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1000字小説バトル

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1000字小説バトルstage4
第86回バトル 作品

参加作品一覧

(2025年 2月)
文字数
1
おんど
1000
2
サヌキマオ
1000
3
ごんぱち
1000
4
ChatGPT & Grok
1347
5
柿沼不泣
1426

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Entry1
長編小説(途中まで)
おんど

新年早々腰痛の激痛である。
本日1月12日現在、依然として激痛であり、読者諸兄には大変失礼ながら布団に横たわりスマートフォンのフリック入力で、この文章を書いている。何かおかしなことを書くかもしれないが、フリックに免じて御容赦願いたい。
毎年のことだが、新年は家族と過ごす。梶原さんは私と逢えないことがわかっているので、年末年始はどこか遠くへ出かけてしまう。どこへ行ったかは教えてくれない。休みが明けたら東京ばな奈をくれるのだが、どこでなにをしていたかは教えてくれない。休みの間ずっと梶原さんのことを考えてしまう。休みが明けたら国道沿いのラヴホテルで当方ばな奈を突っ込むことになる。梶原さんはたっぷり濡れているのに、乙女のように「痛い痛い」と繰り返し、眉間にしわを寄せる。年末年始に他の男と交わっていなかったことを伝えようとしているのだった。数えで48歳になろうかという地方都市の図書館司書の、白くてたっぷりした肉体を弄んでいると、もはや鏡開きの儀式を済ませたようなさっぱりとした気持ちになる。
そんなことを考えながら、妻と連れ立って元旦の参拝の列に並んだ。二礼二拍手一礼の作法に従い、家内安全と長編小説の完成と梶原さんとの不倫関係がだらだら続きますようにと願った。そして、下げていた頭を戻した瞬間、腰に激痛が走った。参拝の列は参道の入口にあるチョコバナナの露店まで伸びていた。私は賽銭箱の前から動けなかった。横にも縦にも動けなかった。妻が怪訝な顔で覗き込んだ。苦痛で顔は歪んでいたはずだったが、妻ははははと笑って列を離れ、御神籤を引きに行ってしまった。
よくあることなのだ。突然黙り込み、苦痛に顔を歪めて動けなくなってしまうことが、家庭ではよくあることなのだった。背後から咳払い、苛立った舌打ちが起き、列が詰まった。それに気づいた朱色の袴を着けた巫女が声をかけてくれた。
「よくあることなんですよ」と巫女は微笑んだ。
極寒の境内で二礼二拍手一礼をした途端にぎっくり腰になってしまう。おでこにニキビのある巫女はテキパキ動いて社務所から車椅子を出してくれた。一歩も動けない私の身体を抱きかかえ、車椅子に座らせてくれる。その動作には激痛が伴うはずだったが、巫女に抱きかかえられていると、まったく痛みを感じないのだった。それが神に仕える巫女の信力なのか、白衣の上からは想像もつかないほどの巨乳に心を奪われたためなのかはわ
長編小説(途中まで) おんど

Entry2
廃園
サヌキマオ

 配られていてふと受け取ったティッシュには「厄難除け」と書いてあり、そうかそうか、節分ももうすぐだものなぁ、と見上げた先、ビルの屋上にふさふさとした緑があることから、庭園があることがわかった。通りがかりのひとは入れるのだろうか。わくわくしてきた。
 建物には信用金庫と社名だけでは判らぬなんらかの業者が入っている。入口は額で体温を測る装置だけが無機質に光るが、警備員の代わりに入出者を見張っているとすると、有機と呼んでもいいのか。七階建ての六階まではエレベーターで、そこから屋上までは階段を上るのがわかる。いやに扉が閉まるのが早い。挟まれかけるのなど初めてだ。
 屋上には土が敷き詰めてある。敷き詰められた上に芝生からどこからか飛んできた種が発芽したものやらいろいろな草が藪を作っている。作ったひとが頑張って運んだのであろう大谷石で囲って深さを作ったのか、五メートルほどの木が等間隔に植えられている。なんらかの石で円形に形作られた広場があって、縁が腰掛けられるように高く作ってある。
 廃園とそうでないものを分ける基準はなにかといえば、石と石の間に生えたススキなどがあるかどうかであろう、と今考えた。そうするとここは廃園となる。少なくとも秋口からは放ったらかされていることは想像に難くない。遠くにごみ焼却場の白い煙突が一本すっくと建っている。これは家からもみえる。煙突は北西にある。
 上ってきた階段、鉄の扉のある壁に沿った端に神棚が打ち棄てられてある。打ち棄てられてある、というのは草叢に泥にまみれてひっくり返っているからそう判断したからだが、よくよく見ると壁に無理矢理にも棚をこしらえてあった形跡がある。棚の上に神棚が載っていたところに、さらにツバメが巣を作ったことが察せられた。巣の重さで棚が壊れたのだろうという推測はできる。こういうところにお稲荷さんが祀られている例はいくつも知っているが、田舎家で見るような神棚が設けてあったあたりに、誰かの極私的な信仰を垣間見る。
 なんとなく、吸い寄せられるようによそのビルの最上階まで上ってきてしまったが、やはりここにも管理人というものがいて管理をされている、気がしなかった。今度ここでカップヌードルを食べようと思った。呼ばれている。ここに来たということは、呼ばれているということなのではないか。
 なとと勝手に得心しつつ、帰りのエレベーターに思いっきり挟まれる。
廃園 サヌキマオ

Entry3
ポケットのふしぎ
ごんぱち

「――こんな服、あったっけ」
 女は、子供用ジーパンの後ろポケットに手を入れる。
 個包装のビスケットが2つ、入っていた。
「……また入れっぱなしにして」
 ポケットをひっくり返し、ジーパンを洗濯機に放り込んだ。

「――あの子、またポケットにビスケット入れててね」
 夫婦は並んで夕食の食器を洗う。
「そうか、明日一緒に風呂に入る時、また言うよ」
「それもなんだけど……」
 妻は俯く。
「何か気になる事でも?」
「ビスケットが2つだったの」
 洗い終わった食器を、夫が拭き始める。
「箱の方は、1つしか減ってないのに。誰か近所の人が配ってるのかしら……まさか、お店から」
「少し落ち着こう」
 夫は妻の肩を抱く。
「まず、本人に聞いてみよう?」

 教授は、装置から外した子供用ジーパンのポケットから、2つのクリームサンドビスケットを取り出す。
 シャーレに取られたそれを、助手が慎重にピンセットで開く。
 両方のビスケットのクリームに、ICチップが埋まっていた。
「ICチップもか」
「凄い、完全に複製されてますよ……まるで錬金術だ」
「『叩く』と表現される入力に対し、内部の『ビスケット』と認識出来るものを1つずつ複製する。周囲の空気も減らさず、温度すら下げずに。これは神の御業だよ」

 詳細な分析と実験を経て、このポケットは最大5gの物質を、秒速最大7億個のスピードで増産するシステムとなった。
 レアメタル、電子部品、そして希少性から実用性が放棄されていたエネルギー触媒までもが増やされた。
 当初危惧されたポケットを巡る争いも、必要物資の飽和によって戦意は挫かれ、残存ビスケット問題もバイオ燃料への転換で解決し、人類はついにエデンへの帰還を確信した。

「……もっと早く気付いていれば、手も打てたろうに」
 地球統一政府の首相は、報告書をデスクに置いて呟く。
「そうでしょうか」
 秘書の言葉には、慰めの調子がある。
「希望はあった」
 首相は、報告書に視線を向ける。
「ビスケットは、叩くと同時に隣りに生じる。超光速理論の実例が、数十億年供給局内にあり続けたという訳だ」
「FTL――超光速航行が可能になったとして、人類全てを外宇宙に移住させられる宇宙船が、揃えられたでしょうか。優先順位を巡る殺し合いの時代に、また戻ったでしょう」
「それが、あるべき姿ではなかったか」
 窓の向こうでは、赤く肥大した太陽に照らされた大地がまたひとかけら、空へと落ちていった。
ポケットのふしぎ ごんぱち

Entry4
銭形平次 八五郎のバレンタイン2
今月のゲスト:ChatGPT & Grok

「親分、今年こそは……!」八五郎は拳を握りしめ、神田明神下の長屋で作戦を練っていた。去年のバレンタイン、せっかく用意したチョコはお静の妨害によって闇へと消えた。今年こそ、親分に愛の証を――いや、義理の証を――いやいや、なんでもないただの感謝の品を渡すのだ。

 しかし、心の中では葛藤が渦巻いていた。平次親分への思いは、ただの感謝や友情を超えたもの。昨年の一件では、自分の気持ちを隠すことしかできなかった。だが、その奥底で燃え続ける恋心は、年々強くなるばかりだった。

「よし、今度こそ成功させるぞ!」八五郎は決意を新たにし、懐からそっと取り出した。巷で流行りの「チョコ南蛮漬け」。どういうわけか平次親分は南蛮料理が好きである。ならばチョコと掛け合わせれば、これはもう運命の味となるはず!

 その夜、平次が長屋に戻るのを見計らい、八五郎は鍋を抱えて突撃した。
「親分! いいもん作りやした!」
「おう、八、なんだその鍋は」
「えへへ、今年は一工夫した南蛮漬けで――」

 そこへスーッと現れた影。お静である。
「まあ、八五郎さん。今年も何かしら?」
「ひっ!」

 八五郎は心の中で、自分への戒めの言葉を繰り返した。「これは感謝の品。感謝の品だ……」それでも、お静の目が細くなったとき、八五郎は彼女の視線から逃れることができず、内心で震えていた。

「こ、これはただの南蛮漬けで……」

 お静は鍋の中をのぞくと、ふんわりと笑った。そして一口すくって味見する。八五郎は息を呑む。

「……まあ、なんて斬新なお味!」

 お静が思いがけず微笑んだその瞬間――
「うわぁぁぁ!」
 平次が涙目で鍋を抱えて転がっていた。

「な、なんで親分が食べてんですか!」
「おめえが食わせたんじゃねえか!」
「だってお静さんが美味しそうに食べたから!」

 お静は涼しい顔で言った。
「だって私は一口だけですもの。でも、これ全部は無理ですわね」

 その言葉を聞いて、平次は震えた。
「お、俺の腹を使って毒味したのか……?」

 八五郎は慌てて言った。
「ち、違いますよ! 愛と努力の味がするはずで……!」その言葉に、八五郎自身が驚いた。口を滑らせた瞬間、心の中の秘密が露見しかけた。

 その瞬間、平次はピタリと動きを止めた。

「……八、まさかおめえ、俺に“愛”を込めたのか?」

 八五郎の心臓が止まりかけた。背中に冷や汗が流れる。お静の視線がさらに鋭くなる。

「ち、違います! これは感謝の! いや、義理の! いや、まあ、友情の!」混乱する中、八五郎は必死に真実を隠し続けた。

 お静はニヤリと笑った。
「まあ、そういうことにしておきますわ」

 八五郎は命拾いした気分だった。しかし、内心では自分の気持ちがまたもや表に出てしまったことに、深い苦悩を感じていた。愛を伝える勇気はまだないのか、自分は弱いのか――そんな自問自答が頭の中で渦巻く。

 しかし翌朝、平次の口から衝撃の一言が飛び出した。

「八、今年の南蛮漬け……なんだか妙にクセになるな」

 八五郎は思わず目を輝かせた。
「じゃ、じゃあまた作りやすね!」

 その瞬間、お静の笑顔がぴたりと止まった。
「……それは、考えものですわね」

 八五郎のバレンタイン作戦は、意外な形で幕を閉じたのだった。だが、彼の心の中では来年の決意がまたひとつ、強くなっていた。
銭形平次 八五郎のバレンタイン2 ChatGPT & Grok

Entry5
芝居
今月のゲスト:柿沼不泣

 芝居がたけなわになると皆は持って来た酒や肴を出して酒宴をはじめました。今日は工廠の年に一度の慰安会だったのです。皆にとっては芝居はどうでもよかったのでした。一緒に集まって酒をのみあうことがまたない楽しみなのでした。はじめのうちはそうでもありませんでしたが段々酔いがまわると、そこでもここでも小さな諍いがおこりました。仕事の上での不平や、割増についての不平や……平常胸の中にわだかまっている不平と云う不平が一寸したことから皆の口をついて出るのでした……
『工廠じゃ……』一年一年貸してくれる劇場が少なくなって来ました。今年も幹部の連中があっちこっちと斡旋して劇場を借りようとしましたけど、どこでも体よい断りを食いました。そしてここの場末の小さな劇場を漸く借りて……それも何度も何度も交渉の末に漸く借りてどうにか、ささやかな形ばかりの慰安会をやったのです。
 もちろん書生芝居お定まりの新派悲劇と銘打ったコンヴェンショナルな筋と科目が下手な役者の手によって演ぜられたのに過ぎないのです。しかしそれも職工のお内儀さんや娘たちの安価な涙をそそるには十分なのでした。

 幕が明くと貧しい靴屋の家庭です。汚れた調度のごたごたに置かれた狭い座敷に老いた靴屋の主人が火鉢にもたれて思案しています。子供たちはまだ学校から帰って来ません。
 慌ただしく細君が入って来ます、そして手に持った紙片を亭主の前につきつけました。それは◯◯戦争の召集令状なのでした。亭主の驚きは云うまでもありません。
「おれが行くはいいが、おれが居てさえ食えないのに、お前たちはどうして生きて行けるんだ……」――安価な愁嘆場です。観客席の女房や娘たちの内にはもうハンカチを眼にあてている者があります、すると突然観客席から、
「全くだ! 全くだ!」というだみ声が聞こえました。そして皆がきつとなって声の主を物色している間もあらばこそ、さんざんに酔っぱらった研磨の鉄公がすっくと立ち上がりました。手には皺くちゃの五十銭紙幣を持っています。「全くだ! 全くだ!」観客があっけにとられている間に鉄公はぶらぶらした足取りで花道から舞台に駆け上ると、いきなりその五十銭紙幣を靴屋の細君の手に握らせようとしました。
「餓鬼にキモノでも買ってやれよ、なあ……」――出方が飛び出して来ました。工廠の監督が出て来ました。
「おい斎藤! なんだそのざまは! 芝居だぞ!」
 監督は荒々しくこう云うと、ぐいと鉄公の手を取りました。出方も鉄公の肩に手を掛けて宥めはじめました。
「何! 芝居だ!」
 鉄公は酔った顔をなおのこと真赤にして監督に食ってかかりました。鉄公の頭には日頃からの監督の不公平な仕打ちがこの時急に閃いたのでした。そして憎悪が鬱憤がむらむらと起こって来たのです。
 監督はいきなり鉄公の利き腕をとりました。
「貴様! 柔道かけたな!」
 鉄公が大声でわめき立てると今まで総立ちになっていた職工連中がわあっと鉄公と監督を取り巻きました。そして酔った勢いにまかせて監督と云わず、出方と云わずさんざんに殴りはじめました。
 出方の頭からは血がダラダラと流れはじめました。
 やがて巡査がやって来ました、そして散々にあばれている鉄公と安公が無理やりに巡査に引かれて出て行きました。

 大嵐一過――芝居ならぬ生きた芝居に靴屋の亭主も細君も(鬘は何時の間にかとれていました)あっけにとられて舞台の片隅にぼんやりと立っていました。観客席はもうがら空きだったのです。――