Entry1
悲しき亜熱帯
サヌキマオ
「マコガレイのはわい航路」
仕事場で飯を食っています。先生はふらいど鶏を貪る手を止めてそうつぶやくのでした。
「そういう歌があったんだよ、昔」
「はぁ」
タブレットPCでヰキめぐりをしている。ヰキめぐりとは、ヰキペヂアのリンクを辿り巡りして、どこにも辿り着かないことである。なお、Wiはヰ、diはヂと表記すべきだというのが先生の持論であります。ニンデンドーヰー。
「アレ、どうなんだろうね」
「妊娠8週目からOKだと聞きました」
「そういうアレではぬぃ。マコガレイは日本海溝を渡れるのだろうか?」
沈黙。こきゅう、みじゅう、という音を立てて先生は鶏を小骨ごと噛み締め、残滓を口から出している。わいるど!
「と、いいますと?」
「マコガレイが日本沿岸からはわいに旅立つには、日本海溝を越えねばならぬ」
先生は重々しく宣言しました。
その場合、カレイというのは地球の曲線に沿って泳いでいけるのか。
それとも、やはり海溝という名の深い谷に沿って進まねばならないのか。
「海溝を迂回して通るというのはどうです?」
「あぁ?」
先生は慌ただしくタブレットを捏ね回して日本海溝をヰキペヂります。鳥の脂がずるずるして気持ちが悪い。
「あ、回避できるかも。小笠原諸島のあたりからぐーっと。もしくは襟裳岬の方から、ぬーっと」
夢が膨らむなぁ!
「それで、ハワイに行ったマコガレイは、どうするんです」
「え?」
「そもそも、なんでマコガレイはハワイに行こうと思ったんです?」
「……憧れたんだろう。マコガレイだけに」
「マコガレのはわい航路、ですか」
「帰りはフェリーで帰りましょう」
「苫小牧なんかについちゃったりして」
「苫小牧発変態行きフェリー」
「ナンダカワカンナイ。ワー、スッチャラスッチャンスッチャン」
こらこらこらこら、まーた収拾のつかん話を投稿しようというのか。
閻魔大王である。今日は冷蔵庫から無理やり出てきた。
「鼻の穴からスイカが出てくる、みたいな」
「あれは出産の比喩だ……で、なんだ」
「大王、マコガレイはなぜハワイを目指したのでしょうね」
「こういうときこそ収拾をつけてくださいよ大王」
「そのために出てきたようなもんでしょ大王」
「……そりゃあアレだ、マ、マコガレたんだ」
「失かぁく!」
宣告とともに頭上から金ダライが落ちてきて大王初め三人の頭を直撃いたします。金ダライにはたっぷりと水が張ってあって、完全に首が折れるという死ぬ仕組。また今度!