QBOOKSトップ

第80回詩人バトル

エントリ作品作者文字数
1TASTE of CHAOS矢凪祐273
2何かの本を書いていく。僕は本を読む。霧一タカシ313
3偽ポジティヴ・ループ柿坂鞠402
4タイムサービス桜はるらん472
5沈黙トノモトショウ0
6アイデア紫生58
7オレオ大覚アキラ454
8思い出の君空人589
9The School Trilogy ヨケマキル1002
102001.9.11氷雨水樹253
11kTsu-Yo138
12ゆらゆらの街で。21CB383
13Dearestkikki273
14ディープスロートぶるぶる☆どっぐちゃん1100




 


 ■バトル結果発表
 ※投票受付は終了しました。




掲載ミス、送信時の文字化けなどございましたらご連絡ください。
その他のバトル開始後の訂正・修正は受け付けません。
あなたが選ぶチャンピオン。お気に入りの1作品に感想票をプレゼントしましょう。

それぞれの作品の最後にある「感想箱へ」ボタンを押すと、
その作品への投票ページに進みます (Java-script機能使用) 。
ブラウザの種類や設定によっては、ボタンがお使いになれません。
その場合はこちらから投票ください
感想箱




エントリ1  TASTE of CHAOS    矢凪祐


言葉を探すのに疲れた
上手い表現が見当ら無い…

ガラクタばかり掻き集めては
美しく見せようと必死になっている

飾り立てる必要など在るの?

「ありのまま」で居たいと願えば願う程
嘘吐きは増えて
極彩色の羽根を欲しがる

曖昧なイメージが充満して
倒れそうになるのを必死で抑える

この両足で後どのくらい立って居られる?

渦巻く光の外に弾き飛ばされる
もう抵抗するのにも疲れた
悪足掻きは止めよう

少し頭を冷やして
いいえ、私はいつでも正常。

傷痕が疼く
掻きむしればその大きな裂け目から
綺麗な蝶が舞い飛ぶ

真実なら嘘みたいに教えて
最悪の嘘ならそれが真実でもいい

掻き混ぜたスープの味はどう?





エントリ2  何かの本を書いていく。僕は本を読む。    霧一タカシ


いろいろな映画を読ませる。
僕は本を読んでいく。
僕はいろいろな映像を観たんだ。
僕はいろいろな何かをしていく。
いろいろな本を読んでいく。
本を読んでいく。
壊れていく本を読まない。
僕は本を書いていく。
いろいろな絵を描いていく。
本屋の本を書く。
いろいろな絵が何かを描写していく。
本屋の漫画が壊れる。
僕は何かを見ていく。
僕はいろいろな映画の本を書いていく。
僕は映画を観たい。
僕は映画の漫画を読んでいく。
僕は何かの本屋を壊す。
いろいろな映像が何かを伝える。
いろいろな本屋が何かをしていく。
僕は壊れた本を買わない。
いろいろな何かの本を書いていく。
僕は勉強して何かを書く。
何かが本を書いていく。
いろいろな漫画の本を戦いに使う。
本を売る人を書く。







エントリ3  偽ポジティヴ・ループ    柿坂鞠


一時的なモノだから
悪いことなんて

今も一時的なモノだから
無理やり楽しく思わなくていい

魂とかあるなんて解らないけど
この世にあるものすべて
あなたのために用意されたもの

世界はあなたを中心に回っている

作り上げよう
Your own world

今のあなたを感じること

どんなことでもいい
それを良い・悪いの天秤にかけずに
そのままを感じること
それが自分を受け入れるということ

「今」=一時的な時間
「一時的な時間」=永遠
「今」=「永遠」

違うよね

こんな方程式ぶち壊して
今は一時的
一時的な今

あなたは一時的にそこにいて一時的に物を食べ悩み笑いテレビをつけて
一時的な時間を次々と消化している

一時的に好きになり嫌いになり寂しくなりネットを見て
メールを待ち携帯とにらめっこ
メールが来たら嬉しい一時的に
メールが来ないと悲しい一時的に

なんで嬉しい一時的と悲しい一時的は
時間の長さが違うのだろう

おなじにする方法がたったひとつだけある

(この詩の頭にもう一度戻る)







エントリ4  タイムサービス
    桜はるらん


10月のある日の夕方
町で偶然あなたを見かけた
相変わらずの格好だね
黒い無地のトレーナーに
膝が破けているジーンズ

あなたが
いま何をしているのか
すぐにわかったけれど
声をかけるのはやめておくよ
またケンカになると困るから

あなたの左手には小さなビニール
ちょっとだけのぞいて見えるのは
買ったばかりの整髪剤のスプレー缶
黄色い花柄のバンダナの下に隠れているのは
さっき起きたばかりのクシャクシャの髪の毛

あなたに気づかれなくてよかった
いつもなら行かないスーパーのタイムサービス
今日だけコーヒー目当てにあと5分の待ち時間
パラソルのベンチの下で独りアイスコーヒー
飲んで通り過ぎる人たちを眺めていたの

そうしたら偶然あなたが出て来たんだ!
あの細い路地裏からドラッグストアへ向かう道
懐かしさでテーブルの下の膝がガクガク震えた
だけど声をかけるのはやめておくよ
またケンカになると困るから

いつもなら行かないスーパーのタイムサービス
あなたを見かけたことを誰かに話したかった
でも誰にも言えなかった、知られたくなかった
「コーヒーなんで忘れたの?」って家の人に
不思議がられた、あの日のタイムサービス








エントリ5  沈黙    トノモトショウ
































エントリ6  アイデア    紫生


木は森のなかに
鬼は魂のなかに
君は群のなかに
かくされている

なのに人ときたら
閃きのなかに
かくしておくのが
いちばんかがやく





エントリ7  オレオ    大覚アキラ


 おれを
 崇めよ
 讃えよ

 おれを!
 おれを!
 このどうしようもないおれを!
 この可愛らしいおれを!
 このほろ苦く甘いおれを!


  黒い円盤状の物体に乗って
  この世界にやって来たおれは
  この黒い円盤状の世界の
  王になることにしたんだ

  黒い円盤状の物体と
  黒い円盤状の世界の
  間には白く柔らかく甘いクリーム


 おれを
 憎めよ
 呪えよ

 おれを!
 おれを!
 この情けないおれを!
 このいじらしいおれを!
 このほろ苦く甘いおれを!


  ほろ苦い絶望の間に挟まって
  隠れている甘い嘘

  ほろ苦い絶望だけでは
  とてもじゃないが不味くて食えないが
  甘い嘘と一緒だと
  不思議と美味いんだなコレが


 おれを
 食えよ
 愛せよ

 おれを!
 おれを!
 この破裂しそうなおれを!
 この墜落しそうなおれを!
 このほろ苦く甘いおれを!


  黒い円盤状の世界の上で
  おれは風に向かって立っている
  ほろ苦い絶望と甘い嘘を
  口いっぱいに頬張りながら
 
  おれは
  おれを
  すべて肯定する





エントリ8  思い出の君    空人


見渡すかぎり 荒れ果てた土地
名前も知らない 茶色の草が
風を受けながら 何度もおじきを繰り返している
地平線の彼方まで
遠くの空には いくつもの雲が かたつむりの速度で
右から左へ

台風の後のフェーン現象
膨張した夏風が 僕の足元をサーカスのように潜り抜ける
思い出をたどっていたら
ついにこんなところまで来てしまった

風の音 砂埃の舞う音
耳の近くで ボオボウと鳴っている
僕を乗せたバスは カゲロウとともに消えていく
排気ガスのにおいがする

返事はなくてもいい と思いながら
君に手紙を送りつづけていた
でも それも終わりだろう
ここには ポストがないし
もう 伝えることもなくなった

人の記憶なんて そんなものだろう
どんなに深く刻んだつもりでも
だんだんと 色彩が失われ 輪郭がぼやけ
イメエジが薄くなり
やがて やがて 必要のないものになる
自らの意思とは関係のないところへ 行ってしまう
あのバスのように

白く光る道をしばらく歩くと 十字路に出た
右へ曲がるのか
左へ折れるのか
まっすぐ進むのか
それとも
思い出を抱いて
いつまでも ここで立ち止まっているのか
あるいは 思い出をさかのぼろうと
来た道を引き返すのか

思い出は死んでいくんじゃない
思い出すたびに息を吹き返すものだ
そうつぶやいてみたところで
君に問うても 答えてくれるはずはなく
そのイメエジすら 曖昧になっている始末

あの時の僕が
まだ
心の奥底で
汗をかきながら悔しがっている








エントリ9  The School Trilogy     ヨケマキル


1

死臭が真空に封印された午後の視聴覚室
十七歳の陰茎は緩やかに剥がされて
自殺者の血筋の背信の徒に委ねられたそれは
やがて夜叉や羅刹のものとなる

ゆくもかえるもゆめゆめし
貧僧よりも浅ましき

恐死症のビードロ少女は泥濘のソシオグラムに溺れ

白む
そして人は
しろしろと
ゆれました

我は有財餓鬼である
止まれハリガネでグルグル巻きにすればよい
錯綜する痛みの韻致

ヒッパルコスの月が見える
今宵は氏神際であるので




2

うすくれた本のページ

ガラスの雫でめくると

誰も知らない雨のにおい



ここは時間の下のユレクル水族館
宇宙と背中合わせで


世界中がだまりこくり
聞き耳をたてている

コトリ コトリ


「ヒマワリが死んだのです。」

「でもここには水があります。」

「もう水は必要ないのです。」

「ではヒマワリの記録映画を上映しましょう。」

「ありがとう。」





暗転




<死んだヒマワリの記録>




死んだヒマワリ
青に溺れゆらゆら
ゼリー状に溶け出し
水槽をめまいがぐるぐるに満たす
急速に水は解放され
せきを切ったように溢れ出す



エンドロール



すべての記憶は反転
世界とともにふわふわになる



ここは時間の下のユレクル水族館


カラカラと映写機の音だけが響き



だれもいない




3

午後の陽だまり実験室で///あの死の匂いのね

美少女で生徒会長で詩人の灰野アミルは///
本人はどう思っていたのかしら?

自殺した///死を獲得したのね

死体は校舎の端っこの焼却炉で///しめやかに

焼かれました///厳かに

ああ あんな綺麗で頭がよくて誰からも羨ましがられていた彼女が
よりによって自ら死を選ぶなんて
イタタマレナイワ
なあんて同級生のA子さんB子さん
ちょっと嬉しそう

その頃灰野アミルは深海の試写室で一人
「ギラルの黒煙突」という映画を観ていた

ギラルの廃工場にある煙突をひたすら映し続けた映像が
2時間半ほど
その後銀幕にはこんな文字が
彼女は誰にも内緒でショウジョバイシュンをしていました
ある一人のお客につきまとわれ脅迫され
仕方なく死を選びました

ではでは彼女の火葬をはじめましょう
ギラルの黒煙突からは
灰野アミルの肉体を焼いた煙がモクモクと天にのぼっていきました
その煙を見ながら
ああ こんな綺麗で頭がよくて誰からも羨ましがられていた私が
よりによって自ら死を選ばなければならないなんて
イタタマレナイワ
なあんて
ちょっと悲しそう

神サマ 
睡眠薬をフリスクのベリーミントに変えてください。


ではみなさん
900年後にまたここでお会いしましょう
ごきげんよう





エントリ10  2001.9.11    氷雨水樹


忘れられぬ記憶が
寄りかかる時
本当にこれで良かったのか
時々、悩む事がある

思想の変わった街に
「人を信じる」という
単純だけど難しい事を
笑顔で実行できる人が
減ってしまったような 気がする


ゆっくりと空を仰ぐ
継ぎ目のない空にも
人は線を引こうとする

大地には天をも貫く壁を築き
大気には猛毒を撒き散らす
瞳に映るは、絶望の塊
脳裏に過ぎるは、世界の終焉

鰯雲はゆったりと空を泳ぐのに
私達は動きすら間々ならない


だけど信じよう と思う
忘れられぬ記憶から
ゆっくりと立ち上がる姿を
同じ映像の中で視た時
人もまた
希望を胸に焼付け歩き出すのだと





エントリ11  k    Tsu-Yo


群青の森から
逃げてきたものたちを
ひとつずつ捕まえる
白くやわらかい部分に
サインペンで名前を書き込み
(神聖なものはすべてKではじまる)
ありふれた雑踏の中へと
放り投げていく
グラスのふちでは
たくさんの人々が
あやふやになっている
夜に怯えて目を閉じた少年が
目蓋の裏で
最も深い暗闇に気が付く






エントリ12  ゆらゆらの街で。    21CB


マイナス温度のこの街に
今日もアクマがやって来る。

さがすあの娘のスィートポテトは
麻薬混じりのママの味。



あいつは今でも歌ってる。
街はずれのライブハウスで。

罵声と冷やかし受けながら
ギター片手に歌ってる。



そういやこの前この街に
ソープの店が出来たんだ。

駅前しけたおっさん二人が
せっせこ客引き笑えたよ。



いつも心を探してた。
アクマに先に取られぬように。

いつも心を逃してた。
アクマの誘惑誘われて。



でっかいフラスコ持ち出して
そこに指輪をぶち込んで

10分間沸騰させたら
君の面影浮かんだよ。



近道していたあの路地裏は
もう無くなってしまったんだ。

あの工場の排水の色は
子供ながらにヤバイと思ってた。



さがすあの娘のスィートポテトは
麻薬混じりのママの味。

あいつは今でも歌ってる。
街はずれのライブハウスで。



いつも道に迷ってた。
アクマのヤツが手引きしてきて。

いつも心を探してた。
手の鳴る方へは行かないよ。





エントリ13  Dearest    kikki


傷が開いて閉じて
開く
花は開いて枯れてばらばらになって
落ちて
つぼみになる

イエス・キリスト
仏陀
アラーその他諸々
自然の理に反した存在は
人々の希望の光

空は空のまま
海は海のまま
川は河口に死に急ぎ
陸は年に数ミリずつ移動する
生き物は生き返らない

どうして満ち足りないだろう
そうして生きてゆくんだろう

公園には太陽の光とたわむれる
子供と広場と風と
想い
夜にはからりと消えて
電灯の孤独が始まるだから君はだから
音楽を奏でるはずなんだ今ここで
悲しいだけじゃない音楽を
そうして生きてゆくんだろう君は死にながら君は殺しながら
泣きながら
いつまでも満ち足りないだろう
生きてゆくだろう







エントリ14  ディープスロート    ぶるぶる☆どっぐちゃん


「まだロックなんて聴いてるのか?」
「IPodでシャッフルしてたから」


スクランブル交差点には二人の男が立っている。ライト兄弟だ
ライトとレフト
明け方になり白々と闇があけていくその静寂の中を、ライトとレフトは並んでアパートに帰る

「こんな絵、頼んでないよ」
楽園
廃墟
花園
造花

本当
ダンス
芸術
「こんな絵、頼んでないよ」
「そうですか」
背の大きく痩せた黒人の男が大きなキャンバスを持って道に出る
片手を器用に挙げてタクシーを待つ
「それ、壊したら」
「それも良いかもね」
ブロンドの運転手に促された男はバキバキにキャンバスを壊してタクシーに乗り込む
タクシーは街をぐるぐる回り続ける
楽園
廃墟
花園
造花

本当
ダンス
芸術
タクシーは街をぐるぐる回り続ける
メリーゴーラウンドに乗った女の子
ビルから飛び立つ女の子

タクシーは街をぐるぐる回り続ける
「眠くなっちゃった」
タクシーは突然止まる。適当に金を受け取り適当にシートを倒して、ブロンドの運転手は寝てしまう
絵の中のキリストと太陽王 尊厳王 勇猛王 失地王
「たいしたことは、ないね」
シルクハット
アクティブスピーカー
フェンダーギター
ハイウェイで黒いスーツの女が叩き付けた、ギブソンSG

ロンドン・コーリング

「どれも安物だよ」

フラン ドル ポンド 人民元

じゃらじゃらとスロットマシーンからコインがあふれ出す。じゃらじゃら。じゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃら。



「とりあえず八十人くらいキャラクターを作っておけば良いんだろ! そうすればどうにでもなるだろ! 老若男女、善悪合わせて八十人も居れば足りるだろ! イケメンと美少女と萌えキャラとあとなんだ、無冠の帝王か? 綺麗だったけどぼけちゃったおばあちゃんか? 酔っ払いの親父に頭を灰皿で殴られる世界を呪っているガキか? そしてそれで友情か? あとはゆるキャラか?」
「そんなに興奮しないで下さいよ。このミニカー高かったんだから。ちゃんと走るんですよ」
「あとはなんだ、ショタか、美初年か、そんでもってローションもつけずにセックスか? はははは、超人的だなおい! とても真似出来んなあ!」
「本当に発想が貧困になりましたね」
「それであれか、なんか都会の孤独なOLか? 金持ちの未亡人か?」
「金を返して下さいよ」
「あとは動物か? 動物と子供の触れ合いか?」
「昔のあなたと今のあなたは違うんだ」



「どれも安物だよ」

フラン ドル ポンド 人民元


じゃらじゃらとスロットマシーンからコインがあふれ出す

じゃらじゃら

じゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃら