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1000字小説バトル

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1000字小説バトル【Verde】stage2
第8回バトル 作品

参加作品一覧

(2008年 10月)
文字数
1
萩鵜あき
999
2
(本作品は掲載を終了しました)
ウーティスさん
3
ごんぱち
1000

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Entry1
文化祭
萩鵜あき

 文化祭。ああいい響きだねぇ。みんなの士気はこの3文字を持って向上。長い準備期間の初日放課後から機関暴発アドレナリン出まくり。江戸時代から警察がタイムスリップしてきたなら「曲者だ! であえであえー!!」と間違ってはいるが、ごく当り前の勘違いをしそうなくらい。校内は悲鳴とも取れるガヤが響いていた。

「今回の出し物なんだけど…って、美月さん聞いてる?」
「聞いてるよ西尾君。去年のお店はなんだっけ」
理不尽なのは、どうしてクラスの出店内容を委員長の西尾君と一緒に、理解不能な理由から不当抜擢を受けた副委員長の私だけで取り決めなければならないのか、だ。
「去年はお化け屋敷。その前は焼きそば屋だった」
「やっぱりシンプルよりかは斬新なアイデアがいいと思うんだけど」
「そう? 僕は逆に大衆の嗜好に合わせた、オールドソックスなのがいいと思うよ」
「オーソドックスね」
何その危険極まりないものは。古靴下?
西尾君は私の突っ込みを気にするでもなく、顎に手をおいて真面目に熟考しているようだ。
頭もよく運動もできる、まさに文武両道を絵に描いたような人なのだが、残念な事に彼の語彙はどこかずれて脳髄に刷り込まれているらしい。
「美月さんは僕の事を信頼しているのかな」
「え? ええ、そうだね。頭もいいし信頼できる人だと思ってるよ」
「いやもしかしたら、二人きりだから何か変な事されるとか思ったりしないのかなぁって」
「それは…」
健全な高校生同士、そんな考えを簡単に持ってしまう世の中だけは嫌だ。
「とにかく、僕の事を人畜だと思ってくれているならうれしいよ」
自虐趣味!?
「人畜無害ね。後ろの文字二つ削るとまずいと思う」
この完璧を絵に描いた美少年が、人畜と言われ悦ぶような危ない趣味は持っていてほしくない。
「こうしてると、僕らは一つ穴のむなじみたいだね」
…狢? しかも私たち別に悪い事を企んでるわけじゃないよ!
「その一つ穴のうなじは――」
「狢ですから!」
耐えきれなくて大声で突っ込んでしまった。
「…できるだけ人手に掛けたくないよね」
話の切り替えが強引すぎる!
「殺してどうするの! …人手は確かにかからない物がいいね。受験で手伝えない人もいるから」
二人は同じように腕を組んだ。
「どうしようかぁ…」
「どうしようか…」
文化祭でクラスの出し物は占いの館になった。当然西尾君も占い師役をやる事になったのだが、彼の言葉で激怒した客が居た事は、言うまでもない。
文化祭 萩鵜あき

Entry2

(本作品は掲載を終了しました)

Entry3
みょうが宿
ごんぱち

 昔、山のふもとに、小さな宿があっての、夫婦が細々と切り盛りしておったと。
 その日、客は旅の男一人だけじゃった。
 男が風呂を使って、亭主と女房が布団を敷く為に部屋に入った時の事じゃ。
 女房が男の荷物を持ち上げるとな、包みが弛んでおって、中に入っておった巾着が落ちたと。何とはなしに女房が巾着袋を開くと。
「あんた……こ、小判じゃ」
「二〇両はあるの!」
 一〇両盗めば首が飛ぶ世の中じゃ、手を出せばただではすまん。しかし、一度見てしまったら、欲しくなって仕方がない。
「……なあ、お前」
「なんじゃ? あんた」
「確か……ミョウガを食べると物忘れが激しくなると言うな」
「そう、じゃな。部屋に残っておったら、祝儀をはずんだとしか思えん」
 二人は顔を見合わせ、にんまりと笑ったと。

 ミョウガの和え物、ミョウガの味噌汁、ミョウガのごはん、焼いたミョウガに、蒸しミョウガ、なけなしの油を使ってミョウガの天ぷらまで用意した。
 男はミョウガ好きじゃったものだから、うんめえ、うんめえと、全部平らげたと。
 そして次の日の朝。
「お客さん、出発が早いんではなかったかの?」
「それとも、ふふっ、お忘れんか?」
 亭主と女房が部屋に入り、男の布団を剥がすと。
 男はピクリとも動いておらんかった。
「う、うひいいい!」
「ど、どうしてお客さんが死んで――そうか、息をするのを忘れたんじゃ」
「――どうすべ、ああ……」
「あんた」
 女房がごくり、と生唾を呑み込んだ。
「この人は、うちには泊まらなかった。ええな」
「そ……そうじゃな」
 二人は夜まで待って、男の死骸を山に捨てたと。
「――後はミョウガでも喰うて、忘れてしまえば良かんべ」

 二〇両を元手に、亭主と女房は、宿を小綺麗にして商売を続けた。小綺麗になれば、客も寄りつく。宿は段々に繁盛し始めたと。
 ある日の夜。
 厠に向かおうとした亭主は、庭先にぼうっと白いものを見かけたと。
「……誰じゃ?」
 よく見ると、旅姿の男が一人、後ろを向いて立っておった。
「部屋は空いておらんぞ。まあ、軒先なら泊めん事もないが、二分は貰わんとの」
 男は黙ったまま振り返りもせん。
「何とか言ったらどうじゃ、まさか盗人か!」
 ゆっっくりと、振り向いたその顔は。
 死んだ筈のあの男じゃった。
「ひ、ひいぃぃぃっ!」
 腰が抜けてしまって震えるばかりの亭主に、男はすぅっと近付いて、顔をじぃぃっと見てから。
「うら……何じゃったかな?」