エントリ1
-スイマ- 3737☆★
水にぷかりと浮かぶ海月(くらげ)は何を思うだろう。
程よく揺れるゆりかごに?
それともただの死地?
睡魔は不意にやってきて、
沼地にいるような感覚だ。
まるで水魔と呼ばれるニンフたちが、
手をこまねいているみたいに、
その中に引きずり込まれそうになる。
ゆらゆら揺れる。
きっと死んだ先の世界もこんなのだろう。
思わず怖くて空を見る。
空にぽっかり照らす朧月、あれは何を思うだろう。
やわらかな雲の毛糸に包まれる?
それともただのスモッグ?
睡魔は不意にやってきて、
それへと昇る感覚だ。
まるで水魔と呼ばれるニンフたちに、
いざなわれているみたいに、
背伸びをして浮き足立ってしまう。
ゆらゆら揺れる。
くらくら暮らす。
やがて、ゆらゆら、くらくら過ごすうちに
きっと睡魔がやってきて、
きっと水魔に食べられて、
あとは真っ暗くらの蔵之助。
海月も月も教えないけれど、
静かに、静かに漣(さざなみ)はおしよせる。
白くはかない泡沫(うたかた)が、
足をすくって転ばせて、
あとに残るは白いもの。
わたしを作るひとかけらの骨。
作者付記:眠たくて仕方ないときに読めば、きっと格段に眠くなります。
小説専攻しておいて、たまには詩でもと書いてみました。
エントリ2
カウントダウンは必要ない 柿坂 鞠
シナモンだっけ
キャラメルだっけ
こんなとき自分の
記憶力の無さを悔やむ
この人は誰でしょうクイズで
フロントに張り出されたスタッフの幼い写真
興味深く見る子供とその親たち
彼らはあの人の幼少期を見ることはなかった
どこからきたのだろう
大学の水泳部寮に入っていると言ってた
偶然同じ寮から来る清水くんは
あなたとは正反対のお調子者
でも子供の目は騙せない
「あのせんせいカッコつけててきらい」
みんなあなたが優しいって言ってたよ
もうすぐ閉館になる古いスポーツクラブ
子供用に作られた25mの浅いプールの中であなたは
泳ぎ方以上のことをきっと教えているんだね
本職のかたわら小遣い稼ぎに始めたフロント
実はここ、4才の頃通ってたんだ
結局泳げなかったけど
一生の友を作った思い出の場所
あの時あなたみたいな先生に出会えていたら
今も泳げていたのかな
「今日はもうベーグルはないんですか?」
そうそう、思い出した
あなたはキャラメル味の
甘いベーグルが好き
たとえ残ってたとしても
オニオンチーズは食べないのでしょう?
ベーグル、好きなんですか?
9つも下なのに敬語で聞いてしまった
いつも寡黙で解析不能なあなたは
少しニコッとして
「ベーグル、好きです」
と復唱した
「かみしめる程に味が出てくるんですよね、
このパン」
少しのリアクションはあなたの場合
『すごく』を意味するのかな
それさえも謎な人
私が鈍感なんだろうか
あなたはどんなに鈍感でも
この気持ちには気づかないでね
気づかれないまま閉館してほしい
大切な宝箱の中に
大切な人 大切な気持ち 大切な思い出
鍵をかけたまま土に返ればいい
残り2ヵ月半
週に一度だけ
あと何回会えるだろう
ベーグルで繋がってる会話
あと何回できるだろう
カレンダーに伸ばした手を下ろした
また会えるという動かぬ事実を
一回一回かみしめるために
エントリ3 憧れのつまった 待子あかね
このヘルメットはきみ専用だっていうけれど
ぼくはずっと憧れていた
この真っ赤なヘルメットがぼくは欲しい
ずっと憧れていた
このヘルメットはだれにも貸さないっていうけれど
ぼくはずっと憧れている
この真っ赤なヘルメットがぼくは欲しい
ずっと憧れている
金魚 金魚 金魚
ヘルメットの中に金魚
きみ専用の
金魚 金魚
きみの頭の上で
ずっと泳いでいる金魚
金魚
エントリ4 絶対の死をもっての完全なる相対的な生 鈴木
死を恐れながら生きる
生きることに恐れて死する
そして
死をもって生が終わる
そして
死も終わる
どうやって生きる
どうやって死ぬ
死をもって生の最後とする
死をもって初めて一瞬だけ生が美しいものとされる
生は本当に死をもって終わるのだろうか
死は生の途中にあるのではないだろうか
死をもって次の生が始まるのではないだろうか
終わることのない永遠の生が始まるのではないだろうか
そこからが本当の生なのではないだろうか
生きている間は自我と相対的な自分との戦いであって
死をもって生まれた時から
完全なる相対的な生が始まるのではないか
生きていること
それは相対的なものとしてでしか存在し得ない
自分なんてものはどこにも無い
決して存在する事のない自分
自我と相対的な自分
果たしてこの狭間にあるものを生と呼べるのだろうか
死をもって完全なる相対的な自分になる
これこそが本当の生ではないのか
そしてこれは決して死ぬことの無い生である
死をもって生をはじめる
全てはそのための準備なのではないか
死をもって生をはじめる準備なのではないか
完全なる相対的な生を始めるために
生をもって生を準備する
エントリ5
日々の新たな誕生の夜の眠りは蛹なのだ 不可思議な少年
日々の新たな誕生の夜の眠りは蛹なのだ
個体の形態の発生は系統発生を繰り返す
存在の過程を証して生命は紡ぎだされる
毎朝生れ落ちる魂も私の描いた夢の形代
夢の素材を集めよう感動で明日を創ろう
そして君を抱く夜は二つの魂が羽化する
作者付記:2007年01月12日。WEB詩集「未踏の地」発表の作品。
QBOOKS様に詩人登録をしてから初のバトル参加作品です。
私の作品には哲学や宗教をテーマにした難解な作品が多いです。
でも、作品を詩以外の言葉ではあまり解説したくはありません。
しいて詩のスタイルを云えば、一行の文字数を揃えることです。
エントリ6 言葉日記 Tsu-Yo
1月29日【きがあう】
家の庭に「気が合う」が生えた
そういうこともあるんだなあ
生まれたものは
育てなければならない
私は100円ショップに
ゾウさんじょうろを買いにいく
ミドリにしようか
ピンクにしようか悩む
両方買ったって
たかだか200円なのだけれども
きっとそれではいけないのだと思う
なんてまじめに考えてみると
「気が合う」に気がある
みたいでちょっと恥ずかしい
3月8日【こおどり】
神社でおみくじを引く
大吉なんて狙っていない
私はだんぜん小吉が好きだ
小さい子供の名前みたいで
かわいい
けれど引いたおみくじには
「小躍り」と書かれていた
なんだかひょっとこみたいだな
口を斜めにひょいと曲げ
ほんのりおどけて歩いてみる
だんだん楽しくなってきた
どんなことだって気の持ちよう
帰りにビールとうるめを買おう
今日の運勢は「小躍り」
4月3日【ほおづえ】
散歩の途中で「頬杖」に躓いた
躓いて転んだ
膝を擦りむいた
何度目かのことではあるが
何年ぶりのことだろう
「頬杖」はどこにでもあって
その一つひとつに
注意を払うことは
なかなかに難しい
それに意味のないことだとも思う
擦りむいた膝の痛みは懐かしい
懐かしいけれどやっぱり痛い
6月15日【いちやづけ】
「一夜漬け」が降っているので
今日のサッカーは中止
怪我をしてまで
風邪をひいてまで
しなければならないこと
なんて何もないはずだ
私は温かい部屋の中で
4杯目のコーヒーを飲み干して
5杯目のコーヒーをカップに注ぐ
そろそろ「一夜漬け」も
あがるかもしれない
けれど外に出て行く気はない
7月28日【こころいき】
映画のチケットを買おうと
列に並ぶ私の前に
「心意気」が割り込んできた
実にけしからんことである
文句を言おうとして
口を開きかけた私を
「心意気」は睨みつけてくる
鼻息が荒い
うでも太い
・・・まあいいや
時間なんて腐るほどあるし
急いでいるわけでもないし
なんて意気地なしな自分
今日は「心意気」に負けた
9月11日【あらぶる】
お隣の部屋のベランダに
「荒ぶる」が干されている
太陽が眩しい日曜日の午後
私もベランダに出て煙草を吸う
部屋の中から
ボブ・ディランの声が溢れてくる
やさしい風が「荒ぶる」を揺らす
煙草の煙がせせらぎのように
青空へとのびていく
今日も世界は平和ですね
と「荒ぶる」に話しかけてみた
本当は世界のことなんて
何一つ知らないのに
11月5日【ねびえ】
「寝冷え」と別れた
もう何年も一緒だったのに
お互いに言いたいことは
たくさんあったけれど
それらはすべて
さよなら
という短い言葉に
変換するしかなかった
「寝冷え」がいなくなった
この部屋はひどく寂しい
一晩ぐっすりと寝れば
こんな気持ちも和らぐだろうか
そうでないなら
明日なんか来なくていい
12月21日【がんそ】
動物園の檻の中には
「元祖」が入れられていた
檻の中ってのはさ
犯罪者が入るところじゃないのか
そんなことを考えると
もうたまらなく
泣きたい気持ちになってくる
この動物園には
子供の頃も来たことがあったっけ
あの時はどんな気持ちで
檻の中を見つめていたんだろう
そんな昔のことは
もうすっかり思い出せない
エントリ7
「サドルコレクター」改め<ヨケマキルドローム> ヨケマキル
うまれじぬの
しにまれるの
さあまずは合掌をしましょう
脳が記憶だらけになる前にね
「サドルコレクター」改め<ヨケマキルドローム>
ヨケマキル
ああマイニチマイニチ
なんとか配達の少年が
盗んだ自転車のサドル
うちの庭に投げ込むの
なんとか配達のキミィ
もうよしてくれないか
白日の腐食した空音(そらね)
沈澱し汚泥となり
日々蓄積されてく
そして記憶になる
死ぬために生まれて
生まれるために死ぬ
ハハハハハハハハハ
笑わせるんじゃない
ボクはキミをねえ狂わせようとしていたんだよ
それがキミを手に入れる唯一の手段だったから
君の部屋にあった
すべてのCDや本
カミソリで傷つけ
窓から放り投げた
そんなに大切なら
拾いに行けばいい
さあ拾いに行けよ
精神異常者シゾフレニィの手による
極彩色絵画の白黒仮死モノクロームカタレプシィ
真夜中に電話をかけた ボクはキミを追い込んで行った
たわいのない世間話と ボクはキミを追い詰めて行った
声色を使った脅迫電話 ボクはキミを追い込んで行った
何分か置きに十回ほど ボクはキミを追い詰めて行った
キミの部屋にマイニチ ボクはキミを追い込んで行った
キミの部屋にマイニチ ボクはキミを追い詰めて行った
キミの内側と外側に
肉欲の純粋な表現法
キミの内臓と皮膚に
セックスなどと言う
軽々しいもので無い
そうそれは完全なる
冒涜
しかしその冒涜こそ
ボクの心の奥底の神
笑い続けるボクがいる
満たされるボクがいる
キミはボクに依存
ボクはキミに依存
それは即物的なものであって
これっぽっちも思想など無い
これっぽっちも哲学など無い
よごれてる
けがれてる
ハハハハハ
笑わせるな
「第1部終了」
休憩
「第2部開幕」
珠玉の雨に逃げまどうボク
死んでしまう死んでしまう
こんな美しい物に触れたら
死んでしまう死んでしまう
ボクの好意による悪意
日を追うごとにキミは
人格を破綻させていく
日を追うごとにキミは
幸福になっていくのだ
神様あの人を狂わせてくださいおねがいします
ボクは体に女性器を創った正確にはそれに似たもの
復活のため蘇生のため原始民族の割礼の儀式鋭利な
刃物で自分の性器の下もしくは横に切り込みを入れ
孔を創るその偽物の生殖器が癒着するのを待たずし
てボクはキミを手に入れたのですとても簡単でした
こうしてボクはボクなりの隠蔽工作により
地球上で最も幸福な背教者になったのです
なんとかかんとか配達の君
腐った果実を投げ込むのは
お願いだからよしてくれよ
どんどん腐臭がひろがって
ボクのせいにされてしまう
ボクのせいにされてしまう
人から人から人から人から
「第2部終了」
休憩無し
「第3部開幕」
ああうまれじぬしにまれるああうまれじぬしにまれるああうまれじぬしにまれる
ああうまれじぬしにまれるああうまれじぬしにまれるああうまれじぬしにまれる
ああうまれじぬしにまれるああうまれじぬしにまれるああうまれじぬしにまれる
ああうまれじぬしにまれるああうまれじぬしにまれるああうまれじぬしにまれる
ああうまれじぬしにまれるああうまれじぬしにまれるああうまれじぬしにまれる
ああうまれじぬしにまれるああうまれじぬしにまれるああうまれじぬしにまれる
ああうまれじぬしにまれるああうまれじぬしにまれるああうまれじぬしにまれる
ああうまれじぬしにまれるああうまれじぬしにまれるああああオワリダヨオワリ
エントリ8 白楽百番地 kikki
夕刻
白楽百番地は混濁する
路地を行くたくさんの影
色はまだらに四方に吹きつけられる
球殿からもれ零れる喧騒が
雑踏の常時音に伏す時
スナックカサブランカの孤独はゆるりとほどけ
喧騒の向こう側の小さなお店
「白楽百番地」はシンコペーションを高らかに歌い始める
店の前で猫は立ち止まり
扉をかりかり
かりかり
くるくる回転して落ちる
夢よ
ひかりよ
希望よ
かなしみよ
時よ
つぐないよ
未来よ
よやみよ
罪よ
せいぎよ
少し離れた坂の上
九十七番地
銀杏並木の下
悲しい人がそっと煙草に火をつける時
踏切の
閑々と鳴る百番地は昨宵に戻り
敬愛スタジオよりユリゲラーズの密音が這い出し
笑い声
しんと空気は混濁に吹き
勝亦薬局に立ち尽くす浮浪者の足元を
猫がすりぬけ
車輪が走り抜け
旧街道はどこまでも
どこまでも
つぐないよ
未来よ
よやみよ
罪よ
夜半
白楽百番地は静息する
エントリ9
カラスが鳴いたから 麻葉
新しくできたパチンコ屋のライトが
曇り空を橙色にしてる
バイト帰りに
歩きながら君とのメール
脈絡もなく
私も愛しています
と3日前の返信をした
やっと笑えた
エントリ10
のらウサギ 空人
おれはのらウサギ
しろくてフサフサしてる赤い目のやつじゃないよ
灰色がかっていて おせじにもきれいじゃない
ほら 口のまわりは
さっき漁った生ゴミの汁がついてる
つぶらな瞳で耳の長いドブネズミと そう変わらない
ふつうに歩道もあるくよ
ときどき カラスとけんかしたりもするよ
人が来たら とりあえず逃げるけど
なぜか人は おれのことをかわいいとかいって
追いかけてくるんだよね
まんざらじゃないけど おかしなもんさ
でも
街はいいね
食いもんがいっぱいでさ
おまけに人気も出ちゃって
この前なんか テレビに映されちゃったよ
ただね
街はいいことばっかりじゃない
この前なんか
友だちがクルマにひかれてぺしゃんこになったよ
あわれだったな
それからというもの よくそういう光景を見かけるようになった
怖くなって 里に帰ろうかと思ったよ
そうそう 一ヶ月前に事件があったんだ
のらウサギがさ 人間を襲ったらしい
襲ったっていっても 獲って喰ったわけじゃないよ
二十歳の女子大生を強姦したらしい
落ちてた新聞には「のらウサギ 強姦未遂」って書いてあった
のらウサギをバカにしちゃいけない
いや強姦を じゃなくて字くらい読めるってことをさ
その事件の影響からかな
仲間内では「のらウサギ狩り」をするってウワサで持ち切りだよ
コンビニでたむろしてたときに聞いたんだけどね
おかしなもんさ
あれだけ かわいいかわいいって言っておきながら
さいきんは 目もくれやしない
ま もともとかわいかないんだけどさ
こうも増えると変わるもんだね
おれはべつに変わったつもりなんてないんだけどさ
排気ガスで前よりも黒くなったことをのぞけばね
エントリ11
絶壁ダンスフロア トノモトショウ
妄想体質の子供たちは背後に迫る空に気付きもせず 裏
ハレーションでぼやけた身体を上手に混ぜ合わせる 々
上下左右を彩るセロファンの誘惑を躱すことより の
内部で沸き立つ不自然なビートの言い訳を求めた 采
何故なら僕らの由々しき問題は四次元を貫いて 配
自由落下と生命線の局部に散らばっているから
メランコリアを嘆く主義者は見上げるだけさ ↓
高温多湿/低音加速でエネルギーを捻り出し
数センチの浮遊や不穏な進化論で昇天する 時
という冗談を冗談にするのが上等な冗談だ 々
つまり柔らかいステップが必要ってこと は
つまり下らない美意識は捨てろってこと 発
互いの知覚を揺らす熱は唇までが限界 射
アイとアイの矛盾を責め立てるほどに
絶対運命・ダンス・ダンス・ダンス ↓
スリリングな快感を得るための秘訣は
幸福の兆候を綺麗に見逃すことである 底
彼らは新時代を言葉巧みに騙そうとして 々
点から点へ移動する方法を隠してしまう の
無駄なやり取りをする余裕があれば別だが 絶
もちろんこのグルーヴの暴走は止まらない 望
果たして無から有へ解放される繊細な結晶は
濁った水の中でさえも発光できる条件を得た ↓
あらゆる否定を許された唯一のイミテーション
新しい色がターンテーブルの回転を待っている 散
もうすぐオーバー・ドライヴの空間が積み上がり 々
我を忘れて踊り狂う僕らの覚悟が見えてくるはず な
感受性を放棄したばかりの世に反射すれば計画通り 結
それ以外に素敵な革命が存在するとでも言うのか? 末
エントリ12
プログラミング ぶるぶる☆どっぐちゃん
ジン
ジン
ジンを飲みながら
ロックミュージッキング
「ところでロキングチェアーでってうたをうたっていたロックバンドがいたわね」
「違うよ。パンクバンドだよ」
「そっか。そうか。パンクか。ロックじゃないのか」
おんなはレキシカで
でも自分の書いたものは全てクソだと思っていて
アナール派に憧れて
地中海に憧れて
ワインをステーキに
注いで
「書き始めたのだけど」
「そう、ところで僕は失明していて、網膜は焼きついていて、でも目の前にはいつも見えるんだ。ヴァギナが188分割された映像が、いつも見えているんだ」
女は29まで生きて
そう
だから
書けた!
書けた書けた書けた!
そう思い
そう
だから
放送の途中ですが
番組を終えます
エントリ13
おっておわれおわるひと 双
見え隠れ
沈んでは、姿を現し、消える。
どこへ行くのかしら。 いずこへ、行くのかしら。
笑って、浮かぶ。空の中へ 沈む。沈んで、ゆく。
消えていく
あそこに或るのは、一体何かしら。
手を伸ばし 近づき 近づく。
小さな、小さな、水溜りの中へと。
ぼちゃん
ああ ああ あああ。
どうして笑うの。 どうして泣くの。どうして、生きているの。
それならあなたは、死ぬとどうなるのでしょうか。
笑うの。 泣くの。 沈むの。 それとも、消えるの。
湖面に、ゆらりひらり、舞う。
あの花びらは、いつ沈むのかしら。
いつ、消えるのかしら。
隙間を埋めようとして私は、湖へと身を漕がす。
一歩ずつ、ゆっくりと、足を運ぶ。
あなたを、求めて
見いつけた!
同時に、動いた。一枚の花びら。
浮かんでは、沈んでいる。
あら
どうやら、あの花びらは・・・・・・
水面にゆれる花びら。
追い求め 追い続けていた。
だけどもどうして。
私はいつの間にか
あの花びらに追いかけられている。
静かに
私は、
笑った。
ぽちゃん
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