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1000字小説バトル

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1000字小説バトルstage4
第98回バトル 作品

参加作品一覧

(2026年 2月)
文字数
1
おんど
1000
2
サヌキマオ
1000
3
ごんぱち
1000
4
Humanitext Aozora
1160
5
中村春雨
1179

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Entry1
長編小説(途中まで)
おんど

年末年始はMicrosoftジュエル2をやり込んだ。その合間に小説も少し書いた。穏やかな日が続いたような気もした。Microsoftジュエル2は調子がいいと17ゲームくらい続くので、一日8時間くらい時間を溶かすことができるのだった。大晦日に1億6000万点を叩き出し、チャンピオンの称号をいただいた。8000万点のころは天才の称号をいただいたから、Microsoftでは天才よりもチャンピオンのほうが格上ということらしかった。
年末年始に人間としての格が上がったせいか、年明け早々におこめ券が届いた。梶原さんのところには届いていないから、ずいぶんと格上になったものである。
慌てておこめと引き換えると格上人間として品がないので、梶原さんに見せびらかしつつラブホテルで時間をつぶし、おこめ券を焦らすことにした。もういい加減おこめ店に持参してくださいよ、とおこめ券の方から言わせないと気が済まない。そんな気分になっていた。
ルームサービスのどん兵衛を食べながらテレビを観た。古い型の観音開きだったから今だに「おっさんずラブ」をやっていて、チャンネルを変えると「おっさんずブラ」、さらに変えると「おっさんヅラ部」だったという三段落ちをスマホに書き付けているのを梶原さんに見つかり、五月雨式に寝バックで交合してからおこめ店に向かった。封筒が派手な紅白に縁どられ、金色の勘亭流で「特別ご優待」と書かれているのが少し気になったが、梶原さんの運転で国道をずんずん進んだ。もしかしたら少し分け前に預かろうとしているのかもしれない。
「お客様、誠に恐れ入りますが、この券はこちらでは取り扱っていません」とおこめ店の若い女将さんが言った。
「じゃあなに? もう一度ラブホテルに戻れっていうの? 冗談じゃないわ。ちょっとおたくの庭先を貸してくださる? ぱぱっと済ませますから」
梶原さんの目が吊り上がっている。どん兵衛のお揚げをしゃぶしゃぶ楽しんでから当方のお稲荷さんをしゃぶしゃぶしたから、プライドの高い狐の霊が取り憑いてしまったのかもしれない。確かに券面をよく見れば、それは役所から届いた「おこめ券」ではなく、欲所から届いた「おめこ券」であり、若い女将さんが赤子を抱っこひもで揺らしながら腰をもぞもぞさせるのも無理はない。
「それではあいだを取って、3Pなどどうでしょうか」
気温が低いとはいえ、日だまりは暖かく、3人で身体をもみもみし合えば、新年にふさわしい
長編小説(途中まで) おんど

Entry2
キムチ
サヌキマオ

 たまに、年に十五回ほど駅前のコンコースの下りエスカレーターの脇の路上でキムチを売っている人があり、見かけるたびに買っている。今日も白菜とおぼしき普通のキムチを一包み三百五十円で買った。毎度かなり強く梱包されてはいるのだが、それでも強いにんにくの香りがあたりに立ち込めている。普通のキムチの他にはニラキムチ、エゴマキムチ、オイキムチ、カクテキなどと書いてあるが、どれも買ったことはない。
 エスカレータを降りる。ずいぶん日が長くなったとはいえ七時をすぎると真っ暗で、駅前の明かりから街路灯の等間隔の灯りになると、やおらふわふわと天使が降りてくる。頭上に環、全裸で羽の生えたやつだ。金髪と銀髪のがいて、キムチの香りに惹かれてやってくるのだ。私のまわりを頭上をぐるぐると旋回しながら隙を窺っている。左手首にずしりとしたレジ袋の重み、少し肘を曲げて前に差し出すと天使が左側後方から獲物めがけて飛び込んでくる。右に払って除ける。天使は私の前に抜けていく。あんがいと小回りがきかないらしい。そのまま右旋回しつつ上昇、今度は角度鋭く急旋回、人間の背後から掬うような動きで突撃してくるところを身を捩って避ける。眼前に羽の生えた背中が見えた刹那、右手でふくらはぎのあたりをぐっと捕まえる。羽の浮力が強く腕の筋肉にかかる。じたばたする天使を左手に持ち替えて、あらためてちんちんをつまみ上げてびっ。あんがい気楽にペニスが取れる。天使は悲鳴もあげずに逃げていく。よし、金のちんちんだ。
 家につく。今日は天使の数が多く、暗闇に五匹も六匹も寄ってくると敵わないのでいつものようにレジ袋ごとキムチを放り投げて帰ってきた。天使は人間に興味がないらしく、みんなキムチに群がっていく。去年は十三回機会があって六勝七敗といったところだ。今年初で金のちんちんは縁起が良い。
 よく洗った金のちんちんを茶封筒に入れる。普通郵便で送ることができる。ちんちんは金のちんちんならひとつ、銀のちんちんなら五つで米十キロと交換してもらえていたが、昨年の十一月だったか、銀のちんちん五つ送ったところ米が七キロに減らされていた。どこもかしこも物価高だ。普通郵便の切手代も一一〇円になってしまった。
 集められた金や銀のちんちんがどのような使われ方をしているのかには興味があったが、調べようとするとオンラインへの接続が途切れてしまうため、考えないことにしている。
キムチ サヌキマオ

Entry3
米倉涼子、書類送検されたってよ
ごんぱち

「米倉涼子が書類送検されたらしいぞ」
「ははぁ、同姓同名だな?」
「いや、何でも麻薬取締法容疑で、家宅捜索もされていたそうだ」
「米倉涼子って、米倉の中で涼んでそうな名前だよな」
「そのまんまやないかい! っていうか、麻薬の話どこに行ったんじゃい!」

「……四谷先生、今回の4コマのネーム、何ですかこれ」
「えー? 時事ネタを拾ってみたんだけど、面白くない?」
「面白くないのも当然にアレだし、不起訴だから更にアレですが、そもそもコンプラ意識とかどうなってんですか。芸能人の名前そのまま使ったらダメに決まってるじゃあないですか」
「そこ、それなんだよ」
「どれですか」
「コンプライアンスって主に法令の遵守が基本ラインじゃん? 歌詞は分かるよ? 音楽著作権があるから。トレースもまあ分かるよ。元ネタに著作権があるだろうから。でも、芸能人って公人じゃん。芸名って公に使う為のものじゃん。芸名使ったらダメってどういう辺りの法令? 規範? 個人情報保護法か何か? それとも出版禁止用語とかの社内規定?」
「……コンプラって言葉の使い方は社会通念に近くなってんですよ。まあ、言いたい事は分かりますがね。そもそもどんなウンコみたいな人にだってファンはいるんですよ。変ないじり方したら炎上して大変な事になるんですよ」
「それって炎上させる方、参加する方がおかしくねえ? 他の誰かの自由を侵害しない限りにおいて、言論って自由じゃなかった? 嫌な気分ぐらいのは侵害とは言えないんじゃなかった?」
「ハッキリ言わせたいんですかね。今は正に大SNS時代、大お気持ち時代ですよ。気に入らなかったら匿名で言葉のウンコを幾らでも投げつけられるんですよ。何となく気に入らないというだけで、DoS攻撃や田代砲的な頻度で生成AIにひらせたウンコを生成AIのアルゴリズムで自動投げつけ出来るんですよ! ウンコしながらでもね!」
「そのするウンコは言葉のウンコ? リアルウンコ?」
「リアルな方ですよ。人々が皆ウンコを手にぶら下げたゴリラになってる時代に悪目立ちするっていうのは、ウンコまみれになる覚悟が必要だし、それをやりたいなら出版社とは関わらないでくれって事です!」
「……分かったよ、見直すよ。見直すから近藤さん、ちょっとネタ出し付き合ってくれない?」
「まあ……良いですけど」
「ファミレス行こう、ファミレス。スープカレーフェアやってるんだ」
「ツッコミませんよ」
米倉涼子、書類送検されたってよ ごんぱち

Entry4
銭形平次 八五郎のバレンタインデー
今月のゲスト:Humanitext Aozora

 神田明神下の平次の住居すまいに、早春の風が吹き込んだかと思うと、それはガラッ八の八五郎であった。
「親分、てえへんだ、てえへんだ! 江戸中がひっくり返るような椿事で」
 相変らずの慌てぶりである。この男、少しの英雄素質もなく、少しの才分もないが、どうやらまた、途方もないニュースを拾って来たらしい。
「どうした八、藪から棒に。また何処かの猫が仔でも産んだか」
 平次は煙管の雁首でポンと膝を叩き、苦笑いを含んで迎える。女房のお静が、慣れた手つきで渋茶を汲んだ。
「猫じゃありませんよ。南蛮渡来の怪しげな呪法まじないが流行ってるんで。なんでも『バレンタイン』とかいう切支丹の伴天連が定めた日で、おなが男に、黒い毒薬を盛るって噂だ」
「毒薬?」
「へえ。これを飲まされた男は、たちまちその女子に骨抜きにされちまう。現に、日本橋の小町娘が、これを懐に忍ばせて歩いてるのを、あっしはこの目で見やした」
 八五郎は、懐から紙包みを取り出した。強引に手に入れた証拠品らしい。開くと中には、漆黒の、あやしげな光沢を放つ小石のようなものが一つ。
「こいつだ。鼻を近づけると、甘えような、焦げたような、妙な匂いがしやがる」
 平次はそれを指先で摘み上げ、しげしげと眺めた。
「ふむ。……八、お前、これをその娘からって来たのか」
「奪ったなんて人聞きの悪い。向こうが落としたのを、拾ってやったのに、顔を赤くして逃げちまったんでさぁ。きっと毒薬を見られたのが恐ろしかったに違いねえ」
 平次は、その黒い塊を、ひょいと口へ放り込んだ。
「あッ、親分! 死んじまう!」
 八五郎が飛び上がって止めようとするのを、平次は片手で制し、モグモグと噛み砕く。
「……なるほど、こいつは毒だ」
「それ御覧なせえ! 早く吐き出さねえと」
「いや、こいつは心の毒だ。甘くて、ほろ苦くて、一度味わうと癖になる。南蛮ではこれを『チョコレイト』と呼ぶらしいが、江戸の娘たちは、これを意中の男に贈って、心を縛るつもりらしい」
「へ? じゃあ、その娘は……」
「お前に拾われたんじゃ、その娘も運がねえ。こいつは本来、想い人に渡すはずのものだったのさ」
 平次はニヤリと笑った。
「八、お前も一つ、誰かから貰えるといいがな。だが、お前のようなガラッ八に、そんなハイカラな毒を盛ろうなんて物好きは、江戸広しといえどもそうは居ねえだろう」
「へっ、冗談じゃねえ。毒なんか食らってたまるかい」
 八五郎は口を尖らせたが、その眼は未練がましそうに、平次の口元に残る黒い欠片を追っている。
「まあまあ、八五郎さん。お毒味の残りですが」
 お静が笑いながら、羊羹の端を差し出した。
「へへっ、やっぱり日本の甘味あまいのが一番で」
 八五郎が頭を掻くと、神田の空に、少し気の早い春一番が吹き抜けた。江戸のバレンタインデーは、かくして事なきを得たようである。
銭形平次 八五郎のバレンタインデー Humanitext Aozora

Entry5
冬の日影 (美文)
今月のゲスト:中村春雨

 猫背の、眼のしょぼしょぼした、隣の洗濯屋のばばあが、いま洗い立ての、白っぽい、子供の窄袖つづそで服を竹竿へ乾そうとして、やつと手を挙げて、腰を延ばせた処へ、ちょこちょこ、大人の下駄を引摺りながら七八才の、頭を稚児髷に結って赤い飾りをかけ両の袂を毛糸の編襷あみだすきで絞り上げた小娘が走って来て、小手を翳して眼をまじまじさせて、婆の顔を見上げた。
 洗濯物の、袖の処をきうと引張って、乾し直した途端、はっくッしょー、大きなくさみをした、小娘はちよつと笑うて。
祖母おばあさん、もう洗濯する物はなくって』
 はッくしょー、また一つ嚔をする。
祖母おばあさん、もうなくって』
『アア……もう今日はないよ、難有ありがとう、お千代さんのお手伝いで大助かり……ホホホ』と笑う。
 お千代さんも得意げに、そつと笑うて、祖母おばあさんの顔を見る、お祖母さんも一寸ちよつと此方を見て。
『オヤ、二本棒が……』
 袂から塵紙を出して、小娘の、小さい鼻の穴から出たり入ったりしている青鼻汁あおつぱなを取ってやる。
 丁度、風も吹かぬのに、白髪が脱けて、悠々と舞いながら落ちるのを小娘の目敏く、片手で掴むように拾い取って。
『お祖母さん、これ……』と見せている。
『ウム……』と頷いて、両手を袖口へ引込ませて、しゅうと鼻汁を啜り上げた。
 お千代さんは依然、そこへ佇立ったままで小さい指と指との間で、何だか物珍しげに今の白髪を引張っている。日光が辷って、銀の針と光っているので。
『奇麗だこと……』と云って、お祖母さんの顔を見上げて、眼転またたきして『ね……ね……奇麗だ』
 妙な笑い顔をして『今に……今におまえもそんな白髪になるんだよ』
『私が……私がお祖母さんのようになるのだって、アラ……あんな事を』真実ほんとうとは思わぬような顔色して、笑くぼを附けて、片手では無心に白髪を指の間に挿んでぴりぴりと動かしている。
『お千代ちゃんも、今にお婆さんになって、こんなに腰がかがむんだ、アア……此処が痛い、腰が痛い』
 片手で二つ三つ手応えする程に叩きながら、袖口で鼻汁をしゅうしゅうと啜り上げてもう裏口の方へ帰って行く、霜解けの、土団子を捏ね返したような庭のおも、歯の減った下駄の足元危なげに、影法師が揺れて、揺れて。
 小娘は今、白髪をふっと、紅の蕾の唇の息をめて吹き飛ばして、空の方をちよつと見上げて、何だか勝ち誇ったような面持ちして、直ぐと祖母おばあさんの跡を追いかけたが、下駄の履歯に粘い泥が粘着くつついて、一寸と足が運ばれない、徐々そろそろ歩みを移していると、そのうち祖母おばあさんの影は家の中へ消えてしまった。
 竹の垣根の、陰影かげになってる処には、未だ斑らに黒土の上を薄白い霜が消え残っている。竿の洗濯物は死んだようにじつとして、動かない、広くもあらぬ庭の何だか寂寞として、荒れ野に一人取り残されたとでも思うのか、小娘は焦りに焦って、危なげな足元の、裏口の方へ急いで行く。
 後は、庭面にわおもに一ぱい、射しかかる日光の色が何だか寒いようだ。