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第88回詩人バトル

エントリ作品作者文字数
1過ちやまなか たつや275
2汚い心飴子171
3アクロス・ザ・ユニヴァース大覚アキラ476
4ユリ子待子あかね354
5梅雨の教室トノモトショウ201
6rainy、rainy桜はるらん412
7朝に食べたもの石川順一291
8Four RoomsYou329
9障害氷雨水樹232
10マキルフィクション-Trilogy-ヨケマキル1326
11すばらしき平凡な人よ空人516
12目の前でゆっくりと死んでいく君が、トーストにマーガリンを塗る朝の食卓でTsu-Yo482




 


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エントリ1  過ち    やまなか たつや


ナルシストと呼ばれれば否定はしない
自尊心がない癖にどこか自惚れていて
協調性がない癖に自己主張が強いでもない
心から笑えなくても快楽は味わえるんです
むなしさがつのっても涙は流さない

超不健康
それでこそ詩人
なりたくてなった訳じゃない
なるべくしてなったんだ
もう一度言う
なりたくてなった訳じゃない
どこかで道を間違えたんだ

救世主を待ち望む気持ちがないでもない
けれど今のままでも生きていけない訳じゃない
ありえないくらいメルヘンチックな恋を空想することだってある
でも
空想そのものが快楽であって
現実にそうなればいいと願う訳ではない

詩人になった過ちを
父上、母上
ゆるしたまえ






エントリ2  汚い心    飴子


しゃべらないで!
構わないで!

そう心の中で叫んでも
相手に聞こえることはなくて
不機嫌丸出しにすることもできなくて
どうしようもなくいらついて
一日が嫌な日に変わってしまう

あの子が嫌いな訳じゃないのに
そう思う自分がむしろ嫌いで

こんな黒い気持ち、気付きたくなかった

あなたが他の誰かと笑うたび
私がこんな風に思ってるなんて知らないでしょ


……私も知らなかったわ







エントリ3  アクロス・ザ・ユニヴァース    大覚アキラ


ぼくのくちびるから
溢れ出した言葉は
美しい貝殻のような形の
きみの耳に流れ込んで
まばゆい光を放ちながら
絶え間なく反射しあって
きみの頭の中に
ゆっくりとイメージを結晶させていく

たとえば
ライムグリーンの木漏れ日の中
あのメロディを口ずさみながら歩くイメージ

あるいは
雨垂れの軒下から曇り空を見上げて
雲間から差す一筋の光を見つけるイメージ

それらを頭の中で転がすようにしながら
宇宙を横切る真っ白なラインの上を
ぼくたちは爪先立ちで歩いていく
一瞬で崩れ落ちる脆さと
そして
決して折れることのないしなやかさを
その一歩一歩に刻み込むようにしながら
力強く歩いていく

ぼくのくちびるから
溢れ出す言葉は
ぼくの言葉であって
ぼくの言葉ではない
それは 遥か昔に
始まりの場所から送信されたメッセージ

そうやって
ぼくたちが刻み込んだ足跡から
また新しい言葉が生まれ
ぼくのくちびるから溢れ出して
きみの耳に流れ込み
きみのくちびるから溢れ出して
ぼくの耳に流れ込み
まばゆい光を放ちながら
絶え間なく反射しあって
ぼくたちの頭の中に
ゆっくりとイメージを結晶させていく

ほら
宇宙を横切ってようやくいま
きみの耳に届けられた





エントリ4  ユリ子
    待子あかね


きみが書いた小説に出てくる女の人は
きみの妹みたいだねえ、なんて言われて
ユリ子は驚いた

あなたの言うことはいつも間違っているわ
なんでも決め付けてばっかりで そう言いたかったのに
ユリ子は嘆いている

桜の季節に完成した「フラグメンツ」という小説は
いちばんのお気に入りで 
会う人ごとに、同人誌作ってるんだけど、
なんて言って薦めてまわった

妹をモデルにしたその小説は
いちばんのお気に入りで こわくなって
それで 嬉しいけれど辛くなってしまって
書くのはそれでおしまいにした

あなたに会ったのは3年ぶりで
わずかに残っている面影が
どうにか居心地の悪さをかき消してくれた

そんな3年ぶりにあなたは言った
新しいお話し、つくらないの?

ユリ子は嘆きたくてたまらなくなったけれど
目の前のカフェモカがあまりにもおいしくて
また、書いてみるわ、なんて云う





エントリ5  梅雨の教室    トノモトショウ


五時限目の気怠い数学に
分度器を昏い空に翳して
透明な半月の向こう側の
斜線が象る鋭角を呆然と
眺めていた

人生や宇宙について何か
具体的な答えが知りたい
例えばこの偶数のような
完結していて揺るぎない
今のような

煙る校庭を横切る獣の群
誰かを弔う葬列だろうか
断続的なノイズが耳障り
鮮やかな朱の足跡に残る
説明的な程

自傷する少女たちの噂話
混乱する少年たちの猥褻
この空間に蔓延るものの
正体はちぐはぐな相関で
僕は憂鬱だ

雨は止まず





エントリ6  rainy、rainy    桜はるらん


rainy、rainy
工場のパイプラインに流れる雨の
しずくを受けとめる紫陽花は
ただじっとうつむいて
ヘルメットの下の
あなたの笑顔を思いだして

rainy、rainy
あなたがいま 何処にいたって関係ない
あなたがいま 誰を抱いていたって関係ない
気温40℃の工場の中でただ今日も汗が流れ出す
眼に染みる化学液の匂いと蒸気で
私の心は芯まで ただれそう

rainy、rainy
あなたがいま 何処にいたって関係ない
気温40℃の工場の中でただ今日も汗を流し
陽気な男たちの笑いに囲まれて弁当を食べる
あなたが置き去りにしたガラス窓の向こう
パイプラインの雨が紫陽花に降り注いで

rainy、rainy
雨上がりの空に工場の終わりのサイレン響けば
遠くに架かる淡い虹

汚れた作業着のまま自転車に乗って家に帰ろう
大きな水たまり幾つもハネれば
空っぽの弁当箱がカゴの中で踊る

rainy、rainy
紫陽花の花びらに銀のしずく光って揺れて
明日の天気なんて もう気にしない
rainy、rainy、
うつむくのは もうやめて
遠くに架かる淡い虹







エントリ7  朝に食べたもの    石川順一


まんねりは打破された
ウインナー二つにプレーンオムレツとキャベツ
味噌汁も付いたが昨日までの味噌汁と納豆だけにグッドバイフォーエヴァー
昨夜の残りのトンカツの取り合いさえなければ

昨夜に戻って夕食を除けばフライドポテトにトンカツそして味噌汁
昨日は忙しい中スーパーへ買い物に行き
二階の本屋でプロレスの雑誌を読んだ
プロレスの雑誌だけどボクシングの記事を完読した

ビッグマッチはKO勝ちはいかんそうだ
引き分けはルール上有り得ないにしても(本当はあるらしいが)
なるべく僅差の判定に持って行く

そうすれば第二段第三弾もおいしい
両陣営がうれしいしテレビ局もうれしい
なんと言っても最大多数の最大幸福って感じ?





エントリ8  Four Rooms    You


神経衰弱

どうしようもないくらい

心機一転

実家を離れ

新しい環境で生活することに

僕の新しい家には

4つの部屋がある

どれが僕の部屋なのか

1つずつ

とりあえず

開けてみよう

間違ったら失礼



茶色い部屋に入ると

頭の半分欠けた男の子

お腹を空かしてるようで

蝿もたかってた

we are the world

流れてる

臭い

僕は扉を閉めた



赤い部屋に入ると

男女が半裸でまぐわってた

まさに

イク

瞬間だったみたい

all you need is love

流れてる

気持ち悪い

僕は扉を閉めた



白い部屋に入ると

ユダが十字架に

祈りを捧げてた

アヴェマリア

流れてる

目が潰れる

僕は扉を閉めた



黒い部屋に入ると

僕の荷物

全部揃ってた

やっとか

落ち着こうとした刹那

僕は息を飲んだ

そこにはもう僕がいたんだ

quadrophenia

流れてる

発狂寸前

僕は扉を閉めた



さて

僕の部屋はどこに?





エントリ9  障害    氷雨水樹


思うことなんてない
何も 出来ないから

******************

目の前の事で
必死で何も片付かない
自室の奥
取り残された 孤独

「放っておく」
なんて事の出来ない
小さな世界にやって来ました

**************************

蝕む闇と戦って
出来た傷 が
消えるはずもなく
見せる事も出来ぬ
から
苦しいのは己ばかり

「甘え」
なのでしょうか?
小人達からは見えないのです

**************************

色を失ったママ
この世界に棲みましょう
灰を纏ったこの殻ごと

********************

思うことなんてない
何も 出来ないから










エントリ10  マキルフィクション-Trilogy-    ヨケマキル


1.回虫型リケッチア

真夜中
ドアを叩く音
仕方なくドアを開けた
軽率だった
異様な黒光りのヘルメットが目に飛び込んで来た
神経団だ
脳チップから出る特殊電波を遮断する装置「Uドーム」の
パワーをOFFにしてしまっていたのだ
なんということだ
もうドアを開けてしまった
こいつが噂に聞く「火曜日の悪魔」か
目と耳が無いと言う噂は本当だったんだな
そんなのんきな事を考えてる暇は無い
そうだ
「ニンフ・エアー吸入器」があった
テーブルの上を手探りで探した

無い
考えてみたらしばらく使っていなかったな
有効期限切れになっていなければいいんだが
ヤツがあの物質を出す前に
ボクは「ニンフ・エアー」を吸入し仮死状態に入らなければならないのだ
しかし吸入器が見つからない
ヤツが軟体動物特有の異様な動きでポケットに手を入れた瞬間
素早い動きで窓の方に向かった
もう逃げるしか無い
予想通りヤツはポケットから回虫型リケッチアを取り出した
ああ、それは確かにボクが国立脳伝道会館に保管していたものだ
恐怖で体が凍りついた
もうだめだ
ヤツが近付いて来て僕の頭をつかみ
耳から無理矢理回虫を入れようとした
そうだ
「分裂連鎖ドライブPX」を臨界状態にすればよかったんだ
でももう手遅れだ
これが悪い夢である事を祈るだけだ


2.ギズリム発症までの4日間

[4日前]
脳男との契約において[非幽閉コード11]を継承したボクだったのだが
第1種特種還元能力が極度に低下している事に気が付いた

[3日前]
この町のほぼ中央に位置する
通称[逆さ時計]から出るハイクラス誘導電磁波の影響だろうか
広範囲遠隔操作Bモードの能力低下も著しい
まさか、、、、
いや、思い過ごしだ そんなはずはない


[2日前]
第1種及び第2種特種還元能力
広範囲遠隔操作A、Bモード
相対分離能力
回転移動ならびに広角移動
空気侵入
光速搾取
上記すべて無効
昨日の悪い予感が現実の方向に向かっている


[前日]
ブレインスライド
有機運動体部分的強制停止能力
無効
そしてついに最後の砦とも言えるキラーフライの使用許可下りず
最悪の事態が起きている事はもう間違い無い


[当日]
ギズリム発症
ついにその時が来た
矯正指定を受けていなかったのでまさかとは思っていたのだが
どうやら絶対数管理システムも過剰反応を起こしている様子だ
ボクはこれから24時間以内に国立脳伝道会館に侵入し
メルフェモール公式暗号を自力で解読しなければならない
それはとても困難な事だ


3.レンチとキーツ教会襲撃事件

ほとんど全能である「キーツ」と
ハサミ恐怖症であるボク「レンチ」は
深夜の教会に忍び込んだ
目的は、神父を縛り上げ金を盗む事
少し手荒だが殺しはしないし金も全部は取りはしない
明日1日過ごせる金があればいい
大丈夫、神父は警察に通報なんかしやしない
だって神父だもん

真っ暗な礼拝堂
ふーん、冷気が漂ってる
ところで人のにおいがまったくしない
しまったここには誰も住んでいないんだな
キーツは全能であるが故の慢性自殺願望症
早いとこ仕事を終わらせよう
キーツはキリスト像を壁から外し縄でボクの背中にくくりつけた
早くしないと朝が来ちまう

絶滅鳥類の名前が全部言えるキーツこと「キーツ・マクナマラ」と
鳥の声を持ち予言者でもあるボク、レンチこと「スタンダード・レンチ」は
ゴルゴダの丘をのぼりはじめた
まだ夜明け前






エントリ11  すばらしき平凡な人よ    空人


すばらしき平凡な人よ
すばらしき 平凡な人よ

あなたは 自分のことを 無能な人間だと卑下する必要はない
大臣や医師 芸能人やスポーツ選手と比べて
劣っていると思う必要はない
あなたは
大臣や医師 芸能人やスポーツ選手も 知らないことを知っている
大臣や医師 芸能人やスポーツ選手から 賞賛されるべき知恵を持っている

だから
すばらしき平凡な人よ
あなたは 自分のことを 無能な人間だと卑下する必要はない

世界は あなたのような すばらしき平凡な人が支えている
ただの歯車だと 失笑するなかれ
言うなれば 世界中の人間が また歯車である
あなたがいなければ 世界は立ち行かない
その事実を いま あらためて知るべきだ

すばらしき平凡な人よ
自分は無能だと 嘆くなかれ
自分は無意味な存在だと 仰ぐなかれ
そもそも 私たちに存在の意味などない
だから
ふと訪れる 午後の陽だまりの長閑に
深遠な意味を見つけようとしないでほしい

すばらしき平凡な人よ
だから せめて生きながらえてほしい
生まれたことの奇跡を あなたの歴史を
目の前の愛する人を 遠い国の貧しい人を
ときに想い ときに忘れ
平凡であることのすばらしさを
あなたがいちばん知っている そのすばらしさを
よろこびに変えられるように
生きよ







エントリ12  目の前でゆっくりと死んでいく君が、トーストにマーガリンを塗る朝の食卓で    Tsu-Yo


鈴木が首を吊ったという知らせをうけて
テーブルの上を見てみれば
なるほど
胡椒入れの横で
鈴木が首を吊っているから
いたたまれない気持ちになって
伸びきった首を掴んでロープを外してやると
鈴木嬉しそうにキャンキャン吠えて
テーブルの上を走り回って
季節はいつのまにか冬になって
鈴木真っ白な雪の上に
小さな足跡をつけながら走っていく
鈴木の後ろを追って
まだ新しい雪に足をとられながら
走っていくわたしのことなんか
振り返りもしない鈴木の背中が
大きくなって
小さくなって
また大きくなって
追う者と追われる者の関係は
もうすっかり消え果てて
それでも
走って走って走りつづけて
いつかの春の河原を越えて
饐えた臭いのする体育館を駆け抜けて
色とりどりの店が並ぶ商店街を突っ切って
走って走って走り続けたい
と願うわたしの足は
ゆっくりと固まってゆき
それでも鈴木は走りつづけて
みるみる小さくなっていく鈴木の
首には太いロープが巻かれていて
救う者と救われる者の関係は
正しく意味を失ってゆき
もう追いつくことのできない鈴木の姿が
テーブルの何処にもないことに気が付いて
目の前で不思議そうな顔をしているあなたの
首のあたりを眺めている