≪表紙へ

1000字小説バトル

≪1000verde表紙へ

1000字小説バトル【Verde】stage2
第9回バトル 作品

参加作品一覧

(2008年 11月)
文字数
1
(本作品は掲載を終了しました)
ウーティスさん
2
萩生あき
999
3
秋尾十一
684
4
ごんぱち
1000

結果発表

投票結果の発表中です。

※投票の受付は終了しました。

  • QBOOKSでは原則的に作品に校正を加えません。明らかな誤字などが見つかりましても、そのまま掲載しています。ご了承ください。
  • 修正、公開停止依頼など

    QBOOKSインフォデスクのページよりご連絡ください。

お問い合わせ

Entry1

(本作品は掲載を終了しました)

Entry2
神様のちょっとした悪戯
萩生あき

「性欲、持て余す。前置き終了。……いただきまーす!!」

 あるところに性欲を持て余しすぎた少年がいました。
 その少年は神の逆鱗に触れ、車に轢かれて心肺停止となってしまいます。
 罪状は「無差別性欲解放罪」――神様はそう少年に告げました。

 少年はありとあらゆる女子生徒を食べ尽くしました。学校にいる全ての生徒といっても過言ではないでしょう。
 その行いを神は憂い、怒り、食べられた女子生徒の悲しみをその少年に全てぶつけてしまおうと思ったのです。

「でもさ神様。お前は俺を殺すという形で罰を与えたのかもしれないけど、それは殺人とどう違うんだ?」
 罰という言葉なら何でも正義になると勘違いしてないか? と彼は続けました。

「悪い者に罰を与えるのは世の理に対するバランス維持の一環。誰もが平等に悲しみ、幸せを授かる権利を持っておる」
 悪人の貴様は悲しんだ人の気持ちを、少しでも感じたことはあるのか? と神様は続けました。

「だったら、どうして悲しみ続けている世界の貧困層は救わないんだ。どうして肥え続ける大国の指導者に裁きを与えないんだ。お前の理論自体がバランスとれてないじゃないか」
 空言を言うなら人に影響しない所で勝手にほざいてろ。と少年は続けました。
 その言葉に、神様は少しだけショックを受けました。

 自分の行ってきた善行も自らがそう思っていただけで、相手にとっては苦痛でしかなかったのか?
 己の正義感の為に何人もが犠牲となり、何人もが不条理な栄誉を授かったのか。

「例えお前の言葉が棚上げ理論だったとしても、ワシの心にしかと響いたぞ。ただし、お前にはしっかりとした処罰を与える。これは、ワシの正義じゃ」
 だからこれからしっかりと償え。と神様は続けました。

 つまり、彼は現世に命を留める事を許されたのです。


 少年が目を覚ました時、病室には数十人の女子生徒が列を連ねていました。
 彼を、お見舞いに来たのです。彼女たちのその行為に、目を覚ました少年は感動しました。

 しかし、彼の中に渦巻いていた持て余す性欲はこの時、既に全て消えてしまっていました。 
 きっと神様が、彼の邪な欲望を奪っていったのでしょう。
 今後は少年に泣かされる、少女の心配はなくなりました。

 ……どうやら少年は、神様から何か一つ授かったようです。

 その何かが彼の胸中を埋め尽くします。
 少年は今『男の医者』に視線をがっちり固定し、顔を赤らめていました。
神様のちょっとした悪戯 萩生あき

Entry3
三日と十年
秋尾十一

 「ラーメン食べに行こうぜ」
 放課後、マサオが誘ってきた。
 「じゃあ、松華堂な」
 「あ」
 「どうした?」
 「ヤベェ。オレ、用事あるんだった」
 「用事?」
 「虫カゴから逃げた虫、探さなくちゃ」
 高一にもなって、「虫カゴ」とはマサオらしい。
 「で、いつからいなくなった?」
 「三日前」と言った後、マサオは自分の言葉を疑い始めた。「う~ん、いや、十年前だったかな」
 「なあ、マサオ」
 「ん?」
 「十年前と言えば、ボク達は6歳だ。この十年間に、おねしょしなくなったり、逆上がりができるようになったり、プールで泳げるようになったり、分数の計算ができるようになったりした。『三日間』と『十年間』は大きく違うだろ?」
 「オレ、6歳の時にはもう、おねしょしてなかったぜ」
 軽い徒労感を覚えながら、ボクは話を続けた。
 「で、どんな虫だった?」
 「シネマ」
 「なあ、マサオ」
 「ん?」
 「シネマって、虫じゃないよな?」
 「登場人物の一人が崖から飛び降りる時に、画面の片隅にモルフォ蝶が映っていたんだ。美しかったあ。だから、そのシネマを虫カゴに入れた」
 「なあ、マサオ」
 「ん?」
 「穴があったら、入りたくないか?」
 「穴なんてないし」
 「マンホールでもいいぞ」
 「それなら、喜んで」とマサオは言った。「だって、マンホールの下って、天国かもしれないだろ?『マンホールの下は、奈落の底』って、決まっているわけじゃないだろ?」
 「なあ、マサオ」
 「ん?」
 「ラーメン食べに行こうぜ」
 「おう。さっさと行こう」とマサオは言った。「我々がラーメンを食べるのにためらうべき理由は何ひとつないのだから」
三日と十年 秋尾十一

Entry4
ゆりかご
ごんぱち

「……あの、あなた、なんでこんなとこ、入ってるんですか」
 女の看護師は、恐る恐る尋ねる。
 手足を極限まで縮めて、こうのとりのゆりかごの受け口のベッドに入っていた男は、顔を上げ、答える。
「捨てられました」
「……は?」
「捨てられました」
「ふざけてるんですか? あの?」
「捨てられました」
 男は繰り返す。顔にいくらか皺があり、髪は薄くなっており、スーツを着ている。
「葛城さん、どうかしたんですか?」
「ああ、後藤さん」
 もう一人、女の看護師の後藤がやって来る。
「この人、ゆりかごに入って来ちゃって」
「……よく入って来れたね」
「捨てられました」
 男はまた繰り返す。
「ふざけてないで、さっさと帰って下さい!」
「警察呼ぶよ」
「捨てられました」
 葛城は男に視線を向けたまま、内線電話の受話器を取る。
「あ、すみません、受け付け? なんかおかしな男が入って来たんで、一一〇番お願いします」
「捨てられました」

「――で、一昨日逮捕したあの男なんですがね」
 病院の応接室で、私服刑事が、院長に話す。
「持ち物はない、スーツの縫い取り、下着に至るまで名前も住所も書かれていないし、歯の治療跡や身体の手術跡なんかも含めて、身元が分かりそうなものが、一切ないんですよ」
「はあ」
 院長は曖昧に頷く。
「警察としても、顔写真をばらまいて手配してるんですが、反応はゼロでね」
 刑事は禁煙パイプをくわえる。
「私共が見つけた時も、あれ以上何も持ってはいませんでした。最初に発見した看護師も、確かにあれの他に何も持っても、身に付けてもいなかった、と」
「ええ、さんざ確認しましたからね」
 少し躊躇いがちに、刑事は頭を掻く。
「それでですね」
「はい」
「正確な年齢も分からないんですよ」
「まあ、そうなりますよね」
「本人は、生後五日と言ってるんです」
「はあ」
「簡単に言うと、生後五日という情報の他には、何の情報も分からない人間、な訳です」
 院長の表情が徐々に強ばっていく。
「ちょ……け、刑事さん、まさか」
「となると、まあこれは捨て子だと考えて良いだろうって、署内の会議で決まりましてね」
 刑事は立ち上がる。
「じょ、冗談じゃない、あれは赤ん坊を助けるためのもので!」
 ドアが開き、男が入って来た。
「――捨てられました、生後五日です」
「ふざけんな、こら!」
「ま、後はヨロシク」
「お前んとこで処理っ、おい!」
「捨てられました、生後五日です」
「逃げんなあああああ!」