≪表紙へ

1000字小説バトル

≪1000_4表紙へ

1000字小説バトルstage4
第78回バトル 作品

参加作品一覧

(2024年 6月)
文字数
1
おんど
1000
2
サヌキマオ
1000
3
ごんぱち
1000
4
アレシア・モード
1000
5
佐左木俊郎
2202

結果発表

投票結果の発表中です。

※投票の受付は終了しました。

  • QBOOKSでは原則的に作品に校正を加えません。明らかな誤字などが見つかりましても、そのまま掲載しています。ご了承ください。
  • 修正、公開停止依頼など

    QBOOKSインフォデスクのページよりご連絡ください。

お問い合わせ

Entry1
長編小説(途中まで)
おんど

先月号の感想で話の前後がわからないから投票に至らなかったといったご意見を頂いたので冒頭それにお答えしてから前回の続きを語ろうと思う。じつはこの感想を述べてくれた読者の名前は遠い昔の話になるがインターネット上で小説を発表し、発表した者同士が掲示板で乳繰り合うことを目的としたなんちゃら書房とかいうサイトに参加していた頃にお見かけしたようなしないような名前で詳細表示はモザイクをかけておくが懐かしい感情が波打った。さて話の前後がわからないというご指摘だが、それは大いに頷けることであってこうして今月号の文章を書き始める前に先月号の文章をおさらいして読むわけだが、まったく記憶にないのである。もちろん多少の薬物を嗜むとはいえ某氏のようにストロングゼロをぐいぐい飲みながら酩酊状態で記述するというシュルレアリスムでオルガスムスを得て新しい宗教法人を立ち上げよう、たちあがれ日本、勃ちやがれ俺のちんぽといった性器漲る状態で記述作業を行っているにもかかわらずまったく先月号の内容に覚えがない、なんなら題名すら覚えておらず、しかし毎号同じ題名だからコピー安堵ペーストによってとりあえず題名不在の音楽会の難は逃れた。それに投票に至らなかったからといって女の股をひらいで待望の観音様の御開帳と相成った段で肝心の息子が勃たない、ゴムの中に引きこもる、引きこもってゲームばかりしている、夜中に起きて昼はねている、ご飯をトレーに載せて部屋の前に置いておくと朝にはきれいに食べ終わって再び部屋の前に置いてある、ツイッターアカウントを探り当てて偽アカで語りかけブルーハーツの楽曲で共感を得てしばし気脈を通じ合うものの親だとバレて暴れまわり誰も信じられなくなって壁に頭をがんがん打ち付けていい曲が閃いたと思ったら盗作でようやく勃ったと思ったのに中折れして射精に至らなかったみたいに思わないでいただきたい。あなたの一票で政治が変わるわけではないし百合子の虚言癖が治るわけでもない。気にしなくていいと言うと余計気にしてしまうだろうからそっと文明堂のカステラを差し入れてくれたら今回のことはきれいに水に流していいとさえ思っている。梶原さんだって嫌味なくらい巨乳だが別に誰かに投票を促すための巨乳ではなく自然とお芋を食べているうちに育ってしまったと言うと本人は照れて笑うかもしれないし溜まった肌着を洗ってしまうかもしれないが私はその汚れた
長編小説(途中まで) おんど

Entry2
ありくい
サヌキマオ

 朝、カミさんに朝食用のハムを買ってくるように頼まれる。わかった、とホワイトボードに「公」と書き、夕方になって「そうだハムだ」と近所のまいばすけっとに出かけ、酒や肉に散財して帰ってくる、ホワイトボード前で崩れ落ちる。ハムだけ買ってこなかったのだ。もう自分の記憶がほとほとイヤになった。またハムだけ買いに行くのもいやなので冷凍庫を開けると30%引のときに買いだめておいたスモークチキンがある。翌朝の朝にしれっと出す。「本当に自分がイヤになっちゃって」というと、カミさんは「まあなんでもええわ」という顔をしてパックとふたのペラペラの間から箸で肉片を引っ張り出す。
 脳というのは八百兆ある神経細胞のあちこちの動きのアンサンブルで思考が生成されとるんで、研究する側も無尽蔵にあるパターンを解析するのはまだちょっとも進んでないんやで、という話を本で読む。体長一ミリの線虫にも十年かかりましたんにゃわ、と筆者も頭をかいておられる様子が目に浮かぶ。となると当方の脳も脳なりにアンサンブルをしておるに違いなく、パソコンの前に座っているだけでちんちんに兆すものがあるというのもアンサンブルであるという発見がある。八百兆だけに!
 夜になってカミさんといたしているはずだったが、どうも薄暗がりで善がるところを見ているとカミさんではない別の女なのであるが、明確にこちらのほうが顔が好みなのでこのまま最後まで終わらせてしまおうとする。ちんちんも久々に最後まで勢いを失わない。いくぞ逝くぞ最後まで、と明日のことも考えず腰を振りたくると背後で「ぎい」と音がする。しまった息子が起きてきた! と布団をはねのけて飛び起きると、うっすら開いた戸に鼻先を突っ込んできたのはありくいで、硬い爪が板張りの床に当たるとカタカタ云う。
 このありくいには昨日新宿で遭った。ちゃんと覚えている。Youは何しに新宿へ、と思ったものであるが、ありくいならばこの状況に言い訳をしなくていいだろうという気になった。女も特に気にしていないようなので続行する。少し萎えてしまったがまだ続行できる――あれ、そもそも息子がありくいなんだっけか。
 思考が脇にそれると疲労がどっと襲ってきて一気に萎えてくる。「やめよう」あんたももう十分満足しただろう。ありくいは興味を失ったのかダイニングキッチンのほうに戻っていった。静寂が戻ってきた。
 そういえば朝のパンを買い忘れている。
ありくい サヌキマオ

Entry3
石芋アフター
ごんぱち

 昔、旅の弘法大師様に、芋を分けて欲しいと頼まれた男がおりました。
 ケチな男は、「これは石芋といって、硬くて食べられない」と断りました。
 以来、その村の芋は全て、本当に硬い石芋になってしまったのです。

「何という……」
 男から事情を聞いた長老は、嘆息します。
「あの乞食坊主、何者だったんでしょう」
「物欲を捨てるのが本当の仏の教えだ。相当な聖人だ、聖徳大師様や弘法大師様だったかも知れんぞ」
「うへぇ……それじゃどうしたら」
「……仏様の前で謝った後、石芋を皆で作り続けよう。そうすれば、仏様への尊敬や感謝を忘れまい」

 彼が年老いて、子の代になり、子も年老いた、とある日照りの年。
「――こいつもやられた!」
 彼の子孫の若い男が、蕎麦の株を引き抜きます。
 実はついばまれ、根は食い千切られ、枯れています。動物達も、飢えているのです。
 男はがっくりうなだれ、畑の一角の緑に目を向けました。
 そこは、石芋畑でした。石芋はその硬さから、動物も食べられず、荒らされていないのです。
「畜生!」
 苛つきながら、男は石芋を引き抜いて、石に叩き付けます。
 石同士をぶつけたような音が響きました。
「畜生、畜生、畜生!」
 何度も、何度も、何度もぶつけるうち。
 バリッ。
 石芋がついに割れました。
「おい、どうした」
「へえ、割れるんだな、どれどれ」
 寄って来た村人の1人が、カケラを口に入れます。
「ぺっぺっ! こりゃ、トゲ芋だ」
 サト芋科の植物には、シュウ酸カルシウムが入っている事があり、これが大量だと痛みを伴うのです。
「飢えて死ぬか、芋の毒で死ぬか……」
 男は、割れた芋をじっと見つめます。
 誰かが言いました。
「毒抜き……出来ねえかな」
 村人達は、石芋を何とか砕き、水や灰にさらし、それを何度も繰り返した後。
「おお、これは!」
 白いデンプンが、残りました。
「喰える、喰えるぞ!」
 喜び騒ぐ村人達の傍らで、男は石芋を見つめます。
(言い伝えのお坊様は、この村の作物が偏って、飢饉に弱い事に気付いて、石芋にして下さったんだ)
「仏様、ありがとうございます」
 男は深々とお辞儀して、手を合わせます。
 他の村人達も、1人、また1人と、手を合わせていきました。

「弘法大師よ」
 極楽の蓮の池越しに地上を眺めていたお釈迦様が、傍らの大師様に声をかけます。
「安易に手を貸さず、上手く人々を救ったな。大したものだ」
「……あ、はい、もちろん計画通りです」
石芋アフター ごんぱち

Entry4
超人武芸帳
アレシア・モード

 何かが道をやって来る。細身の黒い上着とズボン。目深に被った黒の帽子と白いフリルの襟の隙から、狂った気品を帯びた眼が私を睨み、彼の思考が流れ出る。
 ――混沌の世界の中、我が意識は二つの力に引き裂かれ、真理を失う。占星術師は運命の糸を引き、片や祖霊は警句を重ねる。我は夜の底を彷徨う。そこに出会ったこの純朴なる村娘、澄んだ愚直の眼差しは、無知なる信仰の顕れか――!」
(誰がアホやねん)
 私――アレシアは、彼の胸に付いた名札に目を留めた。
(ニーチェ……)
 そう書いてある。
「旅人よ、」私は気遣う調子で話しかけた。「夜路は危うございます。貴方は何を求めて彷徨うのです」
 ニーチェは私を見つめて言った。
「ああ我は何を求む。亡霊と占星術師に翻弄されつ求むるものは何。我は、我は真理を求む!」彼が叫ぶたび、祖霊の呻きが私の頭に響いた。「しかし真理は見えず、視界を覆うは戦乱の影!」占星術師の嘲笑が頭に響いた。
 私は優しく微笑んだ。
「真理は単純な筈です。飾りを捨て、ありのままを見つめましょう」
「単純で、難しい話だ」
 彼は天を仰いだ。星々が淡く瞬いている。微笑みかける無数の純粋の光が、魂をも洗うようだ(※ニーチェの感想です)。だが一方で誘うは占星術師の暗黙の力。十二宮の主の物語る因果の流れ、戦火の予言か――!」
 赤い大きな文字が降ってきた。
「時は2025年! 二つに割れた大陸に悪魔の遺恨が蘇る!」
「東の獅子と西の鷲! 欧州は憎悪の渦に投げ込まれた!」
 私は恐怖を隠しきれない表情を作りながら彼を見た。そうだよ、純朴な私は単に不安なんだね。戦火が村を焼き、大切なものを灰にするのが。
「だが戦乱にも意味はあると占星術師は言う。天秤座が運命を操り新たな調和を生み出すと。でも祖霊は疑う。勝者など無い、戦いが残すのは廃墟のみだと。我は迷い狂う。誰を信じる、亡霊か占い師か。それとも」
 彼は私の手を両の掌で包んだ。
「この、純朴な村娘か」
「お聞きなさいな」
 純朴な村娘は言った。
「人の魂は、すべて相手の内にある。すべてが真理なのですよ」
「そうだ、真理はすべての内にあった。風の中の祖霊、砂の中の占い師、村娘、すべてが我が真理だった。あああ純朴な村娘――」
 ニーチェは息を荒げ、そばに居た一頭の豚の白い肌へと挑んで行った。賢明なる読者諸君はお気付きの事かと思うが、彼は最初に目を合わせた時から私の変わり身の術に落ちていたのだ。
超人武芸帳 アレシア・モード

Entry5
今月のゲスト:佐左木俊郎


 彼女は銀座裏で一匹のすっぽんを買った。彼女はそれを大型の鰐皮製のオペラ・バックに落とし込んで、銀座のペイヴメントに出た。
 宵の銀座は賑わっていた。彼女は人の肩を押し分けるようにしながら、尾張町の停留所の方へ歩いた。店を開きかけた露天商人が客を集めようとあせっている。赤、青、薄紫の灯光が揺れる。跫音きようおんが乱れる。
「もしもし! 奥さん」
 彼女はたれかに呼びかけられたような気がして立ち止まった。彼女の肩に、無数の肩が突き当り擦り合って行った。鼠色の夏外套、鮮緑の錦紗。薄茶のスプリング・コオト。清新な麦藁帽子。ドルセイの濃厚な香気。そして爽やかな夜気が冷え冷えと、濁って沈殿した昼の空気を澄まして行った。
 錯覚だったのだ。たれも呼んではいなかった。鼠色のハンチングをぶかに冠った蒼白く長い顔の男が、薄茶の夏外套に包んだ身体を、彼女の右肩に擦り寄せるようにして立っているだけだった。
 彼女はその男からのがれるようにして、車道を越えて向こう側の舗石道に渡ろうとした。電車がピストン・ロットのように、右から左へ、左から右へと、矢継早に掠めて行った。青バスが唸って行く。円タクの行列だ。彼女は急に省線しようせんで帰ることにした。円タクをやめて。
 省線電車は割に混んでいた。しかし彼女はどうにか腰をおろして、その左脇にオペラ・バックを置くことが出来た。
 神田駅に近付いたとき、彼女は、自分の左脇に腰をおろしている男が、顔全体で痛さを堪えながら指先を握っているのに気がついた。その、指の間からはだらだらと血が滴っていた。
「まあ! どうなさったんです?」
 彼女は、眉を寄せて、自分のハンケチを出してやった。
「あ、済みません。どうも、あの扉で……」
 彼は礼を言いながら血に染った指先をハンケチで包んだ。食指の一節はぐしゃぐしゃに切れて無くなっていた。
「まあ、もげたんで御座いますか」
「え。あの扉でもって……神田ですね。や、どうも……」
 男は戸口へ駆けて行った。鰐皮製のオペラ・バックがその男の席に倒れた。彼女も、それを取って乗換のために戸口へ立って行った。エンジン装置の自働開閉機が、するするっといた。


 彼女は、すっぽんを洗面器に入れて、自分のへや這入はいって行った。
 彼女は洗面器の中の、すっぽんをめながら、首を出すのを待った。すっぽんのなまを取るのには、その首を出すのを待っていて、鋭利な刃物でそれを切るのだと教えられていたからであった。
 彼女は電車の中での、自働扉に指を噛まれた男のことを思い出した。あの男の指のように、このスッポンの首がぐしゃぐしゃに切断されるのだ。彼女はそれを考えると厭な気がした。
 しかし彼女は、右手に、鋭利な大型の木鋏きばさみを握って、すっぽんが首を出すのを待たなければならなかった。これだけは他人に頼むわけにはいかないような気がしたし、女中達へ命ずるのにも彼女は気がさした。彼女は秘密にこれを処理したかったのだ。
 彼女の血液のうちの若さは、近頃ひどく涸れて来ていた。この血液のうちからかわいて行くものを補うために、彼女はいろいろのものを試みた。例えば「精壮」とか「トッカピン」とか。しかし、そんなものでは間に合わないのだ。が、彼女は涸れるものを涸れるままに、きるものを竭きるままに快楽を忘れることは出来なかった。日常の生活の上では何んの心配もいらない有閑階級の、沒落の途上で想像を許された唯一の快楽のために、彼女は、すっぽんの首を切ってそのなますすらねばならなかったのだ。
 首を出した。すっぽんが首を出した。
 彼女はその首を木鋏で切断した。と、その首はくわえていたものを吐き出した。白い指の一部だった。生爪の付いている繊細な指の一部だった。


 彼女はベットの上で朝刊を拡げた。
 彼女は或る記事に眼を惹き付けられた。

省線荒しの掏摸捕わる
犯人は食指の無い男
 二十日午後七時三十分、桜木町発東京行省線電車が新橋有楽町間を進行中、鼠色の鳥打を冠り、薄茶の夏外套を纏った四十前後の男が乗客婦人のオペラ・バックより蟇口を抜取ろうとしたのを発見され、有楽町駅にて警官に引渡された。
 犯人は右手の食指が無い男で、その語るところによれば、この男は、最近頻々として京浜間の省線電車を荒していたスリの常習犯らしい。
「私だって生れた時は普通の人間でした。私は仕立屋だったのですが、だんだんと世の中が、手先が器用と云うだけでは食って行けなくなって来て、女房が病気しても医者にかける金もない有様で、女房はとうとう死んでしまいました。私はそれからスリをやり出したんです。ところが私は、死んだ女房のことを考えると、綺麗な著物を著ている金持の女が憎らしくて仕方がないんで、大抵そう云う女のものを取っていたんですが、或る時、私は或る女のオペラ・バックの中で、どう云う仕掛があったもんか、この指を切取られたんです。それっきりスリなど廃そうかと思いましたが、金持の女がああして、綺麗な著物を著ていることなどを考えると、そして死んだ私の女房なんか、毎日綺麗な著物を縫っていながらそれを著られもせず、ばかりでなく、結局は飯さえ食えなくなったんだと、それが一体どんな奴のためだと、思うと私は廃さなかったのです。

 彼女は朝刊から眼を離して部屋の隅をめていた。そして、彼女は二三ヶ月以前に、電車の中で、自働扉に指を噛まれたと言って血を流していた男のことを思い出していた。