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1000字小説バトル

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1000字小説バトルstage4
第99回バトル 作品

参加作品一覧

(2026年 3月)
文字数
1
おんど
1000
2
サヌキマオ
1000
3
ごんぱち
1000
4
Gemini
1009
5
菊池寛
1633

結果発表

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Entry1
長編小説(途中まで)
おんど

記憶にコンダクターを取り付けたのに相変わらず記憶が混濁しているのは何かコンダクターの取り扱い方法が間違っているのだろうかと梶原さんに確かめてみると、梶原さんは鞄から広辞苑を取り出してコンダクターの意味を調べ始め、「コンダクターとは英語で指導者、導くものを意味し、主にオーケストラの指揮者、列車の車掌、あるいは電気を通す導体を指す言葉です」という字面はごっくん飲みこんだものの、それはもしかしたらコンバーターのことではないかと云うのでいちど鞄に仕舞ってしまった広辞苑を引っ張り出して指を舐め舐め調べてみるとコンバーターとは「異なる形式のエネルギーや信号、機器を相互に変換する装置」のことであり、さはさりながらさわさわ触りながら中指を伸ばして梶原さんの奥の飛騨飛騨にさぐりを入れてみたところ襞襞が力強く収縮しながら機微な情報を抜き差ししていることがありありと感じられ、本当に入れたかったのはさぐりではなくふぐりだということに気づいたのがもうサービスタイムも終わらんとする午後三時五十分で、溜まっていた市立図書館の振替休日を中途半端に消化しかけた夕まぐれ、西の空を雷鳥が横切るところを買い替えたばかりのスマートフォンの魚眼レンズで切り取ってアルゴリズムにしたがって拡散したいと格さん助さん助平爺さんシェケナベイベで何かお口に入れたいわとぱっくり梶原さんが開くのでそのなかをぱんぱんにしてやろうか、どうだい俺の茹でたうどんと巾着でぱんぱんにしてやろうかとDV男みたいな口調で唾を飛ばしてはみたものの、冬の夕まぐれは情緒がちるちるになってしまうのは仕方のないこととしてせっかくちるちるするなら口を揃えてちるちるしたいものだね、もう15年間もセフレ以上愛人未満の歌詠み仲間として天皇を頂点とする歌壇のヒエラルキーという急斜面を直滑降してきた間柄だというのに観音開きのテレビをサービスタイム終了直前にハンドでPKを与えてしまったみたいに点灯させてミラノポルチオ冬季オリンピックの開幕戦を観ているなんてちょっとおセンチな気分になりますね、なんて他人事みたいに僕のおちんちんをしゃぶしゃぶしてくれるのは良い気持ちだけれども真剣に少子高齢化のことを考えるならアイスダンスの義務化を若いうち、そうさな小学校低学年のうちから文教族のドンである萩生田先生にお願いしてみるのはどうだろう、せっかく八王子のホテルで大切な仕事を片付
長編小説(途中まで) おんど

Entry2
鳩のおじさま
サヌキマオ

 前の四車線道路の向かいにあるカフェーのオープンテラスにシリアスなときの三國連太郎をがっしりしたような、梅宮辰夫と足して二で割ったようなおじさまがいて、毎日、炎天下でも氷点下でも鳩にまみれてコーヒーかなにかを飲んでいる。買い物のついでに前を通りかかると、おじさまはバターピーナッツを鳩にやっているのであった。そりゃあ鳩もまとわりつくはずだ。
 鳩にまみれで優雅な朝を過ごしていたおじさまは定時になると都営バスに乗り込んで何処かに行く。服装は明らかに高級なのである。帽子ひとつで私の全衣服を買ってもお釣りが来るに違いない。東京に珍しく雪の降った日は純白のダウンジャケットで定席に座っていた。素敵……と思う。
 それはそれとして人生は続く。昼の一時過ぎにまいばすけっとに行くと、運が良ければ食パンに三十パーセント引きのシールが貼られている。食パンは九十九円税抜であるので、つまりは六十九円プラス消費税で買えることになる。パンは六枚切りか八枚切りを売っており、一回の朝食に二枚ずつパンを食べるとすると、八枚切りの場合六十九×一.〇八割ることの四で一食一八.六円という計算が成立する。
 ここからが問題で、ではパンが六枚切りであったとしても三十パーセント引きならば買ったほうがいいのか、という疑問は避けて通れない。つまりは六十九×一.〇八割ることの三であるが、一食二十四.八円という数字が吐き出されてくる。これを通常価格、つまりは八枚切り九十九円のパンを四回に分けて食うと一食二十六.七円。なんと、僅差ではあるが通常価格で八枚切りを買うよりも三割引の六枚切りを買うほうが安いという計算となる。この計算がどれほど多くの消費者の心を勇気づけたことだろう。
 以上の計算を踏まえて十個二百五十九円(税抜)の卵を一つずつ焼いて食うすると一食五十円強の朝食が出来上がる。日々は斗いである。このような算術をもとに一喜一憂し、三十パーセント引きの食材の存在を前提として日々の食卓を企画立案していくのである。
 長い長い格闘を経て店を出る。雲一つ無い晴れの日だ。富士山に向かう道は下り坂となって開けている。黄砂に霞んで晴れた空をしばし見上げていると、大量の鳩に運ばれて空をゆくおじさまの姿を観た。鳩は数百羽も集められてはいるが、束ねられた縄に座るおじさまの巨体を支えている様子はずっと苦しそうだ。
「うまい話はねえなぁ」
 私は感心した。
鳩のおじさま サヌキマオ

Entry3
月に拍つ
ごんぱち

 まさか、こんな事になるとは思わなかった。
 ほんの冗談のつもりだった。
 1食か2食タダ飯でも食って、適当なタイミングで逃げ出すか、たとえバレても「この野郎騙しやがったな、このいたずらタヌキ!」で終わるだろうと思っていた。
 だってそうじゃないか。
 竹から赤ん坊が出て来る、その時点で疑うものだろう。

 確かに竹は本物を使った。
 裏をくりぬいて、赤子に化けて入り込んでいた。
 おれぐらいになれば、小さい物も自在に化けられる。
 竹をちょいと火で炙って艶を出し、拾いものの鏡で陽の光を集めて、目立つようにもした。
 だが、そこに何故違和感を抱かないのか。
 あのジジイ、ひょっとして本当に竹が子供を生むとでも思っていたんだろうか。

 もちろん、何度も逃げようとした。
 だが、今度はババアの方が一瞬も目を離さない。
 子供だから心配なのかと思って、布団の中で少しずつ大人に化けてやった。
 たった3ヶ月の間に、だ。
 これは流石に化物か何かと思うだろうと思ったら、「きっと竹から生まれたので、育ちが早いんだろう」って、そんなワケあるか! 生まれた後は竹要素ゼロだろうがよ!

 不細工になるよりは、美人の方が良いかと思って化けたのは確かだが、あんなに求婚に来るこたぁねえ。
 メスってのは顔だけで決まるもんでもないだろう。
 きちんと子供を産めるように丸々太ってるとか、貯め糞がエロく匂うとか、そういう多様な見方が必要だろうに、本当、人間ってのは賤しいヤツも偉いヤツも、顔かたちしか見やしない。

 もう限界、本当にヤバい、マジ無理。これ以上歌のやり取りなんかしたらタヌキだってバレる。
 何か良い方法はないか……良い方法、ああ今日はやけに月が明るいや。
 月を眺めて兄弟と腹鼓を叩いていた頃が懐かしい。
 月は良いよな、空に浮かんでりゃ、誰にも手が届きゃしない。
 ……待てよ?

 ――いや、助かった、助かった。
 近くの河原に枯れ麻があったのが何よりラッキーだった。
 丁度良い感じの煙幕になったし、何だかみんなぼんやりしちまって、弓もへろへろになってやがった。
 お陰で使者役を頼んだ兄弟達が、1匹も射殺されずに良かった。
 助かった。
 兄弟達には、魚でも届けてやらねぇと……ふぁああ。

「――帝、この不死の薬、本当に燃やしてよろしいかったのでしょうか」
「かまわぬ」
「それにしても、こう……煙が、臭いますな」
「良薬は口に苦し、臭いも同じ事なのだろう」
月に拍つ ごんぱち

Entry4
銭形平次 八五郎の放送記念日
今月のゲスト:Gemini

 三月二十二日は、江戸の街が妙に騒がしい「放送記念日」である。
 もちろん、この時代に電波も受信機もありはしない。だが、江戸っ子たちの間では、一年のこの日だけ、長屋の屋根や火の見櫓に登り、得意の喉を鳴らして町中に「放送ふれあるき」をするという妙な風習が定着していた。
 神田明神下のガラッ八こと八五郎は、この日が来るのを、千両箱を夢見る以上に心待ちにしていた。なぜなら、普段は口が裂けても言えない「ある想い」を、この喧騒に紛れて叫ぶことができるからだ。
 八五郎が恋い慕うのは、誰あろう、親分の銭形平次である。
 男が男に、それも子分が親分に惚れるなど、道に外れたお笑いぐさ。八五郎は日々、その熱い情熱を十手の下に隠し、忠実な犬を演じてきた。だが、今日ばかりは我慢がならない。
「親分! あっしは今日、景気よく放送してきやすぜ!」
 平次の家で、八五郎は鼻息を荒くした。平次は火鉢の炭をいじりながら、
「勝手にしろ。だが、あまり馬鹿なことは喋るなよ。お前の声は無駄に響くんだからな」
 と、いつもの涼しい顔。その傍らで、妻のお静が茶を淹れながら、
「八さん、変な色気は出さないことね。放送にも『規律』ってものがあるんですよ」
 と、冷ややかな釘を刺した。お静の目は笑っていない。彼女は八五郎が平次に送る、蕩けるような視線を、女の勘で完璧に察知し、快く思っていなかったのだ。
 八五郎は表へ飛び出すと、近所の長屋の屋根に駆け上がった。
「えー、放送です! 神田明神下の平次親分は、江戸一番の色男! その背中に一生ついていく、いや、抱きつきたい野郎がここにいまーす!」
 渾身の絶叫であった。しかし、羞恥心が邪魔をして、肝心の主語を「ある男」と濁してしまった。街の人々は「誰だ、その不届き者は」と笑い転げている。
 すると、屋根の下を通りかかった平次が、呆れ顔で小銭を指に挟んだ。
「八、うるせえ! 不審者と間違われるような放送はよせ!」
 ピシッ。平次の投げた四文銭が、八五郎の額に鮮やかに命中した。
「あいたっ!……でも、親分の投げた銭が、あっしの額に。これぞ、最高の受信料……」
 八五郎は屋根の上で、恍惚の表情を浮かべて悶絶した。その様子を窓から見ていたお静が、静かに障子を閉めながら呟いた。
「……来年の放送記念日は、あの方を箱根あたりに遠ざけなきゃね」
 江戸の空には、八五郎の歪んだ情愛と、お静の冷徹な声だけが、春風に乗ってどこまでも空しく響き渡るのだった。
銭形平次 八五郎の放送記念日 Gemini

Entry5
今月のゲスト:菊池寛

 摂津半国の主であった松山新介の侍大将中村新兵衛は、五畿内中国に聞こえた大豪の士であった。
 その頃、畿内を分領して居た筒井、松永、荒木、和田、別所など大名小名の手の者で、「やり中村」を知らぬ者は、恐らく一人もなかっただろう。それほど、新兵衛はそのしごき出す三間さんげんの大身の鎗の鋒先で、さきが殿しんがりの功名を重ねて居た。その上、彼の武者姿は戦場に於て、水際立った華やかさを示して居た。火のような猩々皮しようじようひ服折ふくおりを着て、唐冠とうかん纓金えいきんの兜を被った彼の姿は、敵味方の間に、輝くばかりのけざやかさを持って居た。
「ああ猩々皮よ唐冠よ」と、敵の雑兵は、新兵衛の鎗先を避けた。味方が崩れ立った時、激浪の中に立つ巌のように敵勢を支えて居る猩々皮の姿は、どれほど味方にとって頼もしいものであったか分からなかった。また嵐のように敵陣に殺到するとき、その先登せんとうに輝いて居る唐冠の兜は、敵にとってどれほどの脅威であるか判らなかった。
 こうして鎗中村の猩々皮と唐冠の兜は、戦場の華であり敵に対する脅威であり味方にとっては信頼の的であった。
「新兵衛どの、折入ってお願いがある」と元服してからまだ間もないらしい美男のさむらいは、新兵衛の前に手を突いた。
「何事じゃ、そなたとわれらの間に、左様な辞儀は入らぬぞ。望みと云うを、はよう云うて見い」と、育むような慈顔を以て、新兵衛は相手を見た。
 その若い士は、新兵衛の主君松山新介の側腹そばはらの子であった。そして、幼少の頃から、新兵衛が守役として、我子のように慈しみ育てて来たのであった。
ほかの事でもおりない。明日はわれら初陣じゃほどに、何ぞ華々しい手柄をして見たい。ついては、御身様の猩々皮と唐冠の兜をしてたもらぬか。あの服折と兜とを着て、敵の眼をおどろかして見とうござる」
「ハハハハ念もない事じゃ」新兵衛は高らかに笑った。新兵衛は、相手の子供らしい無邪気な功名心を快く受け入れることが出来た。
「が、申して置く。あの服折や兜は、申さば中村新兵衛の形じゃわ。そなたが、あの品々を身に着ける上からは、われらほどの肝魂きもたまを持たいでは叶わぬことぞ」と云いながら、新兵衛は又高らかに笑った。

 そのあくる日、摂津平野の一角で、松山勢は、大和の筒井順慶の兵としのぎを削った。戦いが始まる前、いつものように猩々皮の武者が唐冠の兜を朝日に輝かしながら、敵勢を尻目にかけて、大きくのりをしたかと思うと、駒の頭を立てなおして、一気に敵陣に乗り入った。
 吹き分けられるように、敵陣の一角が乱れた処を、猩々皮の武者は槍を付けたかと思うと、早くも三四人のしやを、突き伏せて、又悠々と味方の陣へ引きかえした。
 その日に限って、黒皮くろかわおどしよろいを着て、南蛮なんばんてつの兜を被って居た、中村新兵衛は、会心の微笑を含みながら、猩々皮の武者の華々しい武者振を眺めて居た。そして自分の形だけすらこれほどの力を持って居ると云うことに、可なり大きい誇りを感じて居た。
 彼は二番鎗は、自分が合わそうと思ったので、駒を乗り出すと、一文字に敵陣に殺到した。
 猩々皮の武者の前には、戦わずして浮足立った敵陣が、中村新兵衛の前には、ビクともしなかった。その上に、彼等は猩々皮の「鎗中村」に突きみだされた恨みを、この黒皮縅の武者の上に復讐せんとして、猛り立って居た。
 新兵衛は、何時いつもとは勝手が、違って居ることに気が付いた。何時もは虎に向かって居る羊のようなおじが、敵に在った。彼等が狼狽うろたえ血迷うところを突き伏せるのに、何の雑作もなかった。今日は、彼等は対等の戦いをする時のように、勇み立って居た。どの雑兵もどの雑兵も十二分の力を新兵衛に対して発揮した。二三人突き伏せることさえ容易ではなかった。敵の鎗の鋒先が、さもすれば身をかすった。新兵衛は必死の力を振った。平素もの二倍の力をさえ振るった。が、彼はもすれば突き負けそうになった。手軽に兜や猩々皮をしたことを、後悔するような感じが頭の中を、かすめた時であった、敵の突き出した鎗が、縅の裏をかいて彼のばらを貫いて居た。