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第10回チャンピオンofチャンピオンバトル小説部門 Entry9

天国のような


 いや、それあんた、どうって言われてもさ。
「だから、似合ってると思うかって聞いてんだよ」
 いやいや、あのさ……あんたにそんな趣味があったとはね。普通さ、まあ、確かにさ、あたし言ったよ、セーラー服なんかいらねえって。でもさ、さすがに幼なじみがそういう協会の人とはさ。こないだ本で読んだよ、トランスベスタイトっていうんだってさ。
「うるせえよ、人を病気みたいに言うんじゃねえよ」
 あ、それ差別だー。特定疾患者に訴えられるよう。ていうかさ、すね毛は自分的にオッケーなんだ?
「お前、まじめに話し聞けよ。俺、ダメか?」
 ダメっていうかさ、こんなロマンチックな夕暮れの教室でさ、どうなのよ、私服の女子高生と女装の男子ってさ。わけわかんないよ。わかんないし、俺って自分で言ってる時点でさ。終わってるっていうか。
 あんたは同性愛なのか、あんたの心が女なのか。
「言ってる意味わかんねえよ。ただお前の制服が着たかったんだ」
 わかんないね。それはあたしが好きって言うことなのか?
「そうとも言える」
 なぜ、セーラー服を着る必要がある?
「知るか」
 そうだね。考えたらそんなことできないよね。あたしが馬鹿でした。はい、もう終わり。このことをネタに、一生あんたをからかうからね。あ〜、面白かった。卒業間際にいい思い出ができたよ、ありがとう。
「そういうお前だって」
 何?
「何で俺の私服を着たがるんだよ、言ってみろよ、理由を」
 いいじゃない。着たかったんだから。
「何で学ランじゃないんだ。男になりたいんじゃないのか」
 だからね。服着替えたくらいで、性別が変わるわけないでしょうが。何言ってんだろね、この人は。
「お前の着ているその服はな、よくそのへんの商店街の小さなブティックで売ってるような男女兼用の服なんだ。いつも俺を馬鹿にしていたくせに」
 いいじゃないの。着てみたかったんだよ。恥ずかしくて買えないし、こんな服。一体いくらなんだよ。
「お求めやすいお値段だよ」
 つっこまないよ。
「もしかしてお前も俺を……」
 何よ。
「いや、言うまい」
 言えよ。
「じゃあ、言おう。俺を好きなのか?」
 だったらどうなのよ。関係ないでしょ。
「いや、あるだろ。今の日本語おかしいだろ」
 そんなに言うなら、つきあってあげてもいいけどね。
「何か古いぞ、お前。古いラブコメみたいだ」
 てめえ。
「まあ、似たもの同士じゃないか。仲良くしようぜ」
 
 この変態を恋愛と言う。

※作者付記: 「男女兼用の服」、「お求め安いお値段です」は、松尾伴内のネタから。
「この変態を恋愛といふ」は、宮沢賢治からの引用です。




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