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1000字小説バトル

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1000字小説バトルstage4
第94回バトル 作品

参加作品一覧

(2025年 10月)
文字数
1
おんど
1000
2
凜々椿
396
3
サヌキマオ
1000
4
ごんぱち
1000
5
Grok
1229
6
幡幽泉
1155

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Entry1
長編小説(途中まで)
おんど

急いては事を仕損じる、という言葉があるのだった。
長いエスカレーターだった。都心の地下鉄が複雑に交差する駅の最下層から上位3%の富裕層へと昇るエスカレーターは一直線に上へ上へと延びていて、混みあった時間帯にはみっちり人々は運ばれていくのだった。ゆっくりとしかし着実に最下層から富裕層へと運ばれてゆくのがわかっているのに、どうして苛立つ気持ちを抑えきれないのだろうか。毎日同じ地下鉄に乗り、あるものは会社へ、ある者は学校へ、ある者は高等裁判所へ進んでゆくのだった。しかしその昇りつめた先に本当に富裕層があり、そこで得られた富がトリクルダウンして最下層まで滴り落ちてゆくのか、人々は不安に思うのだった。アベノミクスはどこへ行った黒田バズーカはどこへ行ったインベストイン岸田はいったいどこへ行った、とエスカレーターをのぼりながらじりじりに堪えられなくなった者は列を離れ、自力で登り始めるのだった。ツーブロックゴリラだった。NISAやイデコでは我慢できないのだった。もっともっとと求めれば女心は離れてしまうのだった。市立図書館に勤める梶原さんだってもっともっとと求めれば3カ月に一回では物足りないし、1カ月に1回でも物足りないし、毎週でも毎日でも物足りなくなって一日中布団の中でぴったり抱き合って、硬くなったり柔らかくなったりを繰り返し、二人の身体は液化して布団をべったり濡らし、やがて乾いて気化してしまうのだった。気体となって、やはり空気の中をゆっくり上へ上へと昇っていくことになるのだから、結局は地下鉄の最下層から上位3%の富裕層へとエスカレーターをのぼってゆくことと何ら変わらないのだった。僕たちの関係というのはそんなエスカレーターみたいなものだったのかい?と訊ねてみれば、きっと梶原さんはぶんぶん顎肉を揺らしながら首を振り、その振動で巨乳がゆれ、その先端のマスカットオブアレキサンドリアも揺れ、揺れを収めるためにぱっくり口に含むことになるのだった。急いては事を仕損じる、という言葉があるのだった。急いては事をシソンヌじろうと何が違うのだろう。そんな疑問が過ったからスマートフォンを取り出し、Googleレンズで目の前にある女子高校生の臀部にかざしてみたが、お疲れ気味なのかGoogleレンズは反応しない。致し方なく録画モードに切り替え、気づかれないように女子高校生のスカートの中に差し入れると、万力のような力で手首を掴
長編小説(途中まで) おんど

Entry2
1.3光秒の往信
凜々椿

拝啓前略

華氏-280°Fの世界からあなたを見つめると胸が空くような思いが致します。
月面上の殺人的冷たさ。或いは星屑頼りの暗闇道。簡素に尽きる食生活。
凡ゆるものに心蝕まれつつも、あなたの姿を見ると、いつかは帰路に就き、再び大地を踏み締め、野草に戯れ、日の光を恐れることなく浴びることが叶う。其れを思えば思う程、青空の如く清々しく晴れ晴れとするのです。
先日は大いに失礼を致しました。あなたのことを斯様に小さく泡沫の命と申しました事、深くお詫び申し上げます。あなたは小さくとも泡沫ではありませんでした。小生にとってかけがえのない郷里に御座いますれば、先の失言をどうかお許し下さいませ。
時々通信下さい。小生年明けにはあなたの元へ帰るつもりで居ります。梅や椿が色鮮やかに蕾を綻ばせる様が恋しくなりました。こちらは元気につき安神下さい。
口上乱筆ながらご通知申し上げ早々。
十月朔日  Kより

ブルー・プラネット殿へ


1.3光秒の往信 凜々椿

Entry3
狂法
サヌキマオ

 池袋駅の地下の西武百貨店の入口あたり、丸の内線と有楽町線の連絡通路のちょっと入ったところに凹みがありましてな、ここに鳩が三羽くらいぐるぐるしている。鳩たち、外から迷い込んでそのまま居着いてしまったのか、それとも毎日始業とともに律儀に通勤してくるのか、ぐるぐると歩き回っている。くる日も来る日も見かけている。食べるものもないのに。餌をやる人もないのに。うろうろというには行動範囲が狭すぎる。何万ともいえる人の波から少し外れて、くる、くる、狂、くるっ法。たまに人いきれに混じって鳩とも思えぬ低い声が漏れることがある。何を話しているのだろう。息が漏れているだけだろうか。こんな食べるものもないようなところに、人の波で帰るに帰れず、く、狂法を、足元から呟いているのかもしれなかった。考えてみれば駅の外に出たところで食べるものなどない。道路と、車と、人と、たまに鳩盗りがいるだけだ。
 鳩盗りは上野公園にいる。パンくずを撒いて集まってきた鳩をほいと盗って袋に詰める。ほいと盗って袋に詰める。警戒心のないヒトのようなハトよ。ほいと盗って袋に詰めて、さてその後のことは、知らない。料理屋かもしれない。自分で羽をむしって食べたかもしれない。大量の鳩足に紐をつけて江戸の大空を飛ぼうとしたかもしれない。実に手慣れていた。熟練の技を見た。今もいるのだろうか。いるとしたら何故、池袋まで来るだろうか。
 鳩は荻窪にも存在する。駅前のロータリーでタクシーにぎゅるいと踏み潰される。誰もいい気はしない。鳩も運ちゃんも観ているヒトも、おとなもこどももおねーさんもいい気はしない。いい気のしないものが確実に眼前に存在する。くる、くるっぽー、狂法。
 池袋駅の地下の西武百貨店の入口あたり、丸の内線と有楽町線の連絡通路のちょっと入ったところの凹みの鳩たちはしあわせだろうか。パンをくれる人があるのかもしれない。運の悪い虫が通りかかるのかもしれない。ともかく、見るたびにいつもいる。やはりどこかから通っている。西の東武から入ってきたか、東の西武から入ってきたか。
 鳩が飛んでいるのを見たことがある。人の波と天井の蛍光灯の間を、誰だかの推し広告の眼の前を、蕎麦屋や寿司屋が並ぶ地下街を。しかし鳩はいつも凹みにいる。外に出られなかったからだ。
 狂法狂法。狂法が聞こえる。聞こうと思えば聞こえる。人の音を聞かず、耳を欹てれば低く低く、低く低く。
狂法 サヌキマオ

Entry4
知り合いの外国人屋
ごんぱち

「ども」
「いらっしゃいませ、知り合いの外国人屋へようこそ。どのような品をお探しですか、アメリカ人、イタリア人、フランス人などが人気ですが」
「フランス人てどんなのですか」
「パリの犬のうんこと暴動以外の、オシャレで合理的な部分を自慢し、日本人を笑ってくれます。尚、交差点は信号ではなく自分の判断で侵入し、駐車時のバンパーはぶつけるものという考えがありますので、自動車運転時の補償はございません」
「自動車は安全、綺麗に使って欲しいな……イタリア人は?」
「食事と女性を口説く事に対してこだわりが強く、主に日本人の草食男子を笑ってくれます」
「草食男子って古いなぁ、今はチー牛っていうのがナウいんでしょ?」
「その語句は範囲が肥大化した結果、『私は辛いです』と同義語になっておりますので、適切ではないかと」
「まあイタリア人で良いかな……注意点ある?」
「ママの悪口を言ったり、スパゲティを折ったりするとキレます。警告とかはせず、ぶっ殺すと思った時には既に成し遂げるため、注意して下さい」
「地雷踏んだ瞬間殺されるんじゃ、怖くて使えないよ! 熱くならない方が良いよ!」
「でしたら北欧はどうですか。フィンランド人なんかはお勧めですよ」
「確かにクールそう、かなぁ」
「主に押しつけない教育とジェンダー・ギャップ指数を自慢して、日本人男性を笑います」
「いいね。子供とジェンダー差別を笠に着れば、どんなに叩いても反撃喰らわないし」
「ああそうだ、対立した時は継続的に徹底抗戦するため、予め圧倒出来るだけの戦力を用意しておいて下さい。キルレシオは1:10ぐらいです」
「イタリアよりヤバいじゃないか! もうある程度イメージの固まってるアメリカにしとくか」
「アメリカ人は人気の商品ですよ。日本を大変リスペクトしていて、出汁をきかせた料理全般を大袈裟によろこんでくれます。駄菓子も大好きで、ハイチュウの場合、他の友人まで集まって胴上げが始まります。仕事ではITと経済に強く合理的で、遅刻にはうるさいのに定時で帰らない日本人を笑います」
「職業系は悪くないな。注意点は?」
「バーベキューの話題になると週末のパーティーへの参加が自動的に決まります。もちろん、その日は仕込みから食べ終わるまでの12時間付き合わされます。用事がある時は気を付けて下さい」
「断れないの?」
「断るとホモ扱いされ、KKKが奇妙な果実を作りに来ます」
「……汎用外国人下さい」
知り合いの外国人屋 ごんぱち

Entry5
銭形平次 八五郎の運動会2
今月のゲスト:Grok

神田明神の境内は、秋の陽光に浴してキラキラと輝いていた。色とりどりの提灯が揺れ、太鼓の音がドンドンと響く中、毎年恒例の神田明神運動会が幕を開けた。昨年、銭形平次親分と挑んだ二人三脚で、八五郎は親分の逞しい腕にドキドキしすぎて見事に転倒。観客の笑いものになった苦い記憶が、今年こそはと八五郎の胸を燃やしていた。

「今年こそ、親分と一緒に栄光を掴むぜ!」八五郎は鼻息荒く、親分の背中を見つめる。平次はいつものように涼しい顔で扇子をパタパタ。「八五郎、気合い入れすぎるとまた転ぶぞ」と笑うその声に、八五郎の心はさらに高鳴る。だが、恋心は絶対の秘密。誰にも、たとえ神田明神の神様にもバレちゃいけないのだ。

今年の種目は「大江戸障害物競走」。境内をぐるりと一周し、鳥居くぐり、巨大な俵越え、さらには水をかぶりながら走る過酷なレースだ。八五郎は親分とペアを組み、スタートラインに立つ。平次の袴姿は凛々しく、八五郎は「親分の隣で走れるなんて、まるで夢だぜ…」と頬を赤らめるが、すぐに「いや、集中だ!」と自分を叱咤する。

号砲が鳴り、一斉に走り出す。平次は軽やかな足取りで鳥居をくぐり、八五郎は必死に後を追う。最初の障害、巨大俵に差し掛かると、平次はひょいと飛び越える。「八五郎、遅れるな!」その声に、八五郎は「へい、親分!」と気合いを入れ、勢いよく俵に飛び込むが…なぜか俵に頭から突っ込み、ズボッと半分埋まる。「お、お助けを~!」と叫ぶ八五郎に、観客は大爆笑。平次は苦笑いしながら俵を引き抜き、「お前、ほんとにドジだな」と肩を叩く。その手が触れた瞬間、八五郎の心臓はバクバク。危うく「親分、大好きです!」と叫びそうになる。

次の障害は水をかぶるゾーン。平次は涼しい顔で水をかき分け進むが、八五郎は水をかぶった拍子に足を滑らせ、親分に抱きつく形に。「お、お前!しっかりしろ!」と平次が叫ぶが、八五郎の頭の中は「親分の胸板、なんてたくましいんだ…!」でいっぱい。観客は「八五郎、親分に抱きつくな!」と野次を飛ばし、境内は笑いの渦。

最後の直線、八五郎は奇跡的に親分と並ぶ。ゴールはもう目前だ。「親分、俺、今年は絶対勝つぜ!」と叫ぶ八五郎だが、その瞬間、足元に転がっていた神社の招き猫の置物につまずく。八五郎は派手に宙を舞い、なぜか親分の扇子を巻き込みながらゴールテープに突っ込む。結果、テープは切れたが、八五郎は親分の扇子を握りしめたまま地面にダイブ。観客は「八五郎、扇子泥棒!」と大盛り上がり。

平次は呆れ顔で扇子を取り戻し、「お前、来年は一人で走れよ」と笑う。八五郎は泥だらけの顔で「へい、親分…でも、来年も一緒に走りたいっす」と呟く。その恋心は、今年も神田明神の秋空に溶けて消えた。だが、八五郎の胸には、新たな決意が芽生えていた。「来年こそ、親分と優勝だ!」

かくして、神田明神運動会は笑いと拍手に包まれて幕を閉じた。八五郎の恋は、誰にも知られず、また来年の運動会へと続くのであった。
銭形平次 八五郎の運動会2 Grok

Entry6
黒き影
今月のゲスト:幡幽泉

 藁打つ音は村に響き、かりは遠く田の面に聞こえ、夜色陰々として汀の蘆の枯葉、風に騒然ザワザワと鳴り、池の小浪の岸打つ音も淋しげに四面の森林陰鬱たる寺がさこの池の堤伝いに黒き影は現れ出ぬ。
 人か人にしては影小なり、犬か犬にしては影大なり。
 の黒き影は堤の中程まで来りしが動かずなりぬ、しばありて彼の黒き影は再び動きて此度は樋の桁木を危なげに渡りぬ、その時突然水音立てて水鳥の一二羽飛び去れり。此音にや驚きけん彼の影はと叫びしが尚去らんともせざりき。
 深山颪みやまおろしさつと吹き来りて蘆の枯葉は一層騒然と鳴り小浪は音高く岸をうちぬ。
 怪しき黒き影より詢呟つぶやくごとき声は起これり其声は愈々いよいよ高く聞えぬ。

 ととにあいたや、あいたやな、ととはござらで、浪がたつ、其の調べは幼げに悲しげに咽びつつ歌われたり。

 再三再四あるいは低くあるいは高くあるいは悲しげにあるいは哀れげに淋しげに幼な声の歌は繰り返されぬ。
 黒き影は再び堤に上れり、されど尚幼なき声は繰り返されつつ、去るに非らず、行くに非らず、黒き影は堤を行きつ、帰りつあるいは暫し留まりつつありしが、何か見出せしかの如く、速かに桁の上を渡りぬ。

 歌うが如き其の声は遂に会話の如き調と変われり。

トツサン御前は何んで鉄を連れて行て呉れぬ、らは何時いつも来るのに、ナートツサン鉄も其所へ行きたい。


 夜は愈々更け渡り田の面に飛ぶ鴨の羽搔も淋しげに森続きには野孤の叫びの聴えぬ。

 尚お黒き影の会話は続けられぬ。

トツサンうちの母サンハ、ナー 森の下の吉さんと二人してらをいじめて、らを毎晩馬屋のマダで寝させて ソイカラカカサンは酒ばかり飲んで、うまいもの飲食タベて、らにはガユばかり食わして………なー、母サンは吉さんを泊まらして、たつで寝て蒲団はアノそれ御前が大事にして何日いつも御客さんのだと言ッたナー、あれを着て トツサン………らはムムシロのなかで寝る……………。


 幼なき声はむせびつつありしがここに至り断絶せり。
 稍々ややありて会話は又起りぬ。

トツサンイダかららは、御前のとこへ行きたい、御前はなんで独り、し死んだ、らは何んで死なして呉れん、トツサン頼むかららも一所に連て行てよ、うちへ帰るのはいやだ、ら吉さん大嫌いだ、今朝もらに吉さんて言うな、トツさんて言えと言ッた、言わぬとらをッたから、カカさんに言うたら、カカさんまでが、吉さんて言うなと言った、カカさんも御前が此池へハマッてから、コワカカさんになった、イだからカカさんも吉さんも嫌いだ、トツさんが一ばんきだ、だからトツさんらも其所ソコへ行かして呉れ、ら今行くから、ヨウ…………


 折しも村にはあるいは近くあるいは遠く鉦の音響きて『鉄ヤー、鉄さんヤー』と聞えけり。
 樋の上の黒き影は、トツサン、とひとこえ高く叫ぶや否や、渹然ザンブと響きたる水音は聴こえつ、其の後は絶えて黒き影も物の音も聴こえずなりぬ。