第11回詩人バトル Entry34
何もかも
私の知ったものが絶えて
新しい世界には
最初に蜜柑を植えよう
小さな蜜柑の苗を植えよう
瓦礫とその灰と
生命とその痕と
歯は白く髪は黒く
とめどなく消えてゆく煙
雨に割れた爪を
晴に切れた耳を
ひとりきりの正午
てのひらにただ一粒の水
逃げる言葉を手繰り寄せて
灼ける喉を緩りと裂いて
其処に呼ぶ筈の人々は居なくて
夢を視て目醒めれば
驚く程 青く広い 空
暖かな炬燵のなかで
私の眼の前にはひと山の蜜柑があって
世界の何処かでは人が死んでいるのだ。
何もかも
私の知ったものが去って
新しい世界には
小指ほどの太さの小さな蜜柑
やさしい緑の葉をした蜜柑があるといい
私の骨のうえにも
やさしい匂いを広げる蜜柑が咲くといい