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第7回チャンピオンofチャンピオンバトル小説部門 Entry4

牡蠣とミルク


「ほほう、立派だね、その牡蠣」
「そうでしょう?」
「栄養もあるんだよね。確か海の――」
「海のミルクですね」

「……のう、大将」
「ないだい、牡蠣さん」
「お客さんの前で何じゃが」
「私は構わないよ」
「その……海のミルクっていう言い方、どないかなりませんじゃろか。ワシ、ミルクより格下ですか?」
「え? そんな事ないけど、今さらそんな事言われてもなぁ」
「今さらって何じゃい! 牡蠣には牡蠣のプライドちゅうもんがあるんじゃ! どないしてミルクなんぞと比べられなきゃいかんのじゃ!」
「栄養価が高いっていう、類似点があるからじゃないかな」
「ワシら命張って皿に上がっとるんじゃぞ! それをあげなもんと一緒にされてたまるかい! ワシらの命の、血の結晶と、牛の分泌物如き――」
「いや、確かミルクの成分は血液に近い筈だよ」
「奴らのは、血ぃ言うても鼻血じゃ。歯茎からジクジク出る充血じゃ! ワシらのは心臓をぶち抜かれた時に吹き出す鮮血じゃ! 奴らの血には、男気がないんじゃ!」
「そりゃあ、ミルクを出すのはメスだしねぇ」
「それ見ぃ、男の血やない」
「でも君だって母親のミルクで育っただろう?」
「牡蠣は卵生じゃ! 無数に生まれた卵の中を勝ち抜いて、ようやくこのサイズにまで育ったんじゃ、なのに、なのに、海のミルクとは何事じゃ!」

「馬鹿野郎!」
「あっ、お客さん」
「な、なんじゃい、お客さん」
「海のミルクと言われて、それがどうした? 言いたい奴には言わせておけ。どんなにミルク、ミルクと呼ばれても、一口食べれば一食瞭然『なんだ、ミルクよりめちゃめちゃうまいし、栄養もある!』そう思われるように、揺らがぬ己を作り上げる事こそが重要じゃあないのかい?」
「しかし……」
「君は牡蠣である事にプライドを持っていると言ったな? そのプライドは、実のない誹謗中傷で揺らぐ程度のものだったのか? ああ? どうなんだ?」
「ワシは牡蠣じゃ」
「嘘をつけ! ミルクだろう!」
「牡蠣じゃ!」
「このミルク野郎!」
「ワシャあ、正真正銘の牡蠣なんじゃああああああっ!!」

「よし、よく言った」
「お客さん……」
「うん、立派だよ、牡蠣」
「大将」
「もう、大丈夫だね」
「ありがとうございます、お客さん。お陰で目から鱗が落ちました!」
「おいおい、牡蠣に鱗はないだろう」
「アッチャー、いっけねぇ!」
「アハハハハ!」
「ハッハッハッハ!」

「それでお客さん、ご注文は?」
「アサリのバター焼き」


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