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第43回詩人バトル

エントリ作品作者文字数
1砂時計朧冶こうじ66
2狙撃された魂木葉一刀96
3夏の終わり香月154
4クラオセロ歌羽深空414
5ヒースクリフゆふな さき118
6イトべっそん194
7まあるい空気 その中で凜一219
8夏の終わりに相川拓也159
9花は実となり日向さち200
10サボテン早川狼223
11僕の目は見えない柳 戒人186
12day after day芦野 前530
13空の歌黒羽葵222
14盲情ながしろばんり338
15ありがとうさと302
16少年時代箱根山険太郎34
17ジラウさんがヒイヅル病院に入院した時の話ヨケマキル586
18(作者の要望により掲載終了しました)
19青い河大覚アキラ155
20オゾンと夜露とクリスタル紫色24号179
21希望の手ぶくろやまなか たつや267
22優しい嘘マリコ135
23ねぇ あなた102
24残像村上かおる236
25リリィイグチユウイチ510
26見上げるぶるぶる☆どっぐちゃん202
27スーパースター佐藤yuupopic1004
28携帯電話破壊マニュアルイタリアン・ラッシュ425
29告白爆弾空人764
 
 
 ■バトル結果発表
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エントリ1  砂時計     朧冶こうじ


さらさらと落つ
時と云ふ名の

逝きつ還りつ
唯 さらさらと流るるは

(記憶と云ふ名の)

銀灰の
鈍くくすんだ輝きの

(我と云ふ名の)

唯 さらさらと






エントリ2  狙撃された魂     木葉一刀


狙撃された魂が泣いている
まだその身に宿って居たかったと泣いている
凶弾に打ち抜かれたその魂は

今にも目を開きそうな汚れ無き美しい身体には
銃創の一つも残っていないのに
魂は言葉一つで打ち抜かれてしまう







エントリ3  夏の終わり     香月



それは、ほんの一瞬だった

君の手から、みんなの夢が放たれた

みんなの想いを、今までの努力を乗せて



カキーーーーーン



ほんの一瞬のできごと

夏が終わった


豪勢な設備もない

選手専用のバスなんてない


それはいいわけだけど


誰よりも僕たちは声を張り上げた


泣きながら


団長のエールがどこまでも届く



仲間たちへ

夢をたくして


夏はまたやって来る







エントリ4  クラオセロ     歌羽深空


にんまり笑うな 腹が立つ。
あんたなんか お隣行っておいで。

そう言って (そうさそう言った筈さ!)
出してやったらミイラ取りがミイラになって
暑いからって包帯とって 帰ってきやがった。

くらわせろ暑い直射日光
クラオセロ 白と黒の渋いレース
囲碁盤でオセロやってるあの子の気が知れない。

にやりと笑うな 腹が立つ。
あんたなんか 今度絶対倒しちゃる。

そう言って (そうさ私が言っただけさ!)
追い返したらヤゴがトンボになっちゃって
暑いからって殻脱いで 帰ってきやがった。

くらわせろ熱い光のストロー
クラオセロ 夏と秋の攻防戦
囲碁盤とにらめっこの爺ちゃんが縁側で……あ、なんでもないです。

ぐーるぐる蚊がバタバタバタ
かげろう2日でバタバタバタ
泳げないあの子がバタバタバタ

おぅいそっちへいったらいけないったら!

イトコの宮沢賢治の感想文。
コレ、どうとらえるかが問題。

くらわせろ小さな馬場チョップ
小さな高田の馬場チョップ。
倉オセロ 真っ倉で色が見えませーん!





エントリ5  ヒースクリフ     ゆふな さき


ヒースの崖
咲き誇る天命
やすらぎ知らぬ
夢ぬ中

ビーズ転がし
陽を受けり
ガラスのコップ
漂うのが死

飲み干し死んとは 苦しかな

どこか逢おゐや
二度とこない天命

そさ気色ごわるき大仰ロマンス
たゆたうは披露と疲労
あゝどうしよもなく高貴

あなたの死にかた
さすがに女の理想の偽り
幻想らしく 幽美


※作者付記:  最近「嵐が丘」にはまっていて、読み返してはヒースクリフにキュンときてます☆ 恨みと虐待の激しい人で、現実にいたらこの上なく迷惑だろうな。
 けれど「ありえない」美点があるのです。ヒロイン・キャサリンにどこまでも一途なのです。一生の間全ての人を憎みながらただ一人の女性のことだけを愛し、頑強でありながら精神を病み死んでしまうなんて。はかない。そしてありえない。
 どうやら女性が書いたと小説いうことで納得。キャサリンの気持ちになれば気分が良くなる少女漫画です。






エントリ6  イト     べっそん


どこかで誰かが誰かと想いあう。
世界はおっきくて、ぼくらはちっちゃい。
でも、つながってる。

時間は邪魔をする。
でも、時間が最後には洗い流してくれる。
信じてる。

距離をおいてみた。
今日から。

少し呼吸をととのえるために、
ぼくらは立ち止まった。

待ってる。
また、歩き出せる日を。
信じる。
ちっぽけなぼくらが出会ったことだけで、
運命だって。
僕らはまだ切れずにつながっている。

どこかで誰かと誰かが歩き始める。







エントリ7  まあるい空気 その中で     凜一


こうしている間にも

忠実に世界は闇へと向かっている


でも

君って云うファインダァを通した世界は

キラキラして見えるから

不思議だね



台風が持ってくるのは

雨や風だけぢゃ無くて

キタナイものや

コワイものや

セツナイものや

イロイロ

夜の街の明るい空を

くるくるくるくる

舞ってく


それがキレイに見えるようになったのは

台風大好きって

君が笑ったから


それから僕らは

部屋の中

窓を開けて

夏の儀式を見守ったよね


君と出逢って

ステキなもの

たくさん見つけたけど

やっぱり何より

君がいちばん






エントリ8  夏の終わりに     相川拓也


斜陽さす川べりの道
歩みゆく足に引きずるは
黒く長くのびたかげ

遠くに聞こえる挽歌の蝉の
過ぎゆく夏に弔いの声
変わることなき川の流れに
蜻蛉がふたり連れ立って飛ぶ

太陽は遠く西の彼方
秋を告げる風吹きはじめ
つなぐ手のない手が冷えていく

熱に冒された
陽炎のような日々は去り

斜陽さす川べりの道
歩みゆく足に引きずるは
黒く長くのびたかげ
ひとつ






エントリ9  花は実となり     日向さち


しかし
花は実となり
やがて種をこぼし
子孫を増やしていくものです
小学校で習いましたから
勉強は得意でしたから
はっきりと記憶しています

心もち桃色を呈した霧に
腕を押し込んでは抜いてみて
握った手に草花の頭頂部があったので
潰れた花弁を喉へ押し込みました

花の咲く姿を拒んでいました

遠い国からやってきた腰のくびれた果実は
今では珍しくありません
縦に裂くと出てくる無数の種子を見ると
霧の立ち込める空間に身を隠したくなります





エントリ10  サボテン     早川狼


背伸びして見た青空はどこかまだ遠くて
手をのばしても相変わらず届きそうとも思えなくて

君の後ろ 背中姿
相変わらず私には広すぎる

後ろを向いて 私に気づいて
何度心の中で叫んだだろう
このまま君を突き飛ばしそうになるんだ

きっとまだだめなんだろうな
まだそのときはきていない

何度自分に言い聞かせただろう
だれもそんなこと知らない

あぁ君にこの気持ちしってもらえたなら
何もかもどうでも良いよ

たとえ沢山の人に嫌われてもいい
ただ少しの人数でいい
大好きな人がいればそれでいい






エントリ11  僕の目は見えない     柳 戒人


 王様は何も着てない

 何も着てないのに誇らしげ

 子供が叫ぶ 

 「王様は裸だ」


 でも子供はきっとこの後ひどいめにあったんだ

 捕まって鞭で打たれたりしたんだ

 大切なのは見えないものを見ることだから


昔の人の顔つきの紙は

 1枚で人を一日働かせる

 2枚で服を脱ぐ人がいる

 3枚で人の命が救える


 その紙のために

 人生の半分以上が費やされる

 大切なのは見えないものを見ることだから









エントリ12  day after day     芦野 前


 小さなころは

 楽しいとか
 幸せとか
 嬉しいとか
 痛いとか
 悲しいとか
 
 それでもたくさんの愛をもらっていたから
 気持ちいいことの方が一つ、多かった
 天使のようにふわふわと
 夢の中に浮いていられた


 最近は

 受験勉強に疲れたとか
 やっぱり私偏差値全然上がんないしバカなんじゃないのとか
 なのに友達の英語が前の模試から十も上がってるよちくしょうとか
 彼氏から全然メールが来なくなってもう私たちダメなんじゃないのとか
 そういえば今年は海も花火も向日葵も見られなかったとか

 もう足の下、底なしの穴が続くばかりで
 私を体ごと引きずり込んでゆく


 明日の方向に自分の全体重をかけて
 それでも昨日までの自分は捨てられなくて
 重い荷物を引きずるように
 のっしのっしとこの坂道を這い上がる

 「あのころのように」 
 なんて言うようになったらもうおしまいだと思っていたけれど
 やっぱりこんな今だと愛がほしいよ
 「あのころのように」
 ……誘惑が耳元で聞こえる


 この坂道はどこまで続くかな
 てっぺんのリンゴの樹には幸せがたくさんなっているかな
 後ろの
 坂の底のリンゴはもう全て腐ってしまったから
 振り返ったらさよならだ
 
 自分に言い聞かせて
 また一秒一秒
 「今日からの脱出」を積み重ねていく






エントリ13  空の歌     黒羽葵


いつも望んでいたものが
この扉の向こうにあると
いつから気付いただろう
僕はまだ愛を知らずに語っていた
あの桜並木を越えて

君がいいよと言ってくれるまで
僕はここに居るよ
そしてこの鎖を解いて
君のもとへ旅立つんだ

この気持ちを歌に乗せて
この気持ちを風に乗せて
いつか君の耳へ届くまで
僕は歌いつづける
そしてこの空へ想いを放つんだ

いつも望んでいたものが
この扉の向こうにあると
いつから気付いたんだろう
僕らはまだ愛を知らずに語っていた
あの桜並木を越えて
あの青い空を越えて






エントリ14  盲情     ながしろばんり


たん、つか、とん
たん、つか、とん
たん、つか、とん、
たた、つか、とん

ワルツ
指先に
想いをば
委ねきり

わんと
本棚の
日本地図
引き出して

なぞる
三鷹から
下の道
羽村まで

都を越えて
徒を超えて
新狭山
熊谷市


利根川を
越えるころ
高崎猿
やってくる

トンネルを
抜けようと
雪はまだ
十日町

燕返し
信濃川
河口には
工作員

ぶん殴り
蹴飛ばして
君の住む
ところまで


海岸線
一直線
羽越本線
山形県

国道線
七号線
象潟が
読めません

背骨から
頭頂へ
五所川原
竜飛崎

あとはもう
ばらばらの
北海道
でっかいどう


松前藩
長万部
室蘭から
白老へ

札幌は
遠けれど
帰りには
よるとする

苫小牧
夕張で
メロンでも
お土産に

もうすぐだ
中富良野
君のいる
中富良野

行くならば
秋だよな
ラベンダー
嫌いだし

君想う
指先は
頁跨ぎ
時を越えて

たん、つか、とん
たん、つか、とん
ワ、ル、ツ
じゃ、じゃん。






エントリ15  ありがとう     さと


 夢を追い求めて
 前ばかりを見ていた
  
 地下室に残したままの
 正しき者の心の器は
 もうとっくに捨ててしまったと
 そう思っていた
  
 壊さずに
 捨てずに いられたのは
 夢中で海を 時の海を
 泳いでいたからだ
  
 自分で持っていたなら
 きっと夢のために
 それを手放して
 もうとっくに壊れちまって
 もうとっくにこの世には残っていない
  
 夢は時に大事なモノを見失わさせる
 諦めも必要だと教えられた
  
 それは
 自分がこの世で一人ではなく
 あんたが居ると言う事
 それは
 心の器はまだ此処にあり
 壊れちゃいないと言う事
 それを
 あんたは証明してくれた
  
 だからあんたに言う
 至極 シンプルに
  
 「ありがとう」





エントリ16  少年時代     箱根山険太郎


下駄で弟を殴り帰宅
親父の一喝で撃沈

安いギャグで爆笑
息ができなくて昇天






エントリ17  ジラウさんがヒイヅル病院に入院した時の話     ヨケマキル


僕のおじさんであるジラウさんが
ヒイヅル病院に入院したので
お見舞い行きました

その病院うちの近くにあって
昔からよく知っている病院でした

ずっと前友達とふざけてそこの待ち合い室に
爆竹投げ込んだりした事もありました

まさか誰かがその事をおぼえてはいまいか
少しそんな事考えました

お見舞いに行ったのは
土曜の昼下がりでした

裏に沼みたいな所あって
空気がぬめりんとしていて
患者さんが息抜きにそこで釣りやったりするんです
もちろん何も釣れやしない

病室に着きました

ジラウさんいつもと変わらない顔で
「よく来たなあありがとね」と言いました
そして
「昨日ねえ裏の沼でねえものすごくでっかいねえ魚釣ったンよ 
 廊下にあるから見といで」と言いました

ボクは廊下に出ました

休憩室みたいなとこに水槽置いてありました

おっきな虹色の魚泳いでいました

これがジラウさんの釣った魚か
おっきいなあ
と思って触ってみたくなって手え入れました
激痛が走りました

あ、これは水じゃないなあ
瞬間にわかりました

すぐ病室に戻りました

「おじさんひどいじゃないか手が溶けてしまうよ」と言いました
「ははははは」
おじさん笑いました
とっさにおじさんの首絞めました

あっという間におじさんはぐたりとなりました

逃げ出しました


それからボクはあの病院に近付いてません
昔爆竹投げ込んだ時も半年くらい近付かなかった


それよりあの日から
沼の異臭が両手にこびりついたままなんです






エントリ19  青い河     大覚アキラ


あの人が
死んだ
という報せを聞いて

青い河を小さな舟で
ゆっくりと
ゆったりと
流されるよに下ってゆく
あの人の姿が目に浮かんだ

櫂もなく
舵もなく
しかし
流れに
逆らうでもなく
呑まれるでもなく
ただ
ゆっくりと
ゆったりと

今頃あの人は
永遠という名の青い河の
半ばを過ぎたあたりだろうか

ゆっくりと
ゆったりと
還るべきどこかへ
還ってゆくがいい


※作者付記: 故・中島らも氏に、この詩を捧げます。






エントリ20  オゾンと夜露とクリスタル     紫色24号


透明なものにも濃淡があって
それが波を創る 風を創る
歪んだ視界を創る。
透明はあらゆる色を呑んで
吐き出して
無色のポリクローム、
さり気ない実像。
透明に阻まれて
透明と融和して、
透明は透明ゆえ
世界を不透明に導く水先である事を
容易に悟られないでいる。
だから透明はきれいで汚れている。
きれいで汚れているからこそ、
この世界は愛おしむに値すると
透明は指し示しているかのよう。 






エントリ21  希望の手ぶくろ     やまなか たつや


もう
手ぶくろを編み始めています
ちょっと気が早いかなと思いつつ
あなたのために編んでいます

昨夜も今夜も
一日に一目ずつ編んでます
ちょっと気が長いかなと思いつつ
あなたに手渡す瞬間を思い描いて

永遠の別れなんて、
ないと思うんだ
だから
いつかあなたと再会出来たら
その時あなたに
この手ぶくろを渡すんだ

永遠の死別なんて
ないと思うんだ
だからあなたのためなんだ

生涯あなたを思い出しはしないよ
だって
片時も忘れはしないから
思い出す暇がないじゃないか

永遠の不幸なんて
ないと思うんだ
ちょっと気がおかしいよとか言われつつ
けれど
今夜もあなたのために
手ぶくろを編んでいます







エントリ22  優しい嘘     マリコ


優しい嘘をつく人だった

思い出は水のように滑らかで
何の疑いもない

触れ合う風は涙まじりで
雨上がりの匂いがした

瞳に映る景色はまぶしすぎて
二人の世界を夢に変えてしまう

すべてが嘘で
すべてが真実

そんな恋は
なかなかできるもんじゃないね

あなたの優しい嘘に
わたしはずっと守られていたんだね






エントリ23  ねぇ あなた     凛


ねぇあなた
ごめんなさいって言うけれど
ねぇ
私は怒っているのではないの
悲しいの

だから

ねぇ あなた
ごめんなさい では
埋まらない

ごめんなさいでは
埋まらない
大きな 大きな
悲しいは
何で埋めたらいいのかしら

ねぇ あなた






エントリ24  残像     村上かおる


放課後のハンバーガー屋で
神崎に声をかけられた
振り向いた拍子にコーラをこぼし
笑いながら
笑われながら
三人 で床を拭いた
若い人はいいね。て
おじさんは、これから仕事だよ。て
冗談をいってすぐに店を出た
駅へと向かったが
足が重い
バイトをさぼり映画館に入った
苦手なホラー
大嫌いなスプラッター
キャーキャーうるさい
カップルの後ろで
腕がちぎれ
腹が裂け
首が飛ぶのを
ぼんやりと眺めていた

それでも
頭の中から消えなかった
勝ち誇ったような
神崎の笑い顔が
肩を抱かれ
はにかむ君の笑顔が
どうしても 消えなかった






エントリ25  リリィ     イグチユウイチ


スピードスターが見る夢は、
進化した 銀色のハイウェイなんかじゃなく、
トウモロコシ畑を貫いて、地平線まで続く スーパーストレート。

時速180マイルで、落ち葉の紅を思い出す。
墓場のように静まった丘は 40年前と同じ 秋の夕暮れで、
細く 薄く 教会の上に棚引く 雲の彼方を眺めては、
また 世界の果てを思った。


スピードスターが見る夢は、
季節を告げる北風に 揺れる白い花。

この両手から こぼれた百合が、地に落ちるまでの 一瞬を、
とても とても 長く感じた。
百合の花は 冷たい匂いがした。
その花弁に 涙のように留まった滴を、美しいと思った。
暮れかけた空高く、十字架の影がそびえていた。
時速190マイルでも、鐘の音が聴こえた 気がした。


スピードスターが見た夢は
少しずつ、ほんの少しずつ、遅れ始めている。離れ始めている。

ゼロ コンマ ゼロ ゼロ イチ
ゼロ コンマ ゼロ イチ
デジタル カウンターが、ゆっくりと 光の速さを失っていく。
エンジンは、まだ 加速していく。


スピードスターは、亡くした妻を 今でも愛している。
空を見て、海が近いと知る。
お前を乗せて どこまでも 行けたら良かった。

いつか 追い付く日が来たら、
祝福の鐘を鳴らしてよ ハニー。
ささやかな ファンファーレと共に。





エントリ26  見上げる     ぶるぶる☆どっぐちゃん


ベタベタと貼られたポスターの間を抜けて
ネオンサインの間をすり抜けて
高速道路を見上げる
何も見つからない

女達は川から上がり
水に濡れた服を脱ぎ始める

高速道路に昇り
見上げる
道路には黒電話が散乱している
空には輝く星ばかりで
何も見つからない

行き交う車はばきばきと
黒電話を踏み潰し
女達は向こう側へと渡っていき
音楽が聴きたいなあ
ばきばきと踏み潰された黒電話の
欠片が鳴らすベルがじりじりと
辺りに鳴り響いていて
もう少しで音楽






エントリ27  スーパースター     佐藤yuupopic


あの三軒茶屋の晩のことだ。
彼等がミニアルバムを出した記念の
所謂「レコ発ライブ」てヤツ。

そう、
発作的にあなたに電話してしまった晩だよ。
立場を悪くしてしまったとしたら今でも申し訳なく思っている。
考えなしで、ごめんね。

それに、
わたしも電話口の向こうに、
(もうすっかり女の子らしくなった、かつてはあんなに小さかった、)
あの子の声、
聞いて
(この腕で、も、一度抱き上げたい、どうか。なんてね)
酷くかなしくなってしまったしね。
でも、
そんなことじゃ消し飛ばないくらいの
すごい星、見つけたこと
ど、してもあなたにも教えてあげたかったから。


(怖かった。
 わたし
 ただ、
 震えていた、)
新しくも古くもない
未だかつて耳にしたことのない音
本当に本当なのに、夢の中みたい
全然実感わかない
けど
たしかに
そこにいたの、
わたし、
(熱帯びた空気、粘るよ、に、からみつく
 身体の芯、溶けだす、もう、液体になる、
 寸前
 飲み込まれる
 気、
 緩めちゃダメ
 全部ッ、
 ビールの泡みたく吹き壊されてしまう。
 はじめからなかったみたく跡形もなく、
 わたし、消し去られる。)
ちっとも泣きたくないのに。
「何モノも、わたしを、わたしの世界を、変えることは出来ない」
はずなのに。
彼が、あの歌がそう云ってたのに、
変えないで
こんなに簡単にわたしを
外から
圧倒的に
お願い、
変えないで、
涙、
止まらなくって
自分と
世界との境目を
わたしとわたしじゃないモノの境界線上ギリギリ、
の場所で
輪郭、
失わないよ、に、踏みとどまるだけで、
わたし、その場に
立っているだけでやっとだった。
一瞬と永遠が混濁
の、
四十五分間。

音楽、
て怖い、

初めて知った。
違う、
思い知らされた。

彼等は

本物の

星だ。

(ちょっとやそっとじゃ消し飛ばないくらいの
 すごい星、見つけたこと
 ど、してもあなたにも教えてあげたかったの。)


そう、
ビートルズの時代に生まれることが出来なかったこと、
わたし、
ずっと悔やんでいたけど
その理由、やっと生まれて初めて解ったよ。
身体の心の真ン中に、すとんと落ちる感覚
(キた
 そう
 これ。)
十代のジョンとかポールとかじゃなしに
彼等に出会うように、
この時代で彼等に出会うように、
はじめから決まっていたんだと
思うではなしに気づいた


どうか、
わたし、
心臓抉るあの鮮烈な光の中へゆきたい。
容赦なく瞼に突き刺さるあの光の中へゆきたい。

(違う。)
あの光になりたい。

(もっと違う。)
そう。
わたしも。
あの光に。

(なる。)





エントリ28  携帯電話破壊マニュアル     イタリアン・ラッシュ


テーマ曲は「展覧会の絵」にしとこう
意味はないけど荘厳な感じがするならからそれでいいのだ
でももちろん口ずさんだりしない。頭の中だけでかける
誰かに聞かれたら恥ずかしすぎ
歌ってると馬鹿だと思われるから

新しい携帯はきちんと用意しとこう
屋上から携帯を投げ捨てるというだけでも暴挙なのだ
代わりもないのに自由を得るために空に向かって携帯を放り投げるなんて
ドラマの見過ぎで精神年齢低すぎ
それじゃあ投げた後で後悔するから

投げ捨てる場所も考えとこう
もし闇雲に投げて誰かに当たったらそれはもう殺人なのだ
自由だなんだってなにしてもいいって訳じゃないしだいたいストレス溜まるでしょ
格好つけ過ぎは格好悪すぎ
下に誰もいないのをよく確認しとこう

そうして僕は携帯を屋上から放り投げ
粉々にして
ちょっと「ヤッ!」とか言ってみたりして
隣のビルの屋上に誰もいないのを確認してからガッツポーズしてみたりして
新しい携帯の電源はもうちょっと切ったままにして
十五分くらい仕事をサボって昼寝してやるのだ


※作者付記: ごめんなさい。さっき送った分なんか「第45回」とかで出しちゃった気がするんで再送します。前送破棄でよろしく






エントリ29  告白爆弾     空人


彼女は 僕が そういう気持ちでいることを きっと知らない
彼女は いつものように 涼しそうな顔で 僕に笑い返す
彼女は 僕の出す 声の裏まで 見えていない いや
見ようともしない それは当たり前だ
彼女は 僕がそういう気持ちでいることを きっと知らないから

僕の そういう気持ちは 少しずつ 膨らみ始め
僕の 胃袋の中で 爆弾に 変わっていった
純粋は 腐ってしまうと 手のつけられない 危険物になる
僕の 喉は開き ヌラヌラと濡れた食道のカタパルトは
いつでも発射OKと 欲望の汁を垂らす

僕に 気のない彼女
僕が こんなに想っているのに わからないのか?
鈍感な女め
僕の頭の中で毎日
どんなことされてるのか 知らないだろう?
そのスラリと伸びた脚 ミルクを溶かし込んだような肌
塞ぎたくなる口 イルカのセビレに似た 鎖骨の曲線
汚いものを握らせたくなる 薄い手の平 甘えたがる顎
そういうもの全部 僕の
脳みその
しわの
間に
差し込んで
微弱な電流とともに
体の末端まで行き渡らせる快感
できることなら この手のひらに
君のやわらかく押し返す弾力と 心地よい重みを感じたいのだ

僕の 喉の奥に控えた爆弾
こいつを発射させれば 君に決定的なダメージを与えられるだろう
きれいにみえる? まさか
それは男の欲望にまみれた エゴイスティックな汚物だ
純粋なんて 顕微鏡で探しても見つからないよ
どうせ その爆弾の煽りを食らって 僕も死ぬんだ
死んでしまえば 君の白い肌が
こわばった獣の皮とこすれる音を 僕は聞くこともないし
甲高く湿ったソプラノも 生臭い吐息も
僕は 知らなくて済む それでいい それでいい

僕は君が好きだ 僕は君が好きなんだ
ほら? 困るだろ? 困った顔しろよ
もったいつけるんじゃない
すぐに返事しろよ うつむいたって何の解決にもならないんだよ
ほら 今度は君の告白爆弾で 僕を殺す番だ









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