第9回チャンピオンofチャンピオンバトル小説部門 Entry5
差し出されたのは足だった。
恐らくはまだ年端のいかぬ少女の、その「足」のみが私の前へ差し出されていた。膝までしかない、足だ。それは臙脂に金の縁取りの上等そうなクッションに載せられ、じっとそこへ鎮座していた。少々野暮ったい黒色のストラップシューズを履かされ、細い足首とすらりとした脛を白い薄いソックスで包まれている。長いソックスは存在しない膝上までをすっぽり覆い、余った布を赤い細いリボンが蝶結びで纏めている。
私は彼に促されるまま、手を伸ばした。指先で触れると、柔らかく暖かい、人の肌の感触。手をかけるとずっしりとした重みが腕にかかった。確かに血と肉がこの細い足に詰まっているのだと、感じさせる負荷。足の表面にそって手を這わせる。脛の柔らかな膨らみ、その確かに張ったしなやかな筋肉の感触に意識がぼう、と定まらなくなる。
靴を脱がせる。ストラップのスナップボタンを外すと靴から足を抜き取る。ああ、と私は思わずため息をついた。なんて、美しい。 白いソックスに包まれ、薄く頼りなく世界と断絶されたその足先。 土踏まずのその、汚れを知らぬ曲線が例えようもなく美しい。その窪みに沿わせる様に頬を寄せると微かに甘い、消毒液の匂いがした。
リボンをほどく。途切れた膝の部分は半球を描いてつるり、としていた。ちょうど曲げた膝頭のように自然だ。ソックスは抵抗なくするすると肌をすべるように離れる。
皮が一枚剥けるように、現れた素の肌に鼓動が高鳴る。白くきめ細かな肌は光を放つかのようだ。すんなりと伸びた脛、細く華奢な足首、足先の薄い皮膚には青い血管が仄かに透ける。この上なく美しい足だった。私は我慢出来ずに唇をその柔らかな肌に押し付けた。痕をつけぬよう、ゆるゆると唇と舌を這わせる。その道筋へ唾液が煌めいてみえる。桜貝のような小さな爪の表面、ひとはけのエナメルさえ塗られていないなめらかな感触を人差し指の先でなぞって、それから舌先と上下の唇で確かめる。その小さな足の隅々へ指と唇。舌先とを這わせてゆく。そして足指を小指から順に一本ずつ口内へ含む。舌の全体、頬の裏側で指先を感じた。
夢中になっているうちにいつの間にか足の先が繋がっていた。黒い重たげなドレスをまとった少女が大きな椅子へ腰掛けてこちらを見下ろしていた。私は頭を垂れ、手の中の美しい足の、甲へとうやうやしく口づけを落とした。ああ、と少女がため息をつく。