第9回チャンピオンofチャンピオンバトル小説部門 Entry6
「痛たたた、腰が痛くて」
「ふむふむ、葛根湯をのみなさい」
「でも、二階から落ちたんですが」
「葛根湯は効くものだ」
「そいつは風邪の薬でしょう、きちんと看て下さいよぉ」
「仕方ないな、なら舌を見せなさい」
「いや、落ちて腰を打ったんですから、腰を看て下さい、腰を」
「いちいち注文の多いヤツだな。ふむ、これは手遅れだな」
「ええっ、だって落ちてすぐに来たんですが」
「いやぁ、落ちる前に来れば良かった」
「馬鹿野郎、ふざけるな!」
「ああー、痛い。近いからって藪医者に行くもんじゃあないよ。あれならおいらにだってできらぁな。ああここにもあった。痛たたた、ごめんよっ!」
「何かな?」
「腰が、痛いんで」
「ふむふむ、葛根湯をのみなさい」
「……また葛根湯だよ」
「しのごの言わず、葛根湯をのみなさい」
「いや痛いのは腰で」
「デモクラシーも立憲君主制もない、さあさあ! さもないと、口につっこんで踵で押し込むぞ!」
「分かった、分かりましたよぉ、ん、ぐぐぐっ、痛いたたた、うー、まずい」
「どうだ少しは楽になったか」
「なるわけ……いや、少し痛みが和らいだような?」
「そうだろう。気の動転している時は、まず何かを飲んで落ち着く事だ。普通の家であれば茶の一杯も出すところだが、生憎ここは医者であるからその用意がない、そこでちょうど沸いていた葛根湯を薄めて飲ませた、と、まあそういう訳だ」
「医者によってこうも違うもんかね、いちいち理にかなってやがらぁ……て、痛、痛、いたた、また痛くなって来ました!」
「どれどれ見せてみなさい」
「ここを、二階から落ちて打ちやして」
「ふむ、これは手遅れだな」
「ええっ、また手遅れですかい……あ、ひょっとして、ここへ来る前に藪医者に寄ったその分が?」
「いや、それぐらいは関係ない。落ちる前なら助かった」
「なんでぇ、同じ事を言ってやがらぁ。落ちる前が無事なのはみんな一緒じゃねえか」
「いや、一緒ではないぞ」
「へ?」
「お前の背骨、元々随分曲がっていたな。これが悪さをして、足の筋を押していたのだ」
「言われてみりゃあ、姿勢が悪いって言われたり、足が変に痺れる事があったなぁ」
「その時に治療をしていれば、どうにかなったのだが、二階から落ちた拍子だろう、完全に骨が外れて筋が切れてしまっているようだ。これはとても治せない、諦めて帰りなさい」
「ははぁ、なるほど分かりました。いやぁ、藪医者と名医ってのはやっぱり違うもんだなぁ!」