第3回チャンピオンofチャンピオン小説バトル Entry1
べッドが広くなってせいせいしたと思った。のは、単なる気のせいだった。サミシい。新年早々出てゆくなんてどうかしている。
部屋は、静まりかえっている。俺はテレビに興味がないので、あいつがいない限り点けない。ゆえ、正月番組も一切観ない。その代わり、新聞が好きだ。『大東京経済新聞』と『大東京産業経済新聞セブン』さえあれば好い。ラ・テ欄まであらかた眺めた辺りで、瞼が重くなってきて、睡魔に抗う事なく、寝室へ向かう。
あいつの二の腕と耳の後ろと腰骨の上のほくろが恋しくなる。くちづけて、甘く溶かしたい衝動に駆られる。沸き上がる欲求にまかせ、年初から無駄撃ちしてはならない。極力エロい事を思い浮かべぬよう、意識を拡散させつつ、ベッドに潜り込む。
暖かい。体温を感じる。あいつが戻ってきたのだろうか。
両眼を開けると、長丸くて水色の、名も知らぬ、湿った生き物が、うずくまっていた。落胆する。頭部に一房、洗濯し過ぎたセキセイインコ色の毛が生えている。引っ張ると、しかめ顔しやがった。生意気だ。酷い気分になって、俺は毛布をアタマまで引き上げる。
暖かい。あいつだ。
薄目を開ける。が、違う。見覚えのある男子が、スーツのまま横たわっている。職場の後輩(林田)じゃねえか。せめて靴下ぐらいは脱げよ。もういい。俺は、深々と毛布に潜り込む。
暖かい。三度目の正直。あいつに違いない。
右眼だけ開けると、近所の宅配ピザ屋の青年が、枕元に正座をして、俺を見下ろしている。頼んでないのに出前に来てくれたらしい。有難く頂戴する事にする。無論、金は払う。それにしても起きる度に違うヤツが登場している。
ピザ屋を送り出して、玄関の鍵をかけ、も、一度、毛布に身体を埋める。
目が醒める。今度は、本当に俺の隣は空っぽだ。
『からっぽの世界』を呟く。虚しい。その上、何べん歌ってもサビの歌詞が思い出せなくて、落ち込む。ついでに泣く。声を張上げたら、窓ガラスが、ぱしん、と割れた。
雪が吹込んで、寒い。取りあえずガムテープで目張りして急場をしのぐ。どうやら突如、キャリー並の超能力が身に付いたらしい。さらに大声を上げる。と、今度は、壁に、ぼしん、と大穴が開いた。敷金が瞬時にブッとぶ程の。別の意味で涙が出た。
「帰ってこいよ」
心で強く念じてみる。俺に真の超能力が宿ったのならば、これで事足りるだろう。
「愛してるゼ」
チキショウ。
も、一度、念。