Entry1
減るター増えるター
サヌキマオ
けっこう前からたくさんのいろいろな動物を興味本位で苛め、殺し、バラし、生で味わい、鍋で煮てポン酢で食い、射精させ、射精し、瓶に詰めたりしたので相当量の怨念を受けてしまった。一日に体重の半分の量の食事を取らねば痩せ続け、かといって晩秋になると身体に栄養を溜め込んで脂肪を溜め込んだまま三畳間で冬を越さねばならず、糸を吐き、繭を作り、家にある綿や絹の服をかじってはボロボロに穴を開けた。春には発情して夜道を歩く女性に襲いかかり、警察を呼ばれ、電柱に駆け上って難を逃れたが電柱の上で脱皮し、脱皮した皮が見つかってちょっとした騒ぎになった。
いまは街路樹に噛みついては樹液を吸う。たらふく吸う。セミともずいぶん遊んだものだった。どうやってあんなに大きな音が出るかに興味があった。死んで上等のつもりで啼くので腹筋がちぎれて啼けなくなる。地面に転がっていて、人が触れようものならば大暴れするタイプのセミはこのタイプだとわかった。腹筋は甘い。使っている筋肉はだいたい美味い。
アパートの扉の前に段ボールが積まれている。宅配業者がおいていったものだ。五つの箱の中にはマヨネーズのボトルが二ダースずつ詰まっている。二ダースの五箱で十ダース、百二十本。これを吸う。一日半分くらい吸う。きっとすべての動物たちにとっていちばんカロリー効率の良い食物だろう。ゴミ捨て場でカラスが奪い合っているのを見て欲しくなった。カラスの食べていたマヨネーズや虫やネズミや別の小鳥をカラスを通じてわたしは食べている。人間の作った毒素もたくさん取り込んで、どす黒く肥える。風呂にはしばらく入っていない。本心から水が怖い。だが水辺に行きたい。水辺に行かねばならぬ、と脳の抵抗をマヨネーズの脂と塩で紛らわせつつ風呂に湯を張ると、尻の穴から大量のハリガネムシがびゅるびゅると飛び出した。そうかお前らが命令していたのか。
あはれ。
頭上から声がする。ふわりと五光をまとわせて地蔵菩薩が降りてきておらっしゃる。お前はいかんともしがたいが、お前につきあわされた色々の鳥獣魚虫がかあいそう。地蔵はよく見ると濃い化粧をしている。濃いアイライン。こんな男に執着しないで、また生まれ変わりなさい。光が去る。身体に人の重力が戻る。静寂が、部屋にある。
ところでチワワのメスとグレートデンのオスでこどもは出来るかしら。想像するだけで楽しそう。生きる希望が湧いてくる。