作と蒲田雅弘が、カップ麺の棚の前に来る。
「新製品か……」
 カゴを持った四谷が、新製品のラーメンを手に取る。
「何が違うんだ?」
 チキンラーメンの値段を見ながら、蒲田が尋ねる。
「よく分からんな。おいしさアップとか、パッケージをリニューアルとか、そんな事しか書いてない」
「マニアじゃねえと分からんよな、それ」
「最近は表示も当てにならないしな」
「おっ、時事ネタ?」
「おうよ、社会派四谷さんとしては物申したいね。おしろいに鉛を入れたり、小判に銀が混ざってたりしやがってさぁ」
「……全然タイムリーじゃねえよ」
 四谷はカゴにカップヌードルを入れようとする。
「あー、俺、ソバね。緑のたぬき」
「ソバもいいなぁ、なんか、刑務所の年越しみたいで」
「……敢えて嫌な比喩をするな」
 蒲田は四谷のカゴに、チキンラーメンとカップラーメンを何種類か放り込む。
「馬鹿、刑務所における緑のたぬきの地位は、もの凄いらしいぞ。賭の対価としては、かなりの上位品になるとか」
「幸いにも俺たちがいるのは会社であって、刑務所じゃねえよ」
「似たようなもんだろう」
「いーや、違うね。刑務所は刑期が終わるまでちゃんと働けるし、基本給は少なくても不払いはないし、多分こんなド派手な残業もねえし」
「オレもソバにしよっかなー。あんまり油っこいの喰う気分でもねえし」
 四谷はカップソバの棚に視線を向ける。
「どれが良いかなぁ」
「緑のたぬきで良いだろ」
「出来れば違う種類のを買って『これおいしー』『どれどれ?』『あっ! それ』『うん、なかなかうまいな』『あたしの……箸』『そんなに怒るなよ。ちょっとしか喰ってねえだろ』『う、うっさいわね! 誰もあげるって言ってないでしょ』みたいな、ピュアでツンデレなやり取りを」
「距離取って良いですか、四谷京作さん」
「敬語!? しかも二人称にフルネーム?」
「はははは、さっさと決めやがって下さい、四谷京作さん」
「ただの可愛らしいボケなのに」
「お前の声で演じられても、ちっとも可愛く――!」
 蒲田の動きが止まった。
「どうした、蒲田ツッコミ途中で――!!」
 四谷の動きも固まる。
 二人は愕然として棚を見つめた。
「ついに開発されたのか」
「革命や、革命が起こりよった……」
 時を忘れ、二人は棚に置かれたカップソバを見つめていた。
『マルちゃん・藍の月見蕎麦』
カップ ごんぱち

Entry4
百鈍色のコントローラ

 もう改名したけど、中学までは「器械(つぎはぎ)」って名前でした。どうしても感情が抑えられず、実際、親を殴りもしました。倫理道徳の時間に、役所に行って親の同意があれば、名前を変えてもらえると知ったからです。親と話し合いましたが、無駄でした(結局、大人になるで)。先生なんて呼ばれる人種を親に持つことは不幸です。脇腹を抑えて屈み込んだ父の側、こぼれ落ちたものがありました。ケーキの箱ぐらいの大きさで両端に野球の硬球くらいの金属球がはめ込まれている長方形の物体。それが銀色のコントローラを見た最初でした。
 当時僕はTVゲームに夢中で、親にせびって何種類かの据置型ゲーム機を持っていましたが、どの機種とも合いませんでした。銀色のコントローラにはコードが付いていなかったのです。友達が遊びに来て、それを触らせるとすぐ使い方が解りましたけど。
 僕のコントローラだったんです。自分でやっても解らないはずです。それを貸した友達は面白がって僕を操作しましたが、幼なじみだったけど信用できない奴だったので、殴って奪い返しました。絶交です。今でもです。
 それから随分悩みました。誰にコントローラを預けるのかが、僕の命題になりました。そんなもの無しでやっていこうかとも思いましたが、幼いころから思っていたのです。僕にはこのゲーム(人生)は難しすぎる。
 今まで付き合ってきた信用できる友人、彼女には一通り預けてみました。部屋の合い鍵を渡すように。だけど皆、すぐに飽きてしまうのです。重たくなるというのもあるみたいです。いざ、他人の人生を握ってしまうと面倒になるようです。だけど、もう一度やらせて欲しいと頼まれたこともありました。僕も途方に暮れていたので頼みます。だけど、やっぱりダメでした。犯罪に巻き込まれそうになったりもしました。人助けをしたこともありました。全く、他人の意志で。その度にコントローラは、汚れて錆びていきました。
 でも最近気づいたことがあるんです。艶やかな銀色だったコントローラは赤く錆びています。だけどよく見ると、錆の中にも色々な色や質感があるのです。ガサガサした錆、サラサラした錆、様々な紋様。持ってくれた人の体調や、感情によって、汗の分量や成分が変わるのかもしれません。
 今は誰にも預けていません。だけど過去を後悔することもない。他人に預けてばかりでしたが、ちゃんと僕の個性になったと思えるからです。
百鈍色のコントローラ 葱

Entry5
眠り
SuzzannaOwlamp

 私はこう証言する。
 隠れた情報をカメラに収める。隠れた情報とは、私のプライバシーであり、ここで述べるカメラとは、私の携帯電話の機能である。
(申し訳ありません)
こう述べるのは容易い。しかし、いうのは難しい。
 もう一度いう。
(申し訳ないです)
 あれ、箸の持ち方もお忘れになったか? 
1.上手に親指と人指し指で鉛筆を持つ。
2.親指の付け根と薬指の脇腹で、二本目の鉛筆を固定する。
3.最後に中指の脇腹と人指し指の指先で一本目の鉛筆を動かす。
 ここでいうところの鉛筆を一膳の箸に置き換えれば弁当をつまんで食べられる。日本人は、米を食べるように食生活を変えるべきではない。あったかいお茶、お魚、お野菜。白いご飯。きゅうりの漬物に味噌汁。
 この時、箸が落ちた音に笑わない女。美しい。身を呈して教えてくれるその躾に私は、時に反抗し、またある時には、数字の4をかけた。
 忌み嫌われるその数字。
4.右手に鉛筆を動かす親指ブスッと右胸に当てる。
ここで、鉛筆を携帯電話とし、親指をカメラ機能ボタンに掛け、右胸を鏡に反射させる。
そうすることで左腕に凶器を持った大人が完成する。
「大変、ご迷惑をおかけいたしました」
眠り SuzzannaOwlamp

Entry6
豚足
越冬こあら

 深みにはまった秋が、そろそろ惜しまれる頃合いなトアル週末、私は徹底的にブチッかまされ、KO状態だった。
 結局、三年半『もてあそばれた』挙句、ひどい振られ方をさせてくれた相手の中年Aは、妻子持ちだった。私は、あろうことか中華街の片隅の掃き溜めに横たわっていた。
 その中華街は、横浜のように洗練された場所ではなく、ギトギトでぶよんぶよんで、その癖、値段は(四千年の食への拘りは)お一人様約六千円(税抜き、飲み物別)となっていた。
「最悪だわ!」
 絶望すると、
「お嬢さん、どうされました」
 この展開では『お約束』の救いの囁きが聞こえてきた。
「私は天からの御使い、聖なる豚足一族の王子『天豚足仔』です。読み方は不明ですが、つまりそういうものです。なんとかして差し上げましょう」
 あーあ、またなんか癒し系の新キャラを出して、無難にこなそうとしてる。振られて傷ついた私の心が、ちょっと癒され、一段落したところで、終わりにしようという安易な着地を目指した姿勢が垣間見られ、うっとうしかった。それにしても『豚足一族』って何よ。バカにしてるわねえ……。
「天豚足仔様、恐れ入ります。私たち薄幸な女性のために、お力をお貸し下さい。人類の約半分は女性、その半分は『幸薄く』その半分は『救われない』と申します。どうぞ、お力を……」
 気持ちとは裏腹な言葉が次々と湧いて来た。

 中年Aとの逢瀬は、平日の夕食が多かった。イタリア料理やフランス料理も食したが、大方は中年Aの好物である中華料理で、いつもこの中華街に足を延ばした。
 中年Aは『妻が中華嫌いでね』と語り『君と暮らすようになったら、二人で中華三昧ができるね』と気を持たせた。
 考えてみれば、あの店もこの店も思い出がいっぱいだ。
「天豚足仔様、後生ですから、この中華街を焼き払って下さい。私たちの思い出をスッカリ燃やしちゃって下さい」
「貴方の気持ちは、良く解ります。今、姿を現しましょう。見てごらんなさい。私は、四本の爪先だけで、体がありません。気持ちは解りますが、火を点けたりは出来ません」
 爪先がどうやって喋っているのだろうか。喋れるんなら、火ぐらい点けられるだろうに。
「えーい、まどろっこしい」
 私はハンドバックからライターを取り出し、手近な燃えるゴミに火を放った。
「ちょっと、待ったあ」
 天豚足仔は、ここぞとばかりに絶叫し、天に雨を降らせた。
 振られ女が中華街で濡れた。
豚足 越冬こあら

Entry7
ポストモダンと猿廻し
とむOK

「頼んでた本だけど、届いてる?」
「少々お待ちください…えー、『ルネッサンスと盆踊り』ですね。明日以降の貸出しとお伝えしたはずですが」
「ええ。早く入荷してるかと思って、来てみたんです」
「すみませんが、明日以降またおいでください」
「でも、そこにあるじゃない。君の後ろの本棚の一段目」
「…ありますね」
「いいでしょ?」
「だめです。明日以降の貸出しです」
「明日は休館日じゃない。明後日は俺休めないし。頼むよ」
「だめです」
「どうしても?」
「だめなものはだめです」
「こんなに頼んでも?」
「だめです」
「俺、その本すごい楽しみにしてたんだよ。ほら、いつもちゃんと返却期限だって守ってるし、本を汚したことだって一度もないし」
「…」
「お願い!」
「…だって、あなたに私の感想を伝えながら、本をお渡ししたかったんです」
「…は? え? あの」
「だから待ってください」
「いや、急に言われても…俺にも考える時間が」
「じゃあ、こうしましょう。今日、この本読んじゃいます。読んだら、貸します。だから、あと二時間待ってください」
「あと二時間って、俺がここで待つの?」
「こっちの『ヒューマニズムと浪花節』なら読み終わってますから。これ読んで待っててください」
「なら、そっちを借りて今日は帰るよ」
「前から思ってましたけど、変な本がお好きですよね」
「変とか言うな! 君だって読んでるくせに」
「そういう人って、嫌いじゃないです」
「…あ、どーも…参ったなー。で、そっちの本は面白かった?」
「言いません」
「何だそりゃ!」
「今日は私、五時上がりなんです。待っててくれたら、言います」
「そうなの。じゃあ…って待つか!」
「せっかちな人は嫌われますよ」
「そういう問題か!」
「近くにシフォンケーキのおいしい喫茶店があるんです。甘いものはお嫌いですか? 素敵な和食もあるんですけど、やっぱり本の話は喫茶店でないと気分がね」
「お嫌いも何も。気分とかどうでもいいし」
「やだ。楽しみに待ってる人の気持ちなんて、考えたことないんでしょ」
「え、いや、そんな、君…って逆! 立場逆!」
「五時になったら声をかけてくださいね。ここにいない時は、一階窓口で掛川涼子を呼んでください。カケガワ・リョウコ。覚えてもらえました? じゃあまた五時に」
「ちょ、待っ…あのさあ、思うんだけど、やっぱり自分が先にその本読みたいだけと違う?…あ、今笑ったでしょ? そっちに隠れるな! ちょっと!」
ポストモダンと猿廻し とむOK

Entry8
試聴
ぼんより

 首筋に触る後ろ髪、ヘッドフォンから流れる音、言葉、得体の知れない魔物。
 おはようございます、の一言から始まった会話はつまらない恋愛話になって、アタシは青色のボタンを押した。もう疲れた、を繰り返すブルーな卑屈男のマイナスオーラに、死ねばいいのにをさらっと吐いてやった。周りは若い客だらけで、CDやポスターやモニターがあちこちに並んでいる。舌にピアスをはめた下品なアーティストが中指を立てて大声で笑ってるポスターがある。ドレッドが巨大なミミズにしか見えない。若い女たちがカッコイイと叫び、アタシは真っ黒いボタンに手を伸ばした。
 男の悲鳴が聞こえる。脳内に響く嫌な声。銃声。
 息が乱れてきたアタシ。崩れ落ちそうになる体を震わせて、笑う膝で必死に支える。ヘッドフォンから流れ続ける男の悲鳴の嵐。痛みを伴う、最も残虐な声。アタシの目に飛び込んできたのは、舌ピアスドレッドの前で相変わらずバカな顔を並べてうっとりしている女たち。両方に吐き気を覚えて、真っ白いボタンを何とか押した。夕方には空は雨模様になるらしい。ベランダの洗濯物は全部部屋の中へ入れてきた、大丈夫。
「今日の晩御飯は何?」
 ざわざわと風の音がして、遠くで遊んでいる子供たちの声が楽しそうに聞こえてくる。すかさずヘッドフォンから、直接心臓を撫でられるような声。
「今日はサンマの塩焼き、おろし醤油で」
 本当に今日はこのメニューなのだから、こうやって答えるしかない。
「いいね、ご飯が何杯でもいけそうだ」
「そうね」
「もう帰ろうか」
「そうね」
 まるでどこぞの国の映画みたい。きらきらしてない虹色がいっぱい広がって、まばらで小気味良い足音がぱたぱたといつまでも響く。雨雲のないきれいな空だ。目を閉じれば眠れそうな音たち。声たち。きれいな魔物たち。
 両手でヘッドフォンをそっと掴んで、真っ白いボタンを眺めてみた。左にはさっきの真っ黒いボタン。その左には青色のボタン。上に黄色、その右は赤、赤の上には紫。
 アタシは泣き出した。そして、まだ声は聴こえてくる。
「明日も晴れるね、きっといい天気になるよ」
「そうね、でも」
「でも?」
「でもきっとお隣では雨が降るの」
 アタシは声をあげて泣き出した。ドレッドの前の女たちは、別のアーティストに夢中になっている。
「泣かないでいいから」
 時計はもう夕暮れ時を指している。
「もう帰ろう」
 試聴をやめて、アタシは家に帰ることにした。
試聴 ぼんより

Entry9
戦え! 超生命体とらんくすうぉーまぁ
太郎丸

 …かげえきだーんー。
 ゲキテイの着メロをフルコーラス聞き終えた私が通話ボタンを押すと、耳に当てる間もなく町会長の声が携帯から聞こえてきた。
「あっ、やっと捉まった。緊急事態発生です。敵が現れました。今、何処ですか?」
「何処ですか?」
「だから何処にいるんですか? まさかエッチの最中じゃないですよね…」
「いや私じゃなく、敵は何処ですか?」
「だから何処にいるんですか?」
 と長くなりそうな遣り取りにうんざりした私は、「電池、切れそうなんですが…」と場所を聞き出した。
 私は近くのゴミ箱の陰で素っ裸になると携帯をへその位置に添え、所定のポーズをしながらパスワードを口にした。
「へ~んたい!」
 部分的にモザイクの入った少し上の部分で、携帯は輝きだし体内に吸収されていく。
 吸収された携帯電話:超生命体は、トランクスの形で身体の表面に現れ、私の局部を隠すと熱を帯び始め私の変身が始まる。全身の産毛が長く茶色に変わる。変身した私は、二本足の大型犬だ。
 身体は下半身を中心にポカポカで気持ちが良い。

 1999年に空からやってきた恐怖の大王に目覚めさせられたアンゴルモア(宇宙人)の残した爪あとから復興しつつある現在。
 その際に対抗すべく立ち上がった人類は、研究の結果開発した犬の遺伝子を組み込んだ超生命体を、携帯電話の形で利用していた。

 町内会戦闘員の私は、連絡を受け戦いに赴く。
 超生命体と同化した私は、脱いだ衣服を風呂敷に包み首に巻くと、3丁目の佐久間さん宅へ直行する。

 私が到着すると中から奥さんの悲鳴が聞こえてくる。玄関を開け中を覗くと声は居間からだった。
 私は足を拭き、「失礼します」と中へ声をかける。
 敵にのしかかられていた奥さんの胸元からは、ピンクの乳輪と突起が覗き、陶器のような白い脚がスカートから空を切っていた。
「た、助けてぇ」

 敵はネコ型宇宙人。遺伝子を地球人に受け継ごうとしている。
 変身した私はメチャクチャ強いから、敵をコテンパンにやっつけ簡単に奴を袋に封じ込める。
「大丈夫でしたか」と奥さんを見やると、とろんとしていた目が突然光を帯びる。
「まぁ大変、血が出てる。消毒しなくちゃ」
 奥さんは私の股間に顔をあてがうと「お口でね」と舐め始めた。
「そこは、ちょ、ちょっと…」
 結局私は、奥さんの後ろからマーキングをする。

 最近妊娠女性が近所で増えた。私が助けに行った家庭が多いのは気のせいだろう。
戦え! 超生命体とらんくすうぉーまぁ 太郎丸

Entry10

(本作品は掲載を終了しました)

Entry11
100回記念が来た
蛮人S

 ノックの音がした。
『貴様、今から1000字バトルに投稿しろ』

 俺は左右を見渡した。
 いま俺は東京発小田原行きの通勤快速の車中なんですが。ノックって何です。あなた誰ですか。
『私は100回記念男だ。ノックしたのは貴様の心のドアだ。おい蛮人。貴様は今まで1000字小説で食ってきたくせに、よもやこの100回記念バトルに投稿しない気ではあるまいな』
 って、今さら無理です。てゆーか俺は1000字で食ってません。
『今から書け。50分で書け』
 そんなん無理です。
『私をネタにしろ。実は私はローマの百人隊長で百秒間に百人の敵を百回斬って百の戦で百の褒美を頂いた男だ。どうだ百話くらい書けそうか』
 むしろ無理です。
『……だったら死ね』
 俺は百回斬られた。


『私は100回記念女。ノックしたのは貴方の心のドア。ほれ蛮人。今まで貴方を育んできた1000字。よもや投稿しないと言うおつもり』
 って、今さら無理です。てゆーかその無理ぽい体言止めは何ですか。
『今から書け。35分で書け』
 そんなん無理です。
『私をネタにしろ。実は私はローマの百人娼婦で百秒間に百人の男を百回』
 むしろ無理です。
『……だったら死ね』
 俺は百回散った。


『私ハ――100回記念ロボ!』
「もういいよ」
 俺は呟いた。隣の男が俺を見て、また日刊ゲンダイへ目を戻す。列車は大船を経て、黒い夜空の下を藤沢へ近づいていた。
 1000字埋めれば良いってもんじゃなかろう。

 要はみんなに、ありがとうって言えばいいんだ。だって他に何もないんです。
 初めて1000字に出会った日、
 初めて1000字に感想を書いた日、
 初めて自分で1000字書いた日、
 初めて1000字に感想を貰った日、
 初めてスタッフとして1000字作品を頂いた日、
 初めて1000字のページを編集した日、
 1000字バトルが100回にも達した日、
 みんな、多くの人のおかげなんです。

「ありがとう、本当にありがとうございます、少なくとも私にとっては、私の存在の多くの部分が、実に皆さまによってここに有るのです。それが今の私です。本当にありがとうございます」

 ありがとう100回。
 おめでとう皆さま。


 隣の男の首が、ぎりりと回った。
『で、オチは無いノか?』
 いや、これは、そういうものなんでしょうか。
『……ダッタら死ネ』

 俺は男のヒタイを定期券で百回タッチした。
 でもロボは乗り越しを認めないようだった。
100回記念が来た 蛮人S

Entry12
ロードムービー
るるるぶ☆どっぐちゃん

 ロードムービーに激突するロードスター。
 ハリウッド。ハリウッド。ハリウッドハリウッドハリウッド。
 でも昔は良いこともあったよ。
 昔はいい頃もあった。
 良い子もいたよ。
 スピーカーからはクラシックミュージックが流れている。アイネクライネナハトムジーク。悲壮。歓喜。主よ、人の望みを喜びを。勝手にしやがれ。スティーリー・ダン。50セント。アンダーワールド。でもクラシックミュージックってどんなだっけ? クラシックミュージックって何だったっけ?
(ショパン・コンクール)
(ムーグ・コンクルール)
(バックミンスタ・フラー・コンクール)
 五線譜。降り注ぐ五線譜。降り注ぐ降り注ぐ降り注ぐ五線譜。
 エチュード。ノクターン。ノクターン。エチュード。
(クラシックミュージックってどんなだったっけ?)
(昔は良いこともあったよ)
(良い頃もあった)
(エチュード。ノクターン。ノクターン。エチュード)
(あの子がいた)
(あいつが居なかった)
 五線譜を塗れたアスファルトから拾い上げる。
 五線譜を指でなぞる。
 五線譜を巻き付ける。エチュード。ノクターン。ノクターン。エチュード。
 五線譜をあなたに巻き付ける。あなたに。五線譜をあなたとわたしに巻き付ける。
 乳房とガーターベルトとガラスと鍵盤とピンクのレースの花束。
 花束を受け取った花嫁と花婿は歩き続ける。道を。道を。道を道を道を。
 アスファルトに書かれた花束。
 アスファルトに書かれた五線譜。
 ロードムービー。
(「これで認められなければもう知らないよ」)
(「美しいわ! あなたはとても美しい!」)
(「エチュードをもっとしっかりやりましょうね。エチュードをもっとしっかりおさらいしてきてくださいね」)
(「これで認められなければもう知らないよ。これで認められなければもうどうでも良いよ」)
(「エチュードをもうちょっとしっかりやりましょう」)
(「今日も空が綺麗だね。金も無いけれど。花も綺麗だ」)
 アルファルトに描かれたモナリザ。ラファエロ。ムリーリョ。ひまわり。インターナショナル・クライン・ブルー。ヘロデ王の前で踊るサロメ。ピエタ。ヨカナーン、あなたにくちづけしたよ。あなたに。あなたにくちづけしたよ。無題。無題無題無題無題。乳房とガーターベルトとガラスと鍵盤とピンクのレースの花束。
 ただ街灯に照らされて。五線譜を指でなぞる。乳房とガーターベルトとガラスと鍵盤とピンクのレースの花束の五線譜。
 ただ街灯に照らされて。