Entry1
実りの秋
ごんぱち
「おやつ買って来たぞ、蒲田」
「さんきゅ四谷、丁度仕事が煮詰まってたとこだ」
「ったく、第二四半期だからって忙しくならなくても良いんだよ。普段からコツコツと進めておけば、こんなに忙しくはならないんだ」
「決算なんて売り上げ確定してない時にはどうしようもないだろ。んで、何買って来たんだ」
「これさ」
「ほほう、栗饅頭か。年中売っては居るが、この時期だと丁度季節物って感じがして良いな」
「だろう」
「この栗あん。大きく齧ったらパサパサするが、少しづつ齧ると良い感じに味わい深い」
「昔ばあちゃんが、ケーキを『一口をそんなに大きく食べないで、舐めるようにしなきゃおいしくないだろう』と言っていたが、こういう感覚なのかな」
「あるだろうな。年寄りは水分少ないし」
「だから熱中症にもなりやすいんだよな」
「がぶ飲みしようと思っても、むせて誤嚥性肺炎とかなるしな」
「さて、休憩も住んだし、仕事するか!」
「おう!」
「……四谷君、蒲田君」
「あ、課長」
「どうしました?」
「なんでバイバインの話が出て来ないのだね!」
「ああっ! し、しまった!」
「つい、でも、おばあちゃんほっこりエピソードが」
「今更言い訳かね! 栗饅頭はバイバインの枕詞だろう。まったく入社何年だね、そんな事だから大した成績も上げられないのだよ」
「で、ですが課長、この前の会議で逆転の発想と」
「そうです、逆転で」
「言いたい事はそれだけか? 今度の査定、楽しみにしておくのだな!」
「……畜生、課長のヤツめ」
「四谷、パワハラなんかに屈しないぞ、俺達は」
「そ、そうだ。栗饅頭だからって、バイバインばっかりじゃないんだ!」
「大体、栗饅頭よりもバイバインの方が発明が遅いんだ。栗饅頭パイセンの実力だけで、物事は成立するんだ」
「そうとも、栗饅頭はそのままで良いんだ!」
『――私は栗饅頭の精』
「うわ、なんか出て来た」
「栗饅頭体型だ!」
『あなた方の心意気しかと受け取りました。それに応え、私も分裂して宇宙を埋め尽くすのを辞めましょう』
「いや、あんたにその力がある訳じゃないだろ」
「あんたはただの食い物だよ」
『無礼者め、栗饅頭のピカピカのとこフラッシュ!」
「ぎゃああ、目が、目があああああ!」
「畜生、よくも蒲田を! かくなる上は、牙はゴリラの原始の炎、噛みつき攻撃だ!」
『うおっ、何をする!』
「もぐもぐもぐ」
「むしゃむしゃ」
「――後はお茶が一杯怖いな、蒲田」
「怖い物の話はしてなかったろ」