Entry1
文化祭
萩鵜あき
文化祭。ああいい響きだねぇ。みんなの士気はこの3文字を持って向上。長い準備期間の初日放課後から機関暴発アドレナリン出まくり。江戸時代から警察がタイムスリップしてきたなら「曲者だ! であえであえー!!」と間違ってはいるが、ごく当り前の勘違いをしそうなくらい。校内は悲鳴とも取れるガヤが響いていた。
「今回の出し物なんだけど…って、美月さん聞いてる?」
「聞いてるよ西尾君。去年のお店はなんだっけ」
理不尽なのは、どうしてクラスの出店内容を委員長の西尾君と一緒に、理解不能な理由から不当抜擢を受けた副委員長の私だけで取り決めなければならないのか、だ。
「去年はお化け屋敷。その前は焼きそば屋だった」
「やっぱりシンプルよりかは斬新なアイデアがいいと思うんだけど」
「そう? 僕は逆に大衆の嗜好に合わせた、オールドソックスなのがいいと思うよ」
「オーソドックスね」
何その危険極まりないものは。古靴下?
西尾君は私の突っ込みを気にするでもなく、顎に手をおいて真面目に熟考しているようだ。
頭もよく運動もできる、まさに文武両道を絵に描いたような人なのだが、残念な事に彼の語彙はどこかずれて脳髄に刷り込まれているらしい。
「美月さんは僕の事を信頼しているのかな」
「え? ええ、そうだね。頭もいいし信頼できる人だと思ってるよ」
「いやもしかしたら、二人きりだから何か変な事されるとか思ったりしないのかなぁって」
「それは…」
健全な高校生同士、そんな考えを簡単に持ってしまう世の中だけは嫌だ。
「とにかく、僕の事を人畜だと思ってくれているならうれしいよ」
自虐趣味!?
「人畜無害ね。後ろの文字二つ削るとまずいと思う」
この完璧を絵に描いた美少年が、人畜と言われ悦ぶような危ない趣味は持っていてほしくない。
「こうしてると、僕らは一つ穴のむなじみたいだね」
…狢? しかも私たち別に悪い事を企んでるわけじゃないよ!
「その一つ穴のうなじは――」
「狢ですから!」
耐えきれなくて大声で突っ込んでしまった。
「…できるだけ人手に掛けたくないよね」
話の切り替えが強引すぎる!
「殺してどうするの! …人手は確かにかからない物がいいね。受験で手伝えない人もいるから」
二人は同じように腕を組んだ。
「どうしようかぁ…」
「どうしようか…」
文化祭でクラスの出し物は占いの館になった。当然西尾君も占い師役をやる事になったのだが、彼の言葉で激怒した客が居た事は、言うまでもない。