Entry1
心霊こわい
ごんぱち
日が落ちかけ、湖の上に広がる空は、既に薄暗くなっていた。
「ほー、ここが心霊スポットなのか」
車から降りた四谷京作は、柵に手をかけ辺りを見渡す。
「そうだよ」
蒲田雅弘は、自分の両腕を掴んで肩をすくめている。
「小さい女の子が交通事故に遭ったとか、溺れ死んだとか、殺されたとか、色々言われているがな」
初夏だというのに、時折吹き抜ける風は妙に冷たい。
「ふーん」
「割と最近の掲示板の書き込みでも、写真を撮ると死んだ女の姿が映るとか、車やバイクのブレーキが効かなくなるとか、妙な声がしたとか、嫌な噂が多いんだよ」
「ま、あんまり長居したい雰囲気でもないな。面白そうなものもねえし」
「だろ。さっさと行こうぜ」
蒲田は車に戻ろうとする。
「そもそも大仏見てねえだろ、大仏」
「ああ、すぐ戻る」
四谷は携帯電話のカメラを湖面に向ける。
「おい、やめろ、ヤバいんだって、写真はマジヤバいんだって!」
「心霊スポットで写真撮らんでどうするよ」
携帯電話のシャッター音が鳴った。
「――ん、これは!」
画面を見る四谷の表情が凍り付く。
「ああっ! 言わんこっちゃない!」
カメラにはそこにいないはずの人の姿がはっきりと映っていた。
「消せ! 早く!」
「やってるよ、でも消えねえんだよ!」
「あー、チミ達」
どこからともなく警官が現れた。
「むっ、成人男子だな、怪しいヤツめ、職務質問だ! 鞄の中と、パンツの中と、尻の穴と、モバイルのデータを全部見せたまえ」
「いっ、その」
警官は、四谷の携帯電話の画面を見て顔色を変える。
「む! これは! 衣服を着けていない女児の写真! 貴様、なんというものを持っておるか! おお、恐ろしい! お前は○米人か! この非国民が! そんなお前達は、最近施行された偉大な治安文化欧○の法に倣った法律によって逮捕だ! 死刑だ! 人生の終わりまでムショから出られなくしてやる! 顔写真を2ちゃんにアップして、下半身を映した動画をユーチューブで世界配信してやる!」
「心霊写真なんですよ、マジで!」
「信じて下さいよぉ、お巡りさん!」
「犯罪者の発言に一片の真実も含まれていないに決まっている! さあ、神妙に縛に付け、この女の敵、人でなし、人間のクズ、腐ったミカン! 逆らったり、弁護士を呼ぼう等と思ったら、この場で射殺する! 児童ポルノ所持者め!」
携帯電話の画面には、女児の血まみれの生首の霊がうすらぼんやりと映っていた。