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第6回チャンピオンofチャンピオンバトル小説部門 Entry5
耳元で誰かがそっと囁き、僕は目覚めた。それは、他の誰も決して目覚めることのない、僕ただ一人が目覚めるための時刻。僕は、横になったまま辺りを見回した。全てが、ただ、どこまでも続く白いスクリーンに覆われている。音楽が聞こえた。透明な鳶色をした弦の流れ。たなびいて、僕を呼んでいる。今聞こえるこの旋律は、なぜか懐かしいさでいっぱいだ。遠くに、赤いワンピースの踊り子が一人。深い海に漂うようなワルツで踊っている。知っている。流れてきたこの香りは、あの踊り子のものだ。僕は、体を起こし立ち上がった。踊り子の向こうに、雪の降る場所が見える。歩こう。歩いて、あそこまで行こう。遠くはない。それにしても、僕のいるこの場所の、この白の正体は何だろう?手を伸ばしても、決して触れられない。雲のような、光のような、この白。僕の白い靴は、この白い世界の中に溶けてしまいそうだ。僕の白いシャツは、いったい、本当に僕のものなんだろうか?踊り子の横を通り過ぎる。彼女の視線が僕をかすめて、空中に青い線を引く。その線の跡が消えていくほんの少しの間、僕らは微笑みあった。ような気がした。僕らは知らない同士で、ただ、この時、この場所に居合わせただけの二人。歩く僕と踊る君。本当の僕と、本当の君は、本当の世界では、きっと世界の果てと果てにいて、けど、今この時にはきっと同じものを見ている。空を巡る渡り鳥たちの風と、大洋を行く魚たちの流れ。百億の百億倍の魂が、キラキラ光る星の群れとなって、夜の空を流れている。だから、今この時の本当の僕が、憎しみの業火に焼かれる身だとしても、そして、今この時の本当の君が、敵意の牢獄にとらわれた魂だとしても、今はただ、全てを忘れ、見ていよう。咲く花を。笑う子供を。穏やかな恋人達を。めぐる季節を。繰り返される命を。この場所は、もう、雪の降る場所。消えていくのが分かる。僕の何もかもが消えていく。舞い落ちる雪の華が触れるごとに少しずつ。怖くはない。少しも怖くはない。ただ、ほんの少し寂しいだけだ。還るんだ。こうやってみんな還っていく。分かっている。最初から知っていた。ただ、今まで忘れていただけ。思い出す。なにもかも。そして、忘れていく。なにもかも。絶え間なく舞い落ちる雪の華が、消していく。あらゆる、全ての、全てを。白いスクリーンは、この場所そのものなんだ。ここは、僕が、そして多分、僕らが最後に来る場所。