エントリ1
九月なのに 大覚アキラ
九月なのに炎天下で
九月なのに濃紺のスーツは汗まみれで
九月なのに就職活動中の女子大生たちによる真昼の行軍が
九月とは無関係に地下鉄の出口から延々と続いている
彼女たちはそれが決まりごとであるかのように
みなメンソールの細いタバコを口に咥え
書割みたいな白々しい風景の中を
つまらない顔で早足で歩いていく
ピストルが欲しいわ
覚醒剤でもいい
そうでなければ奴隷になってくれる男
もしくは私を奴隷にしてくれる男
終わらない夏休みが欲しかった小学生の夏
終わらないものなんてないと知った中学生の夏
お願いだから終わらないでと祈った高校生の夏
お願いだかから何もかも終わってと呪った今年の夏
九月なのに炎天下で
九月なのに濃紺のスーツは汗まみれで
九月なのに夏で
九月なのに
エントリ2
インディアンの砦 石川順一
内側の幸福を思う
注意は出来ない
記憶だけが正しくて
未知との遭遇が待って居た
ドリーは作りたいけれども
内側から腐って行く
富んでは行くけれども
腐って行く
葉の密集の様に
樹木が天へ伸びて行く様に
キウイが置かれた
内向的なキウイが
輝いて
田に力が結集して行く様に
インディアンの砦が
築かれた
エントリ3
婆ちゃん、野良猫と俺 植木
背中を向けた俺にむかって
「泣いてもいいンだよ」
と比較的はっきりした口調で言った
いつまでも黙っている俺に
「慣れてもいいンだよ」とも
サッシの外に
二匹
野良猫が来て
昨日も来て
今日も来て
きっと明日も来るだろう
俺が餌をやるのを
じっと待っている
目脂をためて
俺を見つめている
エントリ4
バイバイアチチ サヌキマオ
やや不本意ではあるが
息子が最初に覚えた言葉は「バイバイ」である
そして「アチチ」を覚えた
バイバイアチチ
浜の真砂は尽くるとも
石川五右衛門の親も
鼠小僧次郎吉の親も
どんな心地であったろうと
意識は脱線する
出会った途端に「バイバイ」と手を振られ
お前のじいちゃんは凹んでおるぞ
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