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第7回チャンピオンofチャンピオンバトル小説部門 Entry6

良薬


 その街には小さな研究所がございました。研究所に付属した煙突のある実験棟で、所長は良薬を完成されました。良薬はその名の通り、あらゆる病気に効用があり、市民の願い「無病息災」を叶え、街に病人は居なくなりました。
 伝染病も癌も難病も回復し、病人も家族もたいへん喜びました。しかし、良薬も人間の老化を止めることは出来ませんでしたので、年老いた市民は老衰により死んでいきました。家族は年老いた肉親の死を悼み、悲しみました。
 市民の「不老不死」の願いを知って、所長は再び実験棟にこもられ、研究を進められました。しかし、生命体の老化は自然の摂理でしたので、薬でその進行を抑えることは出来ても、止めることは出来ませんでした。
 所長は、老化を抑制する良薬Uを発表されました。市民は、確実に二百歳迄は生きられるようになりました。
 更に熱心に研究を重ねられた所長は、魂と肉体を分離し、魂だけを新しい肉体に移植する技術に辿り着かれました。こうすれば、肉体の老化に関わらず、魂は生き続けることが出来るのです。
 当初は、他の臓器移植と同様に不慮の事故死を遂げた方たちに肉体の提供をお願いして手術が施されておりましたが、研究と技術の進歩により、事故の方々の魂も救うことが出来始め、肉体ドナーが居なくなりました。
 所長は実験棟に水槽を増設され、肉体養殖を始められました。魂の無い肉体は、水槽で養殖され、やがて充分な数の人工肉体が魂を待つようになりました。
 良薬、良薬U、魂移植、肉体養殖という研究所の技術によって、遂に市民の「不老不死」の願いも叶えられ、街の皆さんは、真に幸福な人生を歩み始めました。
 ところが、やがて市民の誰もが死よりも恐ろしい退屈に蝕まれはじめました。死の恐怖から離れて謳歌出来るはずの人生は、毎年ただの繰り返しとなりました。人生の経験値が上がるに従って、何事にも飽きてしまい、恐ろしい退屈が襲って来ました。そして自殺する市民もおりました。
 所長は実験棟に戻られ、魂リセット術を開発されました。魂移植を行う際に魂をリセットし、新たな肉体において、新たな人生を歩めるよう、魂移植に改良を施されたのでした。同時に肉体も細胞分裂から始める技術を開発され、水槽は不要になりました。
 そして、魂移植手術を各人の生殖に置き換え、人生の相対的な価値を高める為、不確実な運命や予想外の疾病等も加味され、所長は神になられました。


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