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第4回チャンピオンofチャンピオン小説バトル Entry10
日記を書こうとおもう。 図書館の森で遭難して、はや三年が過ぎたというのに、わたしはいまだ帰路を見いだせずにいる。「第三十二代SHC速読チャンピオンのわたしが、なんたるザマだ……」 嘆いてもしかたがない。わたしは手近な葉っぱ紙をちぎって、万年筆をぎゅっと握る。ペン先から飛び散ったインクが、葉っぱの上をせっせと走りまわる。走り疲れると、ようやく罫線にそって座りこみ、肩でひいひい息をする。隣り合ったインクたちはもじもじ人見知りしてたけど、馴染んだ頃にはこう読めた。『図書館の森の探索をつづけて三年目。いまだ、“まだだれも読んだことのない本”は見つからない。本当にあるのだろうかと疑ってしまう。だが、世界中の本を読みおえてしまったわたしには、もう他にやるべきこともない。“まだだれも読んだことのない本”を読まずに生きることは、死んでいるも同じだ。わたしは、本をこの目にするまで帰ることはないだろう』 書いてあることはとても立派。でも、書いてる本人はとても涙目。目の前が滲んで、よく見えない。 わーわー、きゃーきゃー ぽたんぽたん零れ落ちてくる涙にインクたちが逃げ惑ったから、葉っぱ紙に並んでいた文字は滲んだみたいにぐちゃぐちゃ。「ああ、しまった……おい、おまえたち。いい子だから、さっきみたいに整列して座るんだ、ほらっ」 わたしは慌ててインクたちを宥めすかすのだが、パニックに陥ったインクたちはわたしの言葉を聞きいれない。寄り集まって震え、湿った所に近づこうともしやしない。 さすがに温厚なわたしも目くじらをたてて怒鳴りつける。「こらっ、おまえたち……いい加減わたしも怒ったぞ。言うことを聞かないおまえたちなんて、こうしてやる!」 万年筆をぶすぶす突きたてると、ふやけてた紙は簡単に破れて風に飛ばされてしまう。インクは哀れ、泣きながら散り散りになっていった。いい気味だ。結局、また日記を書けずじまいだったが、しょうがない。「ペンは剣よりも紙よりもインクよりも強いんだ、ふははっ」 ふんぞり返って高笑い。 もちろん、このあとケン(雄・三歳)に追いかけられて散々な目にあったのは言うまでもない。
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