第15回詩人バトル Entry40
雨の日にふる小さな優しさ
遠い日に埋もれた小さな救い
雨だれの音で目を覚ます 灰色の朝に
アスファルトに横たわる 無感動の死
幼いながらに酷く哀しいものだと思える程に
何か雨の朝は私の知覚を変えてしまう
純粋性を否定するような鮮やかな色を失った朝は
小さな死を内包していつもそこに存在した
感傷的な日常 目をあわせないようにして通り過ぎた
群れをなす子供達を追い駆けて
光は雲の向こう グラデーションの一日
少し白くなるせかい 舗道の瀝青
印象でしか心に留められない私が憶えているのは 赤
赤いミニスカートと赤いハイヒール
赤いマニキュアと赤く染まった手
その手にぶらさげたビニール袋の中の猫だったもの
小さな暖かいものが その惨いほどの印象の向こうに在る
信じられるものは 私が 信じていいのは 信じるべきものは
たぶん そういったもので
彼女の見上げた肩の向こうに 小さな青がみえた
青と赤 鮮やかなコントラストが 灰色のなかで目に染みる
少し大袈裟かもしれない 私はいまだにその小さな救いを愛しているのだけど
彼女は泣いていたのだろうか
小さな青をめざすように歩いた 原色の彼女