エントリ1
絶対的に白 大覚アキラ
こないだ
代官山のこじゃれた居酒屋で
イギリスの旅行記を出版したっていう
色白の女の子と飲んでてん
最初の四杯は生ビールで
五杯目からはホッピー
女の子の腕が
透きとおるみたいに白くて
ほっぺたも
透きとおるみたいに白くて
白いなあ
絶対的に白いなあ
って呟いてん
女の子はイギリスの話に夢中で
一ヶ月間のイギリス滞在中にあった
いろんなできごとを
いっしょうけんめい話してたんやけど
ぼくの
白いなあ
絶対的に白いなあ
っていう呟きで
話の腰がボキッと折れました
あ
ごめんごめん
ちゃんと聞いてるで
イギリスやろ
六杯目のホッピーは
敢えて黒ホッピー
なにが
敢えてなんやろな
なあ
このままずっと飲み続けたら
急性アルコール中毒で死ぬんかな
それとも
そうなる前に寝てしまうんかな
どうせ寝てしまうんやったら
絶対的に白い
きみのその腕に抱かれて
眠らせてくれへんかな
どんな夢が見れるんやろか
やっぱり
白い夢やろか
絶対的に白い夢やろか
七杯目のホッピーは
再び普通のホッピーに
これって
白ホッピーとも言うねんで
この先に行ったら
何があるんやろな
何が見えるんやろな
イギリスな
うんうん
聞いてる聞いてる
ちゃんと聞いてるよ
とにかく
きみ
白いなあ
絶対的に白いなあ
エントリ2
逢瀬を待つ 凛々椿
逢瀬を待つ
隙間には
悲しみを選んだ欠片の屑
触れたら
傷を負うよ
見えない姿で
聞こえない言葉は
左隅の
冷えた空気を
支配する
逢瀬を待つ
時には
母のない子のように
でも
歌ってみようか
海には母の記憶ばかりが
たゆとうけれど
手紙はね
大事にしているよ
見ることは
もうやめた
逢瀬を待つ
傷を負うよ
触れてはいけないよ
見えない姿で
聞こえない言葉が
左隅に
エントリ3
とりとめもなく 石川順一
電話ボックスが泪で埋まって行くと
ねちがえて湿布を張った首など
構って居られなくなる
窒息死する甘美と
首の痛みの比較は詩を間に入れても
ナンセンスでしかなく
氷上を滑るショパンは
馬が苦しんで居ると
直ぐ笑う癖を直せて居ないと
私は叱責する
硝子の少年が歌って居た
名所旧跡を歩き続けて
ギターが原因で叫んで居るのか
ギター自体が唸って居るのか曖昧なままに
私は甘美な窒息死を選ぶのか
救急車が通過する
お茶の入れ物がガラスで出来て居る
11月末に半袖で居た事があだとなり
肘をやけどする
人の持ってきた弁当箱をつっつこうとすると
警戒されて弁当箱を微かに動かされる
微かに箸にそこから指に伝わる振動
食パンを食べればその人の実在に
おおいに台所で驚く
ああこのへんで止めて置こう
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