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第4回チャンピオンofチャンピオン小説バトル Entry11

お熱の国へ


 朝、起きれなかった。頭がべつのとこみたいだった。時間わりがまだなのが気になるけど、ベッドから起きれなかった。
 ちょっとおこった感じでママがへやにきた。
「綾ちゃん、まだねてるの?」
 でも私をみると「あれっ」と言って、おでこに手をあてた。
「お熱があるわ」
「うん……」
 ぼっとして、おきてるか、ねてるのかわからない。うんうん、とか言ってるうちに、ほんとに何もわからなくなった。

 そっと目をあけたら、ママの背中でおんぶされてた。とんとん、と体がゆれて気持ちよかった。ほっぺたをぎゅっとくっつけた。
「うん、起きたの? ゆきちゃん」
 ゆきちゃんってだれだろう。
「秋元医院にいくからね」
「あきもと」
 ママの背中で見える景色はへんだった。知らない家ばかりだけど知ってる家もあった。道がちょっとちがうと思った。おばあちゃんの家のほう?
「ゆきちゃん、寒くない?」
「うん」
 やっぱりママじゃないと思った。でもママな気もした。お熱のせいかもしれない。
(そうだ、ここはお熱の国だ)
 お熱の時だけ来れるんだ。なんだか、知らない家もお店も、変なかたちのバスも、おかしくてママの背中に顔をつけてくっくっと笑った。ママもちょっとちがうママだから、私も名前もちょっとちがうんだ。でも同じ気もした。
 またなんだかぼっとしてきた。
 秋元医院はふつうだったけど、秋元先生はまだおじいさんじゃなかった。おひげが黒いからまた笑ったら、「この子はもう」とママも笑った。それからお薬をもらって、またママの背中でとんとんしてるうちに、また何もわからなくなって、目を開けたら、いつの間にか布団の中にいた。

 布団はベッドではなく、畳に敷かれていた。
 冷たい、たぷたぷと弾力のある大きなゴムの水枕が、運動場のように広がって見え、その向こうにお盆が置かれ、先刻の薬がある。
 いちごミルクを思わすピンクの(でもあまり美味しくないと私は知っている)水薬のガラス瓶に、小さな紙が輪ゴムで付けられ、
(のみぐすり ゆきちゃん 1日3回)とあった。

(ゆきちゃん)
 そう、私はそう呼ばれてた。今は私がママなのだ。
 だから私は綾ちゃんを、とんとんとおんぶして、白いおひげの秋元先生の所へと、こうしてお熱の国を歩くのだ。
 綾が目を覚ましたのか、ぎゅっと頬を押し付けてくる。
「寒くない?」って聞いてみたら、綾は何を思っているのか、背中に顔をつけたまま、くっくっと一人笑っていた。


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