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1000字小説バトル

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1000字小説バトル【Rosso】stage2
第3回バトル 作品

参加作品一覧

(2008年 5月)
文字数
1
SuzzannaOwlamp
1000
2
トノモトショウ
1000
3
伽屋律歌
934
4
ごんぱち
1000
5
ハミングバード
1000

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Entry1
密室芸人
SuzzannaOwlamp

乙「甲さん、大変です!」
甲「どうした。殺しか。」
乙「いえ、笑いです。」
甲「笑いか。そりゃ厄介だな。」
~現場検証~
乙「ガイシャのマイケル・オレルアンは29歳。現在日本大学に留学中です。」
甲「凶器は?」
乙「一発ギャグです。ガイシャの横隔膜に含み笑いの形跡がないことからも見て取れます。」
甲「なるほど。ところで、この受話器は最初から上がっていたのか。」
乙「はい。我々が踏み込んだときには、既にガイシャの指紋がべっとり付着していました。」
甲「ということは、ホシは受話器越しにガイシャに一発ギャグを囁き、爆笑させた。そういうことだな。」
乙「はい。しかし、甲さん、少し不審な点が……。」
甲「どうした?」
乙「それが我々が踏み込んだとき、この部屋、すべて鍵が掛かっていたんです。」
甲「そりゃどういうことだ。」
乙「つまりこの部屋、密室だったんです。」
甲「密室芸人か。」
乙「そういうことになりますね。一発ギャグということで当初、間寛平と吉田ヒロが、捜査線上に上がったのですが、彼らは密室芸人というよりは、舞台芸人ですので……。」
甲「そうか。しかし、見事な笑わせっぷりだな。ホトケさん、すっかりえびす顔じゃないか。」
乙「是非、その密室芸人を逮捕して、一発ギャグを吐かせたいものですね。」
甲「よし、切れのある一発ギャグを持った密室芸人を虱潰しにに当たってみてくれ!」
乙「かしこまりました。」
その時、甲の携帯電話が鳴る。
丙「も、もしもし。わ、わ、私が、は、は、犯人です。な、な、な、何卒、ご、ご、ご、ご容赦ください。」
甲「お前は犯人じゃない。」
乙「甲さん、どうされました?」
甲「ただのいたずら電話だ。気にするな。」
乙「鋭い推理力ですね。」
再び、甲の携帯電話が鳴った。
丙「烏がカァーと鳴けば、鳩は何と鳴く?」
甲「いい加減にしろ! ホロッホーだろうが!」
乙「どうかされました、甲さん。様子が変ですよ。」
甲「犯人はお前だ。」
マイケル・オレルアンにその人差し指が向けられ、甲は丙を見下ろした。
丙(マイケル・オレルアン)「私が犯人であり、私が被害者でもあります。とも致しますれば、私がかの有名な密室芸『ゲルニカ』の作者であることは言うまでもないことです。It’s very show time! UTR.sir,I am Mikel Orellan.My hoby is painting a horse hip.」
甲「コオノロア。」 
密室芸人 SuzzannaOwlamp

Entry2
私は犬である
トノモトショウ

 私は犬である。名前はまだ無い。

 私がまだ人間だった頃、私にはちゃんとした名前があった。ユミとかサオリとかキョウコとかそういう有り触れた名前だったと思う。けれど、あの人は私の名前をすっかり剥ぎ取ってしまった。あの人が私を規定する唯一のコードが「犬」だったので、私は名前のないただの「犬」として生きることになった。

 暗い部屋だった。明かり取りの小さな窓からうっすらと光が差し込んではいるが、その細い光の筋は部屋を斜めに切り取るだけで、余分な陰影を作っていた。天井からぶら下がっている蛍光灯は長い間使われた形跡がなく、虫の死骸が黒い斑点を描いていた。壁と床はざらついたコンクリートで、私は背中や足の裏やお尻を密着させて、その冷たい温度をひたすらに実感するのだった。
 私はこの部屋で一日の大半を何もせずに過ごす。私は「犬」なので、読書もしないし音楽も聴かない。ケータイで淋しさを埋め合わせることもないし、無闇に他人の温もりを求めて自分の身体を汚したりもしない。ただ、あの人が帰ってくるのを従順に待っている。それはあの人が私に命令したからだけれど、私は充分満たされている。狭い世の中に生きている人達は、誰かに命令されたり支配されたりすることで得られる幸福の意味なんて知らないのだ。
 あの人はいつも私を威圧し、強要し、凌辱し、破壊する。私が人間だったら、恐怖のために心臓が止まり、屈辱感に身体を震わせ、恥ずかしさに頭がおかしくなり、痛みに涙を流すだろう。けれど私は「犬」だから、そういう意識を持つことを禁じられているし、私も考えない。痛みや苦しみを伴う時も確かにあるけれど、それも一つのコミュニケーション、一つの愛情だということは伝わってくる。だから私は、子供のように泣き叫んだり、醜く顔を歪めたりはしない。むしろ、愛おしさに狂いそうになる自分を抑え付けなければならない。そんな幸福感を、人間だった頃の私は体験したことがない。

 ふと私は考える。もし私が人間のまま存在していて、あの人を「犬」と規定していたら? 私はあの人を威圧し、強要し、凌辱し、破壊するのだろうか。
 あの人の舌をハサミで切り取る場面を想像した。あの人は言葉にならない叫びをあげて、許しを乞うのだろうか。それとも、涙や血で濡れた顔を歪ませて「愛してる」と言ってくれるのだろうか。
 どちらにせよ気持ち悪いなと思って、私はすっかり考えるのをやめた。
私は犬である トノモトショウ

Entry3
ミーリツァの檸檬漬け
伽屋律歌

私は、弟を愛していたのです。私と弟は、双生児でした。いつも一緒だったのです。私と弟は、貧しい生まれでしたが、必要最低限の生活くらいは出来たのです。私達は両親を嫌悪しておりました。両親は私たちがめに入るなり、「気持ちが悪い」と吐き棄てては、殴ったり蹴ったりして、己のストレス発散を私たちきょうだいにぶつけていたのです。気絶する前に見るものといえば、両親の恍惚した表情、時にはザーメンなんかも引っ掛けられたりして、酒の席では色々な人間に輪姦されました。自画自賛ですが、私達は気味が悪いほどに、美しかったのです。
性交渉を持ったのは、もう物心つく前でした。気がついたら、視界には男の人がいて、性交渉を持ちましたが、村の女の子を見ると、私達は異常のような気がしてなりませんでした。弟も女や男に身体を弄ばれ、私達は儀式じみた其れが終ると、必ず、舌で清めるように互いの身体を舐めて、眠ったのです。
私の世界に弟と私以外は必要なかったのです。

私たちには秘密の楽園と呼ぶ、ひとつの秘密基地があった。其の、場所には大量の野薔薇がある。

ある日、私は目撃してしまいました。弟が、私のクラスメイトと口付けを交わしている所を。煮えたぎるような、憎悪、嫌悪感。私は、吐瀉した。
弟の世界には、私だけではなかったのか…激しい猜疑心と嫉妬。
私は、衝動的に大量の檸檬を購入した。其れを、地中に埋めて、隠した。
「ミーリツァ」私は、弟の名前を呼んだ。弟は、「何?姉さん」と無邪気に笑んだ。黒い髪に、黒い瞳、白い肌。私と同じ、顔。
「先日、私たちのローザリィに往ったわ。凄く可愛い薔薇が咲いていたのよ。明日一緒に行きましょう?」「いいよ」
私は、銀色のナイフと、ピクニック用のバッグに檸檬を沢山詰めました。

次の日、私は、「あの薔薇よ」と謂いながら、彼の心臓めがけて、銀色のナイフを刺したのです。
勢い良く抜くと、血飛沫が私の顔にかかります。私の顔には、エクスタシーが浮かぶ。崩れ落ちた弟。白い薔薇の上。白い薔薇の上に、血の気のない白い顔の黒髪で黒服美少年、着色は赤。私は、屍が少しでも長く持つように、檸檬の輪切りをたくさん彼の上に置いたのです。

「ミーリツァの檸檬漬け」

謳うように、微笑んだ。
嗚呼!なんて美しい光景!!!


End
ミーリツァの檸檬漬け 伽屋律歌

Entry4
戦場でなく、ジョニーでなく
ごんぱち

「ほら、去年来てた留学生、あの国の出身ですよね。戦争になったら仕方がないとは思うけれど、仲が良かった人は戦うのが嫌だと思うかも知れません」
 確か、先生の質問にそんな答え方をしたと思う。
 その日帰ろうとしたら、校門の前に車が待っていた。
 警察みたいだったけど、制服は着ていなかったし、よく分からない。
 裁判所に直行。
 執行猶予付きの有罪。
「ただの発言が罰せられるんですか?」
 僕の問いに裁判官は答える。
「言論よりは思想の自由が重要なのは分かるね」
「それは……はい」
「君の言論を聞いた人間が、思想を変える可能性があった。すなわち他者の思想の自由を侵したという事だ」

「初犯で良かったね、さもなければ、執行猶予なんかあり得なかったよ」
「ええ」
「君はもう、同じ罪をうっかり繰り返すような事はなくなる」
 麻酔をかける前に、白衣の先生はそう言って笑った。
「じゃ、予防措置するよ」

 そうだ『ジョニーは戦場へ行った』だ。
 この僕の状況は、あの小説の主人公と似ている。
 顔面の筋肉がはぎ取られ、顎から下の声帯や心肺が摘出され、四肢は切断された。
 瞼はないけど目はある。耳はないけど内耳はある。見て聞いて眠って。それから考える。たまにお母さんが話しかけたり音楽を流したり、目の前で花や本を開いて見せたりする。
 大抵の場合、それは見たい物でも聴きたいものでもない。
 でも、別なものにして、と言うべき舌がない。イエス・ノウを伝える瞬きをすべき瞼もない、人工心臓が酸素を混ぜた血を勝手に送るから、鼓動を早める事も出来ない。
 伝えられない思想は、思想なんだろうか。僕が考えた事を僕に知らせても意味はない。僕は僕の考える事を知っているし、僕の考える事は僕の域を出ない。ただ、考えが浮かんでは消えていく。

 何年が経ったのか。
 お母さんが時折カレンダーを見せてくれるから、数えれば分かるのだろうけれど。
 ああ、足音だ。今日も、お母さんがやって来た。
「無血革命が成功したの、独裁政権が倒れたの!」

 手を伸ばしラジオをつける。
 僕は再手術をされて、身体を大体全部取り戻した。
 今日もラジオから、元大統領の番組が流れる。この国は前より悪くなった、次の選挙では私に一票を、って。
 僕は元政府の誰一人として、許していない。そして今聞こえている元大統領の言葉の内容も声も、僕の好みでは全然ない。
 けれど。
 彼が喋る事が出来る。
 これ以上ない大団円。
戦場でなく、ジョニーでなく ごんぱち

Entry5
糸トンボ
ハミングバード



 虫たちが朝日に目覚めて跳び出した。蛙もトカゲも朝日をきらきらまとわせて、跳び出した。まるで彼らが朝日になったみたい。みんな朝日の雫になって散らばった。雫は小さいけれど、一粒一粒の輝きは、朝日と変りない。
 それなら私にもなれるかもしれない。大きくはなれなかった私だけれど、小さくなら、なれるのでは。だって、家でも、学校でも、会社でも、いつだって小さくなれたのだから。別に苦労なんかしなくても、自然に具わっているみたいに、小さくなっていられたのだから。
 小さくなるのはいいけれど、ミミズにだけはなりたくない。道に這い出たミミズは、お日様に焼けて、ヒジキみたいになっている。かわいそうに。熱かったでしょう。いくら虫達が朝日に跳び出したって、あなたは出てきてはいけなかったのよ。土の中の生きものなんだもの。
 やっぱり、蛙とか雀がいい。雀だったら、子雀がいい。
 糸トンボもいい。羽に露をつけたみたいに透明に澄んで、葉に留まっている。一日中、ひと叢の草木に頼って、そこを永遠の住まいみたいにしている糸トンボがいいな、私は。

 私の周りをたくさんの水玉が回っている。まるで水槽に入れられたお魚の周囲を、水泡が漂っているみたい。
 そうだ、私は熱が出て、会社を休んだのだわ。それでベッドにいたんだっけ。でもそういつまでも寝てはいられない。明日からは、お茶汲み、お掃除、葉書や封書も出しに行かなきゃ。それに頼まれたコピー。お土産配り。これは吉井さんの新潟からのお土産でーす。これは国見さんがカナダからよ。
 水玉が多くなってきた。私は口をぱくぱくさせて、水泡を飲み込もうとする。パクパク、水玉の多い方へ、多い方へとさ迷っているうちに、表に来てしまった。
 紫陽花が咲いている! 小さな顔がいくつも集まって、まったくもう、うちの会社のグループ写真みたい。横っちょに、小さくいるのが私かな。
 でもこの花は賑やか過ぎる。私はもっとひっそりと咲いている花のほうがいい。
 目をさ迷わせていったら、あった。寂しげに咲いている額アジサイ。私には、賑やかな紫陽花より、この花のほうがいい。
 そう思ったとき、少ない花びらの一つに、すーっと糸トンボが来て留まった。ああ小さくて頼りない羽の動き。透明で、目を凝らさなければ見逃してしまいそうな、かすかな気配。小さな生きもの。糸トンボ。
 おまえは私なの。それとも、私がおまえ? 私好きよ、あなたが。