エントリ1
東京の愛人 大覚アキラ
東京に来ると
いつも雨降りでうんざりする
駅前のコンビニで買った
乳白色のビニール傘に
雨粒がボトボトと落ちてくる
東京メトロ
丸の内線で一駅
銀座まで
その短い時間でメールを打って
銀座駅のホームから送信する
「私は誰かの愛人になりたいんです」
酔っ払ってそう口走っていた女に
月並みで説教じみたメールを送信する
東京メトロポリス
あの高層ビルは
いったい何階建てなんだろう
あの最上階に住んでいるのは
いったいどんな奴なんだろう
そいつの
愛人を犯してやりたい
そんな想像をしながら
山手線に乗り込む
そして
うたた寝する
飛ぶ夢を見る
涎を垂らす
隣に座ったOLの肩にもたれる
「おれも誰かの愛人になりたいんです」
そんなことを口走る夢を見て
目が覚めると
満員電車の中で
誰かがひそひそと喋っている
大阪弁で
「東京には
呪いがかかっとる気がするわ
日本中の
いや世界中のどこにも
こんなに都市伝説が似合う街はあらへんで」
こいつの
愛人を犯してやりたい
そんな想像をしながら
アメ横の薄汚れた屋台で
ジョッキのホッピーをあおる
雨に滲むネオンを眺めていると
「私は誰かの愛人になりたいんです」
誰かが小さな声で
独り言みたいに呟くのが聴こえたので
隣に座っている若い水商売風の女に
「きみも誰かの愛人になりたいんですか」
と訊ねたおれの声は
電車が高架を走り抜けていく騒音に
掻き消された
ビニール傘は
どこかに置き忘れてきてしまった
そういえば
メールの返事は来ないままだ
東京に来ると
いつも雨降りでうんざりする
エントリ2
愁思 石川順一
薔薇園に糸が垂れて居た
ニットを試着して
果てしなき欲望を抱き
寝て仕舞う私は
懸賞の規格に踊らされて居る
なつかしのGメンサイトを読み漁れば
温泉の夜空に星が輝き
涸れた川に魚が住めぬ寂しさを思う
日替わりのモーニングにも型があるのだ
抽選会で黒衣の少女が母と居た
ファックスを使えば確認電話をして
スーパーに行けば
宮崎メロンが一番高かった
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