エントリ1
ロゼット 日向さち
名残の雪が降る日に祖母の葬式があり
四十九日を過ぎると
やけに早く近付いてきた八月の新盆の前に
私の部屋の改修が行われることになった
祖母の部屋へ荷物を移動しながら
この隅には鏡台が置かれていたなと思い返した
引き出しが付いていて、ブラシと、化粧水と
ロゼットが載っていたのを覚えている
反対側の壁際にはガラス戸の棚があって
キューピー人形とか七福神の置物とか
孫の誰かの保育園で貰った折り紙の何かとか
私があげた何かもあったはず
だけど、何だったのか思い出せない
骨粗鬆症のせいで動けなくなったことがあってから
布団ではなくベッドで寝るようになり
そのベッドの奥に、鏡台
私はロゼットのことを保湿クリームだと思っていたのだが
調べてみたところ、ロゼット洗顔パスタという商品らしく
そういえば脱衣所の洗面台にあるのを見かけたことがある
ポリデント――祖母の発音だとポリゼント――に入れ歯を浸けるための容器は
いつも離れの洗面所に置かれていて
ということは、祖母は入浴のたびにロゼットを持ち運んだのだろうが
湯上がりで、脱いだ服を抱えて歩く姿しか記憶に無い
祖母の部屋にまつわる思い出は色々あるのに
ロゼットのことを考え始めたら
ロゼット買ってきてくれやい、と叔母に頼む声とか
金色に輝くロゼットという文字とか
そんなことばかり記憶から掘り起こしてしまう
エントリ2
もう止まらない 石川順一
突かれた胸は
突かれた脛の裏よりも
赤く
ティッシュを赤く濡らした
コアな考え方が
私を阻む
金が欲しくて転んだ
転ばなくても貰えたのに
今額に石が当たる
靴が要らない
靴下を履かずに家を出た
はだしの友
一日が厄日だ
初日にはだしで
外出したとも
不意の想起
もう止まらない
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