第11回詩人バトル Entry33
冷たい雨の打ちつける朝の通勤電車の混雑にゆられながら
曇った窓の向こう側に
きのうの夜のささやかなぬくもりを見いだそうとして
もがいている
君に。
ほんとうに大事な大事な思い出だと今まで信じてきた
大切な証拠である十八歳の誕生日の記念写真を
野良猫のように四つん這いになって
ゴミ箱まであさったのに
どうしても見つけだせずに
それでも涙一つ流せないでいる
君に。
携帯電話にメモリーした番号がなにかの拍子に消えてしまって
何百人もの友人をすっかり失って
困ったよまったくと
そばにいるほんとうの名前を知らない友人に笑って
実のところまったく困りはしないし
晴れ晴れとした気分になって
メモリーした番号にぼくの番号が含まれていたことになんか
気づきもしない
君に。
ぼくはなにを語れるのだろう?
いったいなにを語ればよいのだろう?
君とぼくのあいだにある空白に
つぎつぎとぼくの無意味な言葉は吸い込まれてゆく
ぼくはこれでも人生を削りながら言葉を紡いでいるというのに……
絶望。
絶望という虚空。
虚空という空白。
空白に横たわる悲しみ。
こんにちは
はじめまして
聞こえますか?
聞こえていますか?
生と死のあいだにある空白に
人々は救いをもとめてすべてをなげだしてゆく
ぼくはそれでも君のことを必要としているのに
ほんのすこしだけ踏み出せば
とどきそうな
君に。
無表情な笑みを浮かべていつも静かに座っている
君に。
皮膚の裏側にはきっと碧い碧い塩水と眩い電流が流れているだろう
君に。
ぼくは語らずにはいられない
無意味な言葉の羅列に意味はないんだ
わかってほしい
こんにちは
はじめまして
聞こえますか?
ええ、聞こえてますよ
ありがとう
ほんとうに
ありがとう