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1000字小説バトル

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1000字小説バトル【Verde】stage2
第2回バトル 作品

参加作品一覧

(2008年 4月)
文字数
1
ごんぱち
1000
2
machanolix
1000

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Entry1
心霊こわい
ごんぱち

 日が落ちかけ、湖の上に広がる空は、既に薄暗くなっていた。
「ほー、ここが心霊スポットなのか」
 車から降りた四谷京作は、柵に手をかけ辺りを見渡す。
「そうだよ」
 蒲田雅弘は、自分の両腕を掴んで肩をすくめている。
「小さい女の子が交通事故に遭ったとか、溺れ死んだとか、殺されたとか、色々言われているがな」
 初夏だというのに、時折吹き抜ける風は妙に冷たい。
「ふーん」
「割と最近の掲示板の書き込みでも、写真を撮ると死んだ女の姿が映るとか、車やバイクのブレーキが効かなくなるとか、妙な声がしたとか、嫌な噂が多いんだよ」
「ま、あんまり長居したい雰囲気でもないな。面白そうなものもねえし」
「だろ。さっさと行こうぜ」
 蒲田は車に戻ろうとする。
「そもそも大仏見てねえだろ、大仏」
「ああ、すぐ戻る」
 四谷は携帯電話のカメラを湖面に向ける。
「おい、やめろ、ヤバいんだって、写真はマジヤバいんだって!」
「心霊スポットで写真撮らんでどうするよ」
 携帯電話のシャッター音が鳴った。
「――ん、これは!」
 画面を見る四谷の表情が凍り付く。
「ああっ! 言わんこっちゃない!」
 カメラにはそこにいないはずの人の姿がはっきりと映っていた。
「消せ! 早く!」
「やってるよ、でも消えねえんだよ!」
「あー、チミ達」
 どこからともなく警官が現れた。
「むっ、成人男子だな、怪しいヤツめ、職務質問だ! 鞄の中と、パンツの中と、尻の穴と、モバイルのデータを全部見せたまえ」
「いっ、その」
 警官は、四谷の携帯電話の画面を見て顔色を変える。
「む! これは! 衣服を着けていない女児の写真! 貴様、なんというものを持っておるか! おお、恐ろしい! お前は○米人か! この非国民が! そんなお前達は、最近施行された偉大な治安文化欧○の法に倣った法律によって逮捕だ! 死刑だ! 人生の終わりまでムショから出られなくしてやる! 顔写真を2ちゃんにアップして、下半身を映した動画をユーチューブで世界配信してやる!」
「心霊写真なんですよ、マジで!」
「信じて下さいよぉ、お巡りさん!」
「犯罪者の発言に一片の真実も含まれていないに決まっている! さあ、神妙に縛に付け、この女の敵、人でなし、人間のクズ、腐ったミカン! 逆らったり、弁護士を呼ぼう等と思ったら、この場で射殺する! 児童ポルノ所持者め!」
 携帯電話の画面には、女児の血まみれの生首の霊がうすらぼんやりと映っていた。
心霊こわい ごんぱち

Entry2
親子愛
machanolix

やはり幼い頃の虐待が酷すぎたのだ、我が息子厳太郎が多重人格になってしまった。
我が妻は母親としての能力がなかった。厳太郎が生まれるとすぐに思いつく限りの虐待を繰り返した。
まず、事ある毎に張り手をした。暇さえあれば張り手。忙しい時も張り手。厳太郎の顔は常に二三倍は膨れていた。常に膨れていたのでそれが通常の大きさなのだと勘違いしていたほどだ。儂の顔もかなりデカイがうちの子もデカイなぁ、などと感心しておったが単にそれは母親の虐待のせいだったのだ。
そして食事も酷かった。儂ら夫婦が舌平目のムニエルやスペイン産イベリコ豚、ホワイトアスパラガスの冷静クリームスープなどを食している傍ら、厳太郎はダンボールの醤油漬けを食べていた。儂はなにかドロドロとしたものを食べているなぁ、離乳食なのかなぁ、などと思っていたが母親が食事を与えいなかっただけなのだ。
しかしそんな儂の妻も死んだ。
厳太郎を生んだあと情緒不安定になった妻は自らの体に無数の風船を括りつけ、瀬戸大橋からダイブしたのだ。彼女は鳴門のうず潮に呑み込まれ海の藻屑と消えた。

最終的にはおかしくなってしまった妻だが儂が十六の頃初めて彼女と出会った時は息を呑む美しさだった。儂は彼女に青春を捧げた。あの頃の彼女は儂にとっての全てだった。
しかし時の流れは恐ろしい。そして悲しい。これが人生なのか、神よ。
彼女は儂の妻になったが気が狂い、息子に虐待を加え始めた。
母親に愛されない厳太郎は現実逃避をするため無意識のうちにもう一つの人格を作り上げた。多重人格の病に陥る者は大抵がこのパターンだ。
虐待を受けている自分は本当の自分ではない。本当の自分はもっと親に愛され、もっと幸福で、もっと素敵な未来を約束された存在なんだと強く思う。そしてその思いを現実のものとするため今の自分ではない新たな人格を作り出す。それが多重人格の仕組みだ。

そして今日厳太郎は十六歳の誕生日を迎えた。儂が妻と出会った歳である。
どうして厳太郎が多重人格であるかが分ったかというと今日もう一つの人格が彼に現れたのだ。
そのしなやかな手つき、潤んだ瞳、甘えた表情……

まさしくそれは十六の時の妻であった。

厳太郎はもう親に嫌われたくないという一心から、儂が青春を捧げて愛した女を自分の中に作り上げていたのだ!
しかし妻として息子を愛すのか、息子として息子を愛すのか。儂は妻のような息子を前にすると目眩がしてくるのだ。