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1000字小説バトル

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1000字小説バトルstage4
第88回バトル 作品

参加作品一覧

(2025年 4月)
文字数
1
サヌキマオ
1000
2
おんど
1000
3
ごんぱち
1000
4
アレシア・モード
1000
5
小川未明
1605

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Entry1
減るター増えるター
サヌキマオ

 けっこう前からたくさんのいろいろな動物を興味本位で苛め、殺し、バラし、生で味わい、鍋で煮てポン酢で食い、射精させ、射精し、瓶に詰めたりしたので相当量の怨念を受けてしまった。一日に体重の半分の量の食事を取らねば痩せ続け、かといって晩秋になると身体に栄養を溜め込んで脂肪を溜め込んだまま三畳間で冬を越さねばならず、糸を吐き、繭を作り、家にある綿や絹の服をかじってはボロボロに穴を開けた。春には発情して夜道を歩く女性に襲いかかり、警察を呼ばれ、電柱に駆け上って難を逃れたが電柱の上で脱皮し、脱皮した皮が見つかってちょっとした騒ぎになった。
 いまは街路樹に噛みついては樹液を吸う。たらふく吸う。セミともずいぶん遊んだものだった。どうやってあんなに大きな音が出るかに興味があった。死んで上等のつもりで啼くので腹筋がちぎれて啼けなくなる。地面に転がっていて、人が触れようものならば大暴れするタイプのセミはこのタイプだとわかった。腹筋は甘い。使っている筋肉はだいたい美味い。
 アパートの扉の前に段ボールが積まれている。宅配業者がおいていったものだ。五つの箱の中にはマヨネーズのボトルが二ダースずつ詰まっている。二ダースの五箱で十ダース、百二十本。これを吸う。一日半分くらい吸う。きっとすべての動物たちにとっていちばんカロリー効率の良い食物だろう。ゴミ捨て場でカラスが奪い合っているのを見て欲しくなった。カラスの食べていたマヨネーズや虫やネズミや別の小鳥をカラスを通じてわたしは食べている。人間の作った毒素もたくさん取り込んで、どす黒く肥える。風呂にはしばらく入っていない。本心から水が怖い。だが水辺に行きたい。水辺に行かねばならぬ、と脳の抵抗をマヨネーズの脂と塩で紛らわせつつ風呂に湯を張ると、尻の穴から大量のハリガネムシがびゅるびゅると飛び出した。そうかお前らが命令していたのか。
 あはれ。
 頭上から声がする。ふわりと五光をまとわせて地蔵菩薩が降りてきておらっしゃる。お前はいかんともしがたいが、お前につきあわされた色々の鳥獣魚虫がかあいそう。地蔵はよく見ると濃い化粧をしている。濃いアイライン。こんな男に執着しないで、また生まれ変わりなさい。光が去る。身体に人の重力が戻る。静寂が、部屋にある。
 ところでチワワのメスとグレートデンのオスでこどもは出来るかしら。想像するだけで楽しそう。生きる希望が湧いてくる。
減るター増えるター サヌキマオ

Entry2
長編小説(途中まで)
おんど

鼻水が止まらない。花粉症ではないのだが、寒暖差アレルギーというのだろうか、季節の変わり目になると鼻水が止まらなくなり、市販の鼻炎薬を飲むと二三時間は止まるのだが、朝になり、昼になり、夜になりと気温が変化するたびに鼻水は止まらなくなり、1日2回で効くはずの鼻炎薬を5回も6回も飲むものだから頭が朦朧としてきて、行き帰りの電車のホームでもフラフラで線路に落ちそうになって駅員に抱きとめられるといったことがしばしばある。最近の駅員は女性も多く、狙ってそうしているわけではないのだが、線路に落ちそうになったところを小柄な女性駅員に抱きかかえられて、しかしこちらの方が大型種なので抱きかかえきれずにふたつの身体がもつれ合ったままホームの端まで転がってしまうこともあり、ホームの端には撮り鉄が脚立に乗って構えているから格好の被写体となり、カメラを向けられると職業柄ついつい勃起してしまい、どうしたらこの女性駅員に悦びを与えることができるのか、そしてそれをカメラの向こうにいる鑑賞者に伝えることができるかに気持ちは向かい、気づけば小柄な女性駅員の唇を吸い、見つめ合って合意を得たのち舌を入れ、小柄な女性駅員の下腹がかすかに熱くなるのを感じ、舌をさらに強く絡ませれば、ん、と息を漏らして女性駅員の方からも躊躇いがちに舌を絡めてくる。それをじゅるとわざと淫靡な音を立てて吸い返しつつ背中に回した腕に力を入れて抱き寄せると胸が押し付けられ硬い生地の制服の上からその豊かな胸の膨らみが感じられて、それを悟られまいと背中をそらしたところで唇を離しうなじに顔を埋めるとエメロンの香りと少し汗ばんできた小柄な女性駅員の皮膚の薫りが馥郁として口腔内に拡がり押し当てていたマックスマーラが上向きに力強く小柄な女性駅員の太ももに突き刺さる。マーラの先端がぬらぬらと濡れているのがわかる。うなじから舐め上げた舌を耳たぶの裏側に当て、軽く歯を立てると小柄な女性駅員はんん、とさっきよりも半音高い声を出し眼をぎゅっと閉じて下腹から迫り上がってくる熱を堪えている。ほつれ毛が絡まった耳の穴に固く尖らせた舌先を突き立て外耳全体を唇で包みこんで吸い上げると小柄な女性駅員はんんあ、と今度はしっかり口を開けて悦びの声を上げた。力の入った瞼に唇を当て優しく開かせるとかすかに涙ぐみ、瞳の奥に獣のような性欲の炎が燃え盛っている。マックスマーラをさらに奥
長編小説(途中まで) おんど

Entry3
AI先生
ごんぱち

「何、関数が分からない?」
「はい先生。XでYが決まるっていうのが何だか分かんなくなっちゃって。Xじゃなきゃ駄目なのかとか」
「関数はな、AIだと考えるんだ」
「えっ?」
「君がXというフォームにプロンプトを入れると、関数というAIがYというウィンドウに答えを出力してくれるのさ」
「そっか、それなら理解できる!」

「何、体育が分からない?」
「はい先生。超面倒で」
「そういう時こそ、AIと考えると良いんだ」
「は? なんです、それ」
「運動というプロンプトを入力すると、AIが処理して、健康的で魅力的な肉体が出力されるんだ」
「なるほど、面倒でもそれぐらいはやらなきゃ駄目ですね!」

「何、歴史が分からない?」
「はい先生。出来事と年代を結びつけるのがどうも苦手で。昔の事なんかどうでも良いじゃあないですか」
「君ね、そういう時はAIだと考えるんだ」
「どういう事ですか?」
「AIはデータを元に答えを作るだろう」
「ええ、そりゃあそうです。AIはあくまで生成ツールです。ゼロから思考や発想したら、それはAIの定義に反します」
「歴史も同様だ、元の事があるから次がある。例えば、鎌倉幕府を作るから滅亡する、滅亡した状況になれば、誰かが後を継ぐ必要があるから室町幕府が出来る。この室町幕府の存在をAI読み込ませたらどうなる?」
「そうか、当然答えは次の幕府が出来上がるだ。生成までの間は、中央の幕府が滅んでるんだから、その時に領土を直接支配していた領主、すなわち守護や地頭達が力を持ち、群雄割拠し始める! 戦国時代の始まりだ!」

「君は何が分からないんだい?」
「私は通学の付添で来た親ですが」
「退屈でしょう、それもAIで考えると解決しますよ」
「……何言ってるんです? そもそもこの学校、IT化してませんよね」
「ちょっとお時間いただけますか?」

「――文部大臣、教育現場のAI化、進んでおるかね」
「はい、総理大臣閣下。全ての小中学校の教育課程にAIが浸透しております。給食を食べない日があっても、AIを口にしない日はなし、AIは小国民の血肉となっていく事でしょう」
「で、あるか。うむ、彼らが成長する頃には我が国も世界のAI革命に追い付こう!」
「つきましては、私の親戚がその……AI事業に参入する予定でございまして、それを折り込むと予算が1割ほど……その、ひとつ」
「実績あるものに予算を割くのに、何の躊躇があろうか」
「有り難き幸せにござります」
AI先生 ごんぱち

Entry4
『廃園2―マダム・バカミタイ―』への感想、またはエレベーター・アクション
アレシア・モード

 アレシアだよ。姫路城の天守閣の上層には立ち入り難いエリアがあって、そこには『おさかべ姫』という形容し難い怪異が棲んでいるという。何が形容し難いといって、外見も性格も行動も漢字表記も、文献によってまちまちで分からん。詳しくはウィキでも参照していただければと思う。で、怪奇の事件はアレシアにと言われる身ゆえ、私も姫路城天守閣には行けるところまで行った事はある。で、階段の、途中で塞がれてる先を覗き込んだところ、そこに見たのは何だか分からない物が雑然と転がる埃っぽい物置みたいな空間だった。これがあの、おさかべ姫が暮らす、数百年の趣味の部屋かなって思うと、何やらシンパシーをどっと感じたけど、テレパシーは感じなかったので結局詳しいことは形容し難いままなんだなあ(詠嘆)」
「あのお、アレシアさん」
「なあに?」
「それと作品『廃園2』と、どういう関係があるんですか」
 今から話すんだよ。久しぶりに登場しても相変わらずの馬鹿だなキミは。
「いい質問ですね。つまり私はこの超々夫人、このぼよよんメイド事件帳みたいなリアル解像度で描かれた上流社会の貴婦人こそ、屋上の『形容し難い怪異さん』なのかなと思った」
「怪人物ですね」
「三文字でまとめればそうだな」
「となると」馬鹿はスマホでウィキペディアを読みながら言った。「夫人に出会った者は、おさかべ姫に遭遇するような様々な妖異に見舞われる、わけですか」
「うん。スムーズな進行ありがとう」
「顔を見ただけで死んだりしなくて良かったですね」
「そうだなあ。話が終わっちゃうしな。私はやった事あるけど。で、作者はこの作品で前作の謎の全てを回収すると予告してるので、私はここに描かれる全ては受け入れねばならないが、夫人の行動は狂ってるようにも見えるのでその辺だけ誰かのせいにしておきたい。それには語り手しか居ない。夫人は上流階級を目指して奇行を交えたあらゆる試行を重ねた。その試行の組み合わせの数だけ庭園の形容し難い可能性は提示されるが、観測者に与えられるのはその枝の一つ。夫人が変なのではなく、変な語り手だからこそ選ばれた奇行の廃園だ。エレベーターの扉に挟まれた時サイコロが振られたのさ……私ならもっと優美な庭園に辿り着くだろうよ」
「ああ、何か分かった気がするなあ。ところで」
 馬鹿は床にへたり込んだ。
「僕らの乗ったこのエレベーター、いつ屋上庭園に着くんですか。もう疲れちゃった……」
『廃園2―マダム・バカミタイ―』への感想、またはエレベーター・アクション アレシア・モード

Entry5
今月のゲスト:小川未明

 燕は、春になって、忘れずに帰って来た。もう桜の花が散りかかって、北の青い海の色が日にまし濃く紺青となる時節であった。
 けれど、家は戸が閉まっていた。
 燕は、一夜、家根裏の戸口の処で悲しみ明かした。長の旅路の疲れを、楽々と古巣に帰って慰することが出来なかった。
 燕は、南方の海を越えて来た日の光景を空想に浮かべた。笹の葉一枚を喰わえて出たのである。波の上に其の葉を浮かべて、其の上に降りて翼を休めていると、或る日のこと波に其の葉を浚われてしまった。其様なことを思い出すと、今更胸の躍るようなことがいくらもある。
 これ等の苦痛も、古巣に帰る楽しさに打ち消された。而して、青い月夜には、翼を休めずに北へ北へと飛んで来た。
 夕暮方、やっとこの古巣を訪ね当てた。去年に変わらぬ懐かしい家根の上には、ペンペン草が生えている。燕は、三たび其の家根の上をひらひらと飛び廻って軒をくぐろうとした。すると、戸は閉まって人の住んでいる様子がなかった。
 赤い月が、彼方の杉の森からのぼった。
 燕は、このや月の色を、旅の疲れと、悲しみに傷んだ眼でじつと見詰めている。すると妙な形の細い雲が、月の面を過ぎって、北西へと流れた。
 燕は、この雲を見るとぞっとした、何となれば、南洋の島で、北国では寒い時節を過ごしている間に、屡々、梢にかけた巣をねらって這い上がって来た白い蛇の姿に似ているからだ。
 物憂い夜を明かした。明くる朝、旅の道連れとなって来た燕の友達等は彼の、家を訪ねた。彼は、家に入ることが出来ずに、独り、家根に止まっていたのであった。
 而して友達等の話を聞くにつけて、友の身の上が羨まれた。他の燕等は古巣を、美しく、新しく、飾るために、いろいろの藁屑や、木切れを喰わえて運ぶのであった。
「ほんとうに、お前さんはお気の毒なことでした」
と、他の燕等は、僅かに形式的の挨拶をして、さも、する仕事の忙しそうに立ち去った。
 燕は、独り、つくねんとして考え込んでいた。風に吹かれて動いているペンペン草は、彼の話の相手にはならなかった。
 燕は、過ぎた去年の秋のことを思い出した。此の家にちょうど十三になった、少年があった。夏の夕焼のした夕暮方など、よく喇叭を鳴らしていくさごっこなどして、遊んでいた。其の少年は決して自分の巣を覗くようなことはしなかった。他の友達が来て、
「君、燕の巣をとって見ないか」
と言って、長い竹竿を持って来ても、其の少年は、私の巣を防禦してくれた。
 また、私が、長い一日を働いて遅くなって、夏の夕暮など帰って来た時も、戸を開けて帰るのを待っていた。ちょうど、子供自身が夜まで遊びつづけて帰って来ないのを、母が門口に立って待ち設けているように、少年は私の帰るのを待っていた。
 或る日、黒猫が来て、私の巣を下から見上げて、覗っていた時、少年は、怒って其の黒猫を追い払ってくれた。而して、もう決して来ないように戸外まで駆け出て、小石を投げ付けて、なお其の後を追ってくれた。
 其のうちに秋が来た。少年は喇叭を鳴らして遊んでいた。しかし、夏のように、真紅な美しい夕焼は見られなかった。秋の日あたりに咲いている木犀の香は、空気に浸み渡って、森に沈む夕焼の色は黄色に褪せて見られた。
 私が、寒い、時候に居耐えなくなって、南の方に再び旅立とうとした前の日に、少年は私の前に佇んだ。而して、
「もう、燕も帰る時分だろう、燕よ、また来年になって、私も、また喇叭を吹いて外で遊ぶことの出来る時分になったら来いよ」
と、言った。
 燕は、去年のことを思い出すと悲しくなった、其の少年は、何処へ行ったろうと思った、燕は、仔細に様子を探ろうと思って、家の周囲を幾たびも飛び廻った。すると、少年の吹いていた喇叭は窓の下に捨てられて、赤い錆が処々に出ていて、泥に塗れていた。
 燕は、一声悲しげに叫んだ。而して、永遠に此の古巣を見捨て、何処へか飛んで行ってしまった。