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1000字小説バトル

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1000字小説バトルstage4
第85回バトル 作品

参加作品一覧

(2025年 1月)
文字数
1
おんど
1000
2
サヌキマオ
1000
3
ごんぱち
1000
4
野村胡堂
1075
5
野村胡堂
1105

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Entry1
長編小説(途中まで)
おんど

長編小説を書く以外はなんの取り柄もないし梶原さんのお尻くらいしか撮る画もないのだが、中指から特殊な波動が出ているらしく、小さい頃から右手の中指を雌鳥の性器にあてがうと雌鳥は落ち着きなく身体を震わせ、クリーム状の塊をだくだくと流しだすことがしばしばあって、そこに精子をなすりつけたい雄鳥が遠くからそれを歯噛みしながら睨みつけ、学校帰りにカンムリカイツブリの雄の一群に襲撃されることもしばしばあり、ことの重大性を鑑みた東京都教育委員会より登下校の際、当該児童(私のことです)は防鳥ネットをかぶることが望ましいし、学校教育の管理下にある登下校時以外に外出する際にも白いハイソックスを着用し(これが鳥除けになるとの当時の科学的見解だった)防鳥ネットをかぶって雄鳥からの襲撃に備えるべきであるとの指導があった。まだ低学年だった私は知能も低かったし性格も素直で、母親のおっぱいの張りも十分あったからまだ授乳中だったし、父親はギャンブル依存症とアルコール依存症を併発して家の中では暴れるか廃人のように存在感を消しているかという家庭環境もあり、私はどちらかというと自ら好んで防鳥ネットをかぶって当時住んでいた都営住宅の周りを遊び回っていたものである。なぜなら母親の乳首は経産婦と思えないほど乳頭が小さく、ブラトップを使用し始めた女子中学生のように可憐だったため、防鳥ネットをかぶっていてもその隙間から乳首は吸えるから、じっさい中学に入って女子のブラウスから透けて見えるブラトップの中に潜む発達途中の乳首と母親の乳首とを重ね合わせ、ロリコンとマザコンを併発して妄想の世界に浮遊しつつ雌鳥の性器に中指を当てて本来鳥類が持つはずのない性的興奮を与えてしまったことは鳥世界の生態系を狂わせてしまったと言われれば返す言葉もないし、多少なりとも贖罪意識で鳥貴族のアルバイトに勤しんでいる現在の生活と無関係とは言い切れないが、鳥世界への贖罪意識を抱きつつ貴族として君臨するのは欺瞞に満ちた劣等民族としての自覚はあって、もはや少女のような乳首よりも梶原さんのような熟女のマスカット・オブ・アレキサンドリアを愛好するようになってしまった今となっては防鳥ネットの網をすり抜けられないのだから先の通常国会で成立した改正政治資金規正法のようなザル法と言われても致し方なく、あれは12月の初めだっただろうか北千住の30分3000円のピンサロで2発抜い
長編小説(途中まで) おんど

Entry2
帰ってきた猫の話
サヌキマオ

 内川萬閒翁のところにノラが帰ってきたのは松も明けて、十一日の午後のことだった。茶の間で懐手をしてラヂオを聴いていると、勝手のほうからどすん、ばたんと音がする。すわ泥棒かしらと情けなくも孫の手を持って廊下に出る。食いつくような寒さを推しておそるおそる勝手を覗き込むと、裏の井戸に面した窓から黒い髪の、外国風の彫りの深い顔の女が侵りこもうとして詰まっていた。女の髪と同じ色の毛皮のコートの下は素裸らしく、地面に向けてまっすぐに垂れ下がった乳房が重たく揺れた。土曜日にすることもないので夜は駒半にでも行こうかと思っていたが、それどころではなくなった。
「もしかして、ノラか」確信があった。同じ毛の色、真正面から右にねじれたハチワレ。三年前の春の宵にふらりとやってきた大柄な雌猫そのものだ。
「ノラデース。オスサシブリーフ」女はにこりとした。
 用足しから帰ってきた萬閒の細君の小牧も様子を見て一時は顔を強張らせたが、ノラが着物の脛のあたりに頭を擦り付け始めるとはっと察したらしく、すぐに箪笥から夏物の浴衣を出すと着せ付けた。痩躯の小牧の浴衣なので胸のあたりがぎっちりする。見事に肉の弾がどんと盛り上がり、毛皮の間から谷間がにゅいと強調される。三谷屋さんが閉まる前にさらしでも買ってきませんと、云いながらも、こたつから首だけ出したノラを見てよしとしたらしく、この際ノラには何を食べさせたらいいんですかねえ、などといってまた買い物に出ていった。
「お前一体、いままでどこでどうしていたんだ」明らかに猫であれば膝に抱いて背中でも撫でながら聞いてやることもできようが、のぞいた首筋からむん、と雌の匂いがすると妙にどぎまぎとして、それでも猫だから、ノラには違いないのだから、と指を差し出すとかぷ、と食いついてきた。紅の乗らぬつややかな唇が指のかたちにぐっと持ち上がり、ねりねりと指の先をねぶる感触がある。
 いや、これは猫だ。猫に決まっている。そう決めて左の手で頭頂から撫でつけてやると喉からゴロゴロと音がする。なんだ、やっぱり猫ぢゃないか。ホッとした気持ちで撫で下ろした指先がノラの耳を掠めると「あぅん」と吐息が漏れた。翁の無明にぼんやりと兆すものがある。
 夜遅くに雪が降った。朝になるとノラはいなくなっていた。玄関前に半ば凍てついたネズミの死骸が置いてある。
「もう帰ってこなくていい」と心底思った、と後に翁は語っている。
帰ってきた猫の話 サヌキマオ

Entry3
狩人とお坊さん
ごんぱち

「――これ、そのように獣を雑に殺すのは、無慈悲な事だ。お止しなさい」
 旅のお坊様が、狩人を見かけ、声をかけました。
「ですが坊さん。狩人ってもんはケダモノを殺すのが商売でして」
 狩人はニヤニヤと笑います。
「狩人であろうと、無闇に獣を殺して良いものではない。その業により汝も来世は畜生道に堕ちてしまうぞ。獣となれば、今度は銃を向けられるのは汝の方になろう」
「獣を殺したら獣になる、そりゃ本当ですかい」
「因果応報、成した事は我が身に返って来るものだ。獣なりとも丁寧に扱いなさい」
「なるほど……だったら」
 狩人は、帰りかけたお坊様に銃を向けます。
「……なんだ、その銃は」
「お坊様の言葉に感じ入りましたが、あっしはもう獣を殺しすぎております。かくなる上は、お坊様を殺して、来世に坊主になって、今まで殺した獣を弔おうと思います」
 お坊様は驚いた顔をしたまま、何も言いません。
「へへっ、こちとら生きるために狩人やってんだ。これに懲りたら人の仕事に下らない口出しなんかするんじゃねえ、このクソ坊主!」
「ふむ、そうか」
 お坊様は理解した向き直ると、銃口から身体を避けようともせず、じっと狩人の目を見ます。
「在家の身なれば、生きるために殺すは必定、そこを咎めてはおらん。だが、汝は今し方、狩った狢の子らを踏み潰し、昨年は老いた猟犬達を叩き殺し、使いもせず捨てたろう。そういう無益で残酷な殺生を諫めておるのだ」
「喰えねえ、売れねえゴミを片付けて何が悪い!」
「それと、殺したものになるとは言っていない、業を重ねれば、人の道から堕ちるという話をしている」
「言い逃れは沢山だ、本当に撃つぞ、このクソ坊主!」
「撃つが良かろう。それが何ぞ、改心のきっかけになるやも知れん」
「脅しじゃねえぞ、本当に撃つぞ」
「だから撃ってみい、心の臓、いや胸の骨が当たるから口の中が良いか。これなら外すまい?」
 お坊様は銃口を掴んで咥えます。
「上等だぁ!」
 怒りに任せ狩人が引き金を引いた時。
 地面が割れ、狩人は地の底へ落ちて行ってしまいましたとさ。

「――君、どちらへ?」
「ご存知でしょう。反省の色を見せたら、あやつを助けてやって下さい」
「ああ、川の巡回後に寄るつもりだよ」
「いつもすみません」
「前は芋のシュウ酸カルシウムを増量して村1つ滅ぼしかけたろう、どうも君は短気だ。いつまでも新仏気分ではいけないよ、弘法君」
「お説教、感謝します、地蔵センパイ」
狩人とお坊さん ごんぱち

Entry4
銭形平次 八五郎婿入(1)
今月のゲスト:野村胡堂

「親分、お早う」
「お早う、おや、お前どうかしやしないか。挨拶も尋常だし、着物に折目が付いていて、髷節まげぶしだって真っ直ぐに今年の恵方の未申ひつじさるの方を向いているし」
 八五郎が入ってくると、平次はシャーロック・ホームズのように畳み掛けるのでした。
「何と判じます、親分。あっしのこの様子」
 座布団を引き寄せて、キチンと坐って、いつものお先煙草ではなくて、懐中から、真新しい自分の煙草入れを取り出す八五郎です。
「ヘエー、煙草までご持参か。ちょいと俺の煙草入れに似ているが――それにしても驚かせるぜ。まだ松の内には違えねえが、そんな身だしなみは、お前にはないことだ」
「実はね、親分。これには深いワケがあるんで」
「そうだろうとも。叔母さんからお年玉を貰ったくらいじゃ、そうは届くものじゃねえ」
「実はね、親分。今度あっしは、この稼業から足を洗って、地道な商売を始めようと思いましてね。一つはその相談に来たんですがね」
「お前が、商売をね、何処からもとが出るんだ。まさか越後屋や鴻池の番頭になるわけじゃあるめえ」
「最初から話さなきゃわかりませんが、あっしもつくづく人を縛る稼業が嫌になりましてね」
「自分の稼業ながら、あまり良い仕事じゃないな」
「そこで、ちょいと小綺麗な商売でもないものかと、心当たりに頼んでいると、大変なものが舞い込みましたよ、親分」
「何だ、鶴と亀とが舞い込んだのか」
婿むこの口ですよ、親分。相手の娘は厄が過ぎたばかりの二十才はたち。誂えたように酒屋の娘で、母親が一人だけ、番頭小僧は多勢居るが、男の心棒がないと、家の締りがつかない。そこで八方から降るほどの婿の口を、娘に相談して見るが、娘がどうしてもウンと言わない。懇意な小母さんに頼んで、そっと娘に訊いてみると、極り悪いながらも一生懸命で、夫に持つなら、あの八五郎さんのような、――というわけで」
「本当かえ、――その娘は眇目めつかち跛足びつこか、それとも人三化七の怖ろしい不器量じゃないのか」
「冗談言っちゃいけません。あっしは怒りますよ」
「それとも、夜中に首がニョロニョロと抜け出すと言った器用な病気があるとか」
「とんでもない。江戸一番の器量という程ではないが、まず町内でも指折りの綺麗な娘で、第一親孝行で、心がけがよくて」
「そうだろうな、お前に惚れるようじゃ、余っぽど人の好い娘だろうよ」
「地所もあり家作もあり、店はたいした繁昌だ。それに娘の方から望まれたが、あっしも十手の義理にこだわって、何時までも巾着切や小泥棒を追っかけても居られません。親分には済まねえが、いよいよこの商売を止して、酒屋の亭主になることに決めましたよ」
銭形平次 八五郎婿入(1) 野村胡堂

Entry5
銭形平次 八五郎婿入(2)
今月のゲスト:野村胡堂

「本当かえ、おい。何だか俺はかつがれて居るようだぜ」
「ところで、話はトントン拍子に運んだが、肝腎の仲人がねえ。それでは銭形の親分を頼もうというと、向こうでも大喜び。是非お願いしてくれというから、あっしが出かけて来たわけで、ご面倒でも、宜しくお願い申します」
 八五郎はピョコリとお辞儀をするのです。
「おい、何だか俺は狐につままれているようだぜ、――まァ折角八五郎が改まって来たんだから、柄にはないが引き受けて、高砂やアとやらかそう。ところで、お前を婿に欲しいというのは何処の酒屋さんなんだ。娘は何んと言う名だ、この辺には心当たりはないが――」
「そんな娘があったら、世話をして下さいという話で」
「何だこの野郎、そいつは皆んな嘘か」
「嘘じゃない夢で」
「夢?」
「宝船の売れ残りを総仕舞いにして、枕の下へ五枚と敷いて寝たら、そんな夢を見ましたよ」
「呆れてモノが言えない、それにしてもそのなりはどうしたんだ。あわせは折目がついて真新しいし、帯だっていつもの山の入ったのとは違っているようだが」
「――」
 お勝手の方からは、お静の噛み殺した笑いが聞こえます。
「何だお静、お前は先刻から、お勝手で転げ回るほど笑っているようだが、何がそんなに可笑しいんだ」
 平次はお勝手を大きくたしなめました。
「だってお前さん、私は可笑しくて、可笑しくて。八さんの着ているのは、皆んなお前さんのものですよ」
「何?」
「元日の朝――お前さんが年始廻りに出かけた後で、八さんがやって来て、暮には親分も工面がよかったから、ちょいと着の一揃いぐらいは、お蔵から出してあるに違いない、久し振りで草加の叔父さんのところへ挨拶に行くから、一日だけ貸して下さい――というお話なんです」
「何の事だ、八五郎の着ているのは、皆んな俺の装束か」
「そうなんです。袷も、羽織も、帯も、煙草入れも」
「呆れた野郎だ。道理で、見たことのある柄だとは思ったが」
「呆れたのはこっちですよ、親分」
 八五郎の鼻は蠢きます。
「何を呆れるんだ」
「江戸一番と言われた智慧者の銭形親分も、自分の着物の柄は知らなかったとね」
「だからお前は馬鹿だというんだ。自分の着物の柄なんか、男は知るものか」
「成程ね、――その心掛けじゃ、親分なんかは人混みで姐さんに遭って、――おやどなたでした、見たことのあるような顔だが――と自分の女房に挨拶する」
「まア八さん」
 お静はきまり悪そうでした。
「気をつけて下さい、姐さん。親分はそういう人だ」
「安心しろ、女房を見忘れそうになったら、外へ出るとき鼻の頭に墨で印をつけておくよ」
 やわらかな春の陽が座敷に這って、鉄瓶が長閑に唄っております。明神様の森からは、もう鶯の声が――。