Entry1
長編小説(途中まで)
おんど
どこで書いたか忘れてしまったのだが、簿価ジュニアーズについて補足しておきたい。南米のクラブと書いたのでてっきりサッカークラブの話かと思ったとの問い合わせを読者から頂いたのだが、簿価ジュニアーズというのは錦糸町にあるアルゼンチンパブのことです。錦糸町のチンパブといえば簿価ジュニアーズのことだというのは皆さんご存知だと思い込んでしまった。
簿価ジュニアーズには下半身のコンディション不良に悩むサッカー選手と作家選手が夜な夜な集い、自分の市場価値について値踏みされていた。元図書館司書で、心理カウンセラーの肩書を持つ梶原という女がカウンターに男を寝かせ、パンツを脱がせて簿価と時価の差を測定するのを下半身のコンディション不良に悩むオーディエンスが泥酔しながら眺めている。そんなチンパブであった。
梶原栗子は松戸市の図書館司書として働く傍ら視聴覚センターで自主制作の映像サークルを立ち上げ、フィルムを回した。劇作家である夫と女優である妻との静謐な日々にひそむ闇を描いた「マイ・ドライブ・カー」を松戸市中央公民館で上映したところ、地域のミニコミ誌「グラッチェ松戸」に採り上げられ、話題となった。特に夫婦がセックスをしながらセリフを覚え、射精後のコンドームを膣圧で弾き飛ばしてゴミ箱へチップインさせる妙技には浅草演芸ホールの支配人も目を見張った。
そんな興行上の成功もあり、性交もあって小金を手にした梶原栗子が錦糸町にチンパブを開業したのは当然の成り行きであった。「マイ・ドライブ・カー」で使用したサーブ900を運転代行車両として使用したのも好評だった。
そのとき彼はWEB小説家としてある程度のフォロワーがいたものの文壇ではまったく認知されておらず、作家選手と揶揄されるような存在であった。若い選手を見出して育て、ビッグクラブへ移籍させて莫大な移籍金を得るというのが南米クラブのビジネスモデルであったが、簿価ジュニアーズは簿価のまま剥き出しにするチンパブだった。そのカウンターでは簿価のままでいられるのに、どうしてWEB上では時価をいきり立たせてしまうのだろうか。パンツを下ろした途端に時価を見せつけるような若者は、簿価ジュニアーズではきつく窘められた。いきり立った時価を厳格な監査法人のように殴りつけることもあった。そうやって下半身のコンディション不良を受け入れ、安全運転をすることを簿価ジュニアーズでは叩き込まれ