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第11回詩人バトル Entry39

渋谷ララバイ。


 悲しみの嗚咽が 
 雑踏に隠れながら流れ出してくる
 泣き声を誤魔化すような ため息に混ぜて
 耳を澄ますと聞こえてしまいそうでこわいから
 誰も気づかない振りをしている 西口。
 
 孤独に怯えた人達が
 見知らぬ者同士で暖めあうようにうずくまるベンチで
 体を寄り添わせながらもお互いを見ようとしない
 携帯電話に救いを求めながら 
 皆が必死に救難信号を打ち込んでいるようで悲しい ハチ公前。

 俯いた人間の群れが 灰色の背広達
 コートの襟を立てて何も見ないように足早に去っていく
 風も空気も音も視線も全て遮るための壁のコートに包まれて歩く 道玄坂。
  
 同じ亜麻色に染められた髪 白くファンデーションを塗った肌は
 血の気が失てしまったようで 冷たい風に乾き続けていた
 陶人形の様に美しい少女達の目はどこか空虚で、くすんだ色をしていて
 寂しさを癒してくれる相手を待つ様に座っていた 文化通り。
 
 性を売ろうとするチャイナドレスの女の笑顔 
 路上に座り込み “反逆” の色の少年
 泥酔し 道端に吐しゃ物をうち撒けるおとこ
 煌びやかさかの端からはみ出した 
 咽返る 欲 の色に吐き出しそうだった センター街。


 悪や罪を塗り込めてしまおうとする闇が迫る 夕方5時
 109のネオンは全てに許しを与えようと明るさを増して
 それでも ひとの作り出した光は仄かに遠くにあるだけなのに
 彼等はじいっと見入って免罪を求めている。
 
 もうすぐ雪が降る ネオンと 彼等と 全ての罪を清める冬の色が
 この街と この街に集まる人たちが白に染まり 
 また新しい日々を無垢なまま始まりたいと願う。
 その眠りにつく。
 そうなればいいと 僕も思い
 乗り込んだ車両の窓越しに ガラスを透き通るように
 微かな声で
 その夢を見たがる街に、『おやすみ』と呟いた。
 僕の微かな声が ガラスの向こう
 冷たさを増した 夕方の空気に溶けていったように見えたとき 
 僕を乗せた電車は ゆっくりと、渋谷を離れていった。

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