Entry1
かたつむりの調理法
サヌキマオ
ある夜、夢に****が出てきて、かたつむりを食える能力を与えると云う。きっとこれからの世界で役に立つから、と****が神々しく光って消え去ったところで目が覚めた。夢は夢であった。でも、夢かもしれなかった。本当にかたつむりが食えるようになっているかもしれない。これからの世界で「かたつむりが食える」ことが世の中の役に立つのかもしれない。
それなりに良い歳なので、かたつむりを食うに当たっての注意条項のようなものは断片的に知っている。やれ寄生虫がどうの、食用のものは別途養殖しているだの。サイゼリヤのエスカルゴは食べたことがある。あれは油とニンニクとパン粉がうまいのであって、エスカルゴ自体は頼りない肉の粒であると思う。だったら同じ調理法で鶏の胸肉を使った方がよほど食べ応えがあると思う。
かたつむりを食べるのであった。調べてみれば、なんだかんだ云うても貝の仲間である。となるとバターで焼いてみたり、シチューに入れてみたりするのが適当であろうと思った。寄生虫は、煮れば死ぬのであろうと当たりをつけた。ウィルスだって熱湯にはかなわないのだ。いわんや生物をや、である。俄然やる気がわいてきた。そもそも、今の自分はかたつむりを食べられる身体になっているのだった。前提を忘れぬように出かけることにする。
近所の公園は長い坂の途中の四つ角にあって、コンクリートで出来た巨きな滑り台を中心に、ブランコと滑り台がある。もう日暮れ時とあって、小学生の高学年くらいの男子たちが数人、スマホだろうかカードゲームだろうか、滑り台の上に集まって遊んでいる。かたつむりがいるとすれば公園をぐるりと囲んだ植え込みだろう。ツツジが白に紫にと花を盛りにしている。次第に暗くなる中、植え込みを凝視しつつ公園をぐるりと一周してみたがかたつむりは見つからない。今日も一日よく晴れていた。やはり雨が降らないとかたつむりは顔を出さないのだろうか。急にいやになってきた。もう帰ろうと思った。ついでにと公園のトイレに入ると、一つだけある小便器に、一匹の大きななめくじが這っているところだった。照明で這った筋が光った。
なめくじは、かたつむりだろうか。
自分は何に追い詰められているのだろう、便所から公園の外に出ると、ちょうど自転車に乗った警官とすれ違った。もしかしてさっきの子供たちが通報を、と脳裏によぎったが、警官は何事もなく坂を滑降していった。