第3回チャンピオンofチャンピオン小説バトル Entry6
僕の足下から長い影が伸びて、海岸線を真っ直ぐに突き抜けるバイパスのガードレールに仄かに映り込む。砂に半分埋もれたスニーカーに白い貝殻が寄添っている。冷たい風は穏やかに東から西へと吹いて船の汽笛を運んでくる。
僕はその場に座り込み、水平線に昇った朝陽を全身に受けるのを避けた。昨夜君が言った言葉が、僕にそうさせた。
『隠してた事はいいの、でも嘘をつかれるのは嫌』
波がキラキラと瞳の奥に沁みてくる。薄目を開けてその光りを一つ一つ追い続ける。輝きは波に消えてはまた輝く。止める事を知らない子供のように、波は無邪気に輝きを放つ。僕はその輝きに圧倒され、下らない嘘をついた事を後悔する。
「あんな事を言ってしまうなんて……」
波のうねりは大きくもなく、小さくもない。打寄せる波は静かでいて、穏やかではない。引き返す波と打寄せる波とがぶつかってお互いを呑込んでしまおうと、ジャバン、と言ってお終いだ。
このまま、この低い陽射しは僕をずっと捕えて離さないのか。このまま、この穏やかな冷たい風は僕をずっと包み込んだままなのか。
いっそこのまま、僕はこの海に身体を捧げ、この砂の上から消えてしまおうか。
「なんて、出来っこない」
僕は湿り気を帯びた砂を握締め投げつけた。スニーカーの横にちょこんと存在した白い貝殻は、黒い砂に弾かれてどこかの窪みに隠れて見えなくなった。
砂に埋もれた貝殻のように僕もこっそりここに隠れて、春まで君を待っていたなら君はどう思うだろう……。
『どうして? 東京に就職って〜』
『真海、君を残して行けなかったんだ』
『嬉しい! マミずっと純平の傍に居たい!』
……海は冬の太陽の輝きを拾い集め、誰にも邪魔する事の出来ない二人だけの世界へと誘っていく……
「なぁんて、あるわけねぇな。馬鹿だー俺はー」
「はぁ……」
嫌いになったなんて見え透いた嘘だ。僕は僕自身にも嘘をついていた。ずっとこのまま、ここでこうしていたいのに。君を忘れて見知らぬ街へなど行く事なんか、僕には出来そうもない。
「ふん、下らん嘘だ」
「純平ここにいたんだ。コーヒー買ってきた。飲もう!」
「あっ、……真海」
「あったかいよ〜、ほらね!」
真海の差し出した缶コーヒーは本当に温かかった。このまま時間が止ればって本気で思った。
「純平、大丈夫よ。行ってらっしゃい!」
「えっ」
真海のいつもと変らぬ笑った横顔は、波の煌めきを受けて僕には眩しすぎた。