エントリ1
親 日向さち
アイスキャンデーとともに溶けていく親指を見つめながら
意の味を噛みしめる
うるさかった記憶の群れが
駅に飛び込んでいったと思ったら
降りたのは母の膝の上だった
エントリ2
6月 午後2時40分 金河南
吐かないで
受け入れて どうして 君はどうして
床に腐っていく 観賞用の金魚
咳き込んでいる 選んだ筈の君
「どうして吐いてしまったんですか」
責め口調はよそう
そんなことを言いたいわけじゃない のに
「どうして ……」
気化していく水 痙攣は終わる
気温は二十六度 昨日は霧雨で
「時間を置いたら気分は変わりますか?」
君は力なく首を振る
口に残った淡水を吐き出すさまを あぁ
「明日なら?」
睨まれる 三秒間
水槽の温度は十八度 大葉のような色をして
腐っている
金魚は
腐っていく
すぐだった すぐに腐っていく不必要な自然は断りもせずに
「どうして ……」
吐かないでほしかった
どれの代わりもいくらでもいるからこそ選んだのに
空腹を感じる
「もうすぐ夏がきますね」
腐った色から反対色を取り出して
指先を 腐らせて
喘ぎを鑑賞して
反対色に
含んで
どうして こんなにも
「おいしい ……」
受け入れて
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