第35回詩人バトル

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エントリ 作品 作者 文字数
1 名前を貰えなかったあの日に贈る 凜一 0
2 僕は深海魚 小笠原 寿夫 196
3 利鈍リベラリズム 歌羽深空 456
4 巡礼者 有機機械 259
5 LIVE 児島柚樹 389
6 わたし 57
7 キミドリミドリ症候群 ヨケマキル 633
8 『私』に意味を… 香月朔夜 0
9 レディ・エフェメラ ヒヨリ 936
10 夜の浜 相川拓也 191
11 とめられた自転車の隣で 麻葉 330
12 20’04” ぶるぶる☆どっぐちゃん 0
13 (作者の要望により掲載終了しました)
14 目の裏 手の果て 鈴矢大門 147
15 時空への手紙 さと 219
16 続 タイム・マシーン 深神椥 7
17 衛星中継 佐藤yuupopic 310
18 White Snow 武流 43
19 天内日月 49
20 結晶 大覚アキラ 348
21 掘り起こしてみたらば ながしろばんり 235
22 満月と雪道、そして出口 空人 581
23 情熱 木葉一刀(こばかずと) 60
24 砂と草 詠理 39
25 スーパーマーケットへ行こう 8148(略)ソラン 138
26 存在 日向さち 202
27 『量産願望』 橘内 潤 287

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エントリ1  名前を貰えなかったあの日に贈る     凜一


とうとう来たんだこの日がさ

破滅への階段

上ってみようか
下ってみようか

まぁ

どっちにしたって
始まっちまったもんはしかたねぇ

カウントダウンがキコエル

オレの喉に
キミの肺に

心臓が二酸化炭素を求めてる

そうだ

うんと熱い
キャラメルティで乾杯しよう

今日と云う日を弔いながら




エントリ2  僕は深海魚    小笠原 寿夫


僕は深海魚

変な顔しとる

家族も変な顔しとる

誰かが見たら

「こんな顔見たことない」と

笑うだろう

調子のんな

誰も見てへんわ



僕は深海魚

息が苦しい

家族も息が苦しい

普通の魚やったら

「死にそうや 誰か助けてくれ」と

もがくだろう

甘ったれんな

誰も助けてくれへんねん



僕は深海魚

だんだん疲れてきた

家族もだんだん疲れてきた

もう寝る時間やから

だんだんだんだんだるなってきた

何か飲もう

何もないわ

そんなとこ探しても何もないわ




エントリ3  利鈍リベラリズム    歌羽深空


おろかさ りこうさ あえいうえおあお
HELLO SEE YOU kakekikukekokako
トランプ ハナフダ サセシスセソサソ
骨肉 内臓 盾膣手蠧他蠧

歩く速さはモデラート ぶつかり去るはあちら方
澱んだコーヒー 浮かべるレモン 空に薫るは栗の花

見える人群アダージョアダージョ ひきつりわらいはアラこちら
茶柱ウーロン 広がるインキに 地面に垂直桃の種

花欠け落ちた 雨垂れ下がり 穴転がって サヨウナラ

背景ロマンは無彩色 夢も欠片もないときた

咲く散るモノクロ オセロの世界にゃ芝がある

ルンタルンタチッチッタ 走レ走レノ走馬灯
ツッチツッチノンノンノン 歩イテ落チロト歩道橋
キラリと光れば北極星 隣の麒麟も見て逃げる
望遠鏡なら左右対称 理非曲直ならおあいこだ

眠らず見る夢 水中軟禁 すべすべらずにすべすべからず
ホヘトの日蝕 フレアー フレアー!!
聖者の行進 あちらはなんぞや 裸の王様大合唱

得した損したよっといで わたしゃ天下のリベラリストさ

本日晴天 妙日曇天 廻る世界にジュテームと
呟く 貴様に マーキュロクローム ドロップキック




エントリ4  巡礼者    有機機械


絶えまなく打ち寄せる波たち

それらはまるで敬虔な巡礼者の群れのように

静粛に、誠実に、清浄に

次々とやってきては泡となって消える

その沖では雲の切れ間から射す光が海面を輝かせ

僕にはむしろそちらのほうが聖なる場所にふさわしいように見える

そこではきっとすてきなことが待っていて

そこではきっとどんな奇跡も起こるだろう

だから僕はその場所を目指す

そのまばゆく輝く世界のものたちが

僕の立つこの大地に憧れようとも

そのまばゆく輝く世界のものたちが

僕の立つこの大地に憧れるように

僕は向こう側に思いを馳せる

だって

残された場所はそこしかないのだから




エントリ5  LIVE    児島柚樹


きのうの夕ゴハンより 皆に傷つけられた思い出が
色鮮やかに 生々しく 思い出せる

水をかけられるなら魚になりたい
塵を浴びせられるなら鼠になりたい
首を吊らせられるなら鳥になりたい

手首に何度も鋭い鋭利を入れた
腕に伝わる紅
頬に伝わる泪
けど傷は浅くて
すぐに紅は消えて
白い傷跡だけが残った

死ねるなら死にたい
けど
私が死んだって 無くなったって
何も変わらず 地球が廻るって知ったから

わざと生きてやった

朝は太陽が
夕方はどこまでも続く茜の暁空が
夜は月と瞬く星が
私を照らしていたから

生きてみようとも思った

今は
今は
前だけを見て
ダッシュで風を感じて突き進んで 
時にはゆっくりと景色を見て歩いて
結構楽しみながら

生きているんだよ 

大地に立っている私は小さくて
世界は見ている景色より大きくて

全てを見てみたくて
見ないと勿体無いと思った

ほら
いつか死ぬんなら
それを待って

全てを見てみよう?

多分
いやきっと

すごく綺麗だから




エントリ6  わたし    陽


一口齧ったりんご

剥き残した皮のついたじゃがいも

生茹でのかぼちゃ

熟れ過ぎたキウイ

醗酵しかけのヨーグルト


それが わたし




エントリ7  キミドリミドリ症候群    ヨケマキル


この病気が確認される4年前
S市の公園から
S市在住ソーク・メルテッドさんの次女ユール・メルテッドさん(当時6才)が行方不明になる
大規模な捜索にもかかわらず発見されず
それから3年後のS市内の空き地に突然姿をあらわしたユールさんは
近所の主婦により発見、保護される
爪の色が黄緑色になっている以外は特に異常はなかった
ユールさんの証言により誘拐監禁の事実がわかり
記憶を元に 監禁されていた現場(廃屋)までは判明したが
犯人は捕まらなかった

それから1か月後
「ユールさんの爪の中から
爪の中だけに生きる新種のウイルスが発見されたが
伝染性のウイルスではない」と
病原菌研究の第一人者アッブルベリー大学病院の
LHキエル医学博士が発表した
すぐにプロジェクトが結成され
2年後に抗生物質「キセトマイシン」が開発され投与される
爪も元に戻りウイルスの死滅も確認されたが
半年後に高熱を伴う更に強力な病原菌の体内自然発生により
ユールさんは死亡
ごく限られた範囲での空気感染により家族も次々と死亡した
死後、体が緑色になっていたことから
この一連の症候はキミドリミドリ症候群と名付けられる

そして、この病原菌が絶滅するまでには
さらに5年後キエルワクチンの開発を待たなければならない

ユールさんを誘拐監禁した犯人は現在もまだ捕まっていない

追記 
この病気に関してはまだまだ未解明の部分が多く
ユールさんの2度目の病原菌の発生に関しては
「キセトマイシン」の副作用によるものではないかという説も
その後の医学学会で発表されている




エントリ8  『私』に意味を…    香月朔夜


私を許してください。

私がここにいることを許してください。


炎のように
 
触った者すべてを傷つけてしまうかもしれないけれど
 
氷のように

冷たく拒絶して氷で閉ざしてしまうかもしれないけれど
 
風のように

流れていってしまうだけの存在かもしれないけれど


私を否定しないでください。

私がここにいることを否定してしまわないでください。


雪のように

すぐに消えて 何かを残すことはできないかもしれないけれど

樹のように

未来に 世の中に 役立つことはできないかもしれないけれど


それでも私は生きています。


桜のように

華やかではないかもしれないけれど


確かにここにいて

今も 想いを抱いて

何かと関わっています


足音みたいに小さくて

香りのように不確かだけど


『私』という存在をなかったことにしないでください。




エントリ9  レディ・エフェメラ    ヒヨリ


今日も今日とて
夜なべしてあなたの影を縫いつけていたら
快調に進んでいたはずの銀の針が突如
スローモーションで自己主張しながらくるりと身を翻して

  (それはさながら)
  (ゴムの弛んだワイパァがフロントガラスに残した水の痕のように)
  (ジプシーの篝火にしゃらり揺らめく踊り子の足飾りのように)
  (見事に美しい光の軌跡)

右手人差し指の腹に突き刺さってしまった

  (右利きなのに右の指に刺すなんて)
  (これはむしろ器用な技と呼べるかもしれないけれど)
  (呼べないかもしれないので黙っておくことにする)

たちまちツプリ盛り上がってきた球形の血は
これまた見事に艶やかな表面張力ぶりで
あっさり拭き取ってしまうには忍びない雰囲気
なにか有効利用する手立てはないかしら

  (そういえば大昔に漫画で読んだ)
  (緑のインクで手紙を書くと想いが叶うって)

それだ
それいこう
緑も赤も同じ同じ

  (実際もし緑と赤が同じだなんて意見まかり通ったら)
  (世界中の信号とそれに付随する良識が無意味になるけど)
  (いちいち気にしてられないので無視無視)



――さて
書き始めは丁寧にいきませんとね

  (ボールペン字習っておくべきだったかも)


『拝啓』


――なのに手へんの途中でインクが切れてびっくり

  (二画しか書けないなんて)
  (いくらなんでもお粗末すぎやしませんか私の血よ)



役立たずの人差し指睨んで
つかのま途方に暮れて

そしてハッと気付いて振り返る

  (が、時すでに遅し)

窓ガラスがたがた
カーテンひらひら
フローリングの床の上には
ほどけた黒い絹糸
よれよれの筆記体で

『探さないでください』

  (……お前も習え、ボールペン字)



けれども私は怒らない
だってあなたの影ですもの
逃げ出したって当たり前
じっとしていられるわけがなかったって
はじめから知ってる
よーく知ってるのです


  (……きっと今頃ウエンディの膝の上で)
  (嘘みたいに大人しく縫いつけられてるに違いないけど)
  (知らないふりしてやるんだそんなのは)



ひどく中途半端な血文字の十字架ふりかざして
いつのまにか心臓に刺さってる銀の針ひき抜いて

がっちり閉めたガラス窓にはガムテープで目張りだってして

  (――外壁に立て掛けた黄金のツルハシの)
  (使われぬまま錆びてゆく冷たい音を聴く)

待ち人帰らぬ 独り寝の夜


注:エフェメラ ephemera〔英〕 =儚いもの。蜻蛉(かげろう)。




エントリ10  夜の浜    相川拓也


雲のない夜空に
月ひとつ 音もたてずに
ひっそりと山に光をそそいでいた

月あかりにうっすら光る山は
眼前の海と
そのおもてに映る月の姿を
静かに見下ろしていた

海辺には男がひとり
真っ黒な拳銃を持って
人形のように立っていた
こめかみに銃当てたまま
固まって

男はそれを撃つことなく
どさりと浜に倒れこむ
遠くの海に映る光は
空に現像されて
悲しそうな顔をしていた
男の後ろからは
ぼんやり光る山が
彼を静かにうけとめる




エントリ11  とめられた自転車の隣で    麻葉



知らない家に囲まれて
僕はずっと見上げてた
どのぐらいの時間だろうね
君が戻ってくるまでずっと
何か面白いものでもあった?
そう不思議そうに
少し笑いながら君が尋ねるまでずっと
見上げて見上げて
それでも飽きない
面白いんじゃなくて心地良い
こんなに知らない街でも
空を切る電線は変わんなくて
隣に並ぶ屋根もただ静かなだけ
朝を降ろした空は気持ち悪いくらいに青い
簡単に行けないよって言ってるような電線
後ろから何度か聞こえる扉の開閉音
ベランダで洗濯バサミを鳴らす足音
面白いんじゃなくて心地良い
それでも飽きない
見上げて見上げて
少し笑いながら君が尋ねるまでずっと
そう不思議そうに
何か面白いものでもあった?
君が戻ってくるまでずっと
どのぐらいの時間だろうね
僕はずっと見上げてた
知らない家に囲まれて




エントリ12  20’04”    ぶるぶる☆どっぐちゃん


「怒ってるんじゃなくて、金が無いだけだろ」
「怒ってるんじゃなくて、金が無いだけよ」

爆発、四散するケーキ
人民の、人民による、人民のためのクリーム

「良いから俺の言うことを聴けよ」
「良いからこれを聴きなよ」
スイッチが押される
「最新アルバムなのよ」
沈黙は十分間に達する
「ジョン・ケージよりも五分以上進化しているな」
「進化か退化か良く解らないけれど」
「でも進化というものは概ねそのように行われるしな」
「ともかくも乾杯しましょう」
「ああ、そうだな」
グラスを高く掲げる
歌を創る、ということは、結局、歌を思い出す、ということなのか
一万人が第九交響曲を絶叫する




エントリ14  目の裏 手の果て    鈴矢大門


言葉繋げて 数珠の花
衣の肌は かさがさ過ぎる
ほろりモノクロ 無二の幹
鬘放てば 風吹けその子

グリア細胞 とろりところり
ホンキートンク? 何の花
橙水色 不束熊手
そろり遠くに 降る夜は緑

プルタブなくした 華々しくした
レンタル脳味噌 薄ピンク色
ぽよりと揺れては 地に堕ちちりん
堂々巡りは ここらでお開き




エントリ15  時空への手紙    さと


  あの頃は ごめんなさい
  
  緩やかな時の流れは 僕の心の中にあり
  激しく熱い時の流れも 僕の心の中にある
   
  どちらも僕の心の中 どちらも僕自身
  スイッチは 何処にもないけど
  コントロールは 自分で 出来ないけど
 
  あなたなら できるんだ
   
  形は同じでも 万華鏡のように
  ただ 彩りの違う
  僕がいるって事を 知っていて
  ほしかった
   
  あの頃は ごめんなさい
  1983.1.10
  あの頃の あなたへ




エントリ16  続 タイム・マシーン    深神椥


「昔に戻りたい」

僕は笑みを浮かべ、

心の中でそう思いながら

タイム・マシーンを動かした……。

「あー、やっと僕は昔に戻れたんだ」

「確かに戻れたけど……」

「腰に刀をつけてる人がいっぱいいる……」




エントリ17  衛星中継    佐藤yuupopic


スリジャヤワルダナプラコッテの、Kタロウッ。
おうい
おうい
お元気ですかア
わたしはね、
元気です
ピピピ

この間ね、夕方ね、
仕事の途中
ちょっと抜け出して
航空便で送っといたから
明後日あたり
きっと届くはず

青地に銀と朱の刺繍の、
シャツ
縫ったのよう
模様はね、
夕陽を背にした鷹みたいダケド、ほんとうは孔雀なの
その
金色の髪の毛に映えるよう
うんと派手で夏らしいヤツ

そっちはあったかいの
それとも凍えちゃうの
こっちはね、
指まで、しん、と冷えて
わたし、今日、新しいマフラーと
帽子を買ったよ
なんだか全然会ってないから
よくわかンなくなっちゃったケド

きっと似合うと思うの
ヨかったら
着てみてね

以上
衛星中継でした
ウラジオストク寄りのハバロフスクの、
yuuより。

ピピピ




エントリ18  White Snow    武流


シンシンと 降る雪に

心は静か

溶かされていく




セツセツと 積もる雪に

心は円か

満たされていく




エントリ19      天内日月


俯いた顔からこぼれた水滴。

後ろを向いて咳を一つ。

「煙草のケムリにやられただけさ」

いけね、声がしゃがれてる。




エントリ20  結晶    大覚アキラ


風はカミソリのように
おれの耳を切り落とそうとして
電信柱の陰から狙っているらしい
くれてやる
くれてやるよ耳ぐらい

おれは幽霊だ
失くしたものが何だったのか
それさえ忘れちまって
途方に暮れて冬の街をほっつき歩く
情けない幽霊だ


窓が真っ白に結露して
クソ寒くって目が覚めた
昨日の真夜中に
裏通りで買った女の太腿に
薔薇を咥えた髑髏の刺青が
あったのかなかったのか
そんな記憶
小便と一緒にトイレに流したよ

一晩中おれの頭の中で流れていた曲は
今朝起きたら
薄紫色の結晶になって枕にへばりついていた
どうやら涙と一緒に流れ出ちまったみたいだ
そのキレイな結晶を
ちょっぴり舐めてみたよ
そしたらまた
あの曲が聴こえてきた

ポケットからセブンスター取り出して
ゆっくりと火をつける
この世で最後の一本みたいに
慎重に
慎重に

この曲
アンタにも
聴こえるかい




エントリ21  掘り起こしてみたらば    ながしろばんり


掘り起こしてみたらば
トウキョウダルマガエルの
真っ黒な目玉で
遥か上空を錆びつかせる
巨大なきりもみを見ているのだった。
あの空は誰のもの
こんろにかけた薬缶の温みをポケットに入れて
いつもの幾許かの不安を
ほぐそうとする

あの人は
許してくれるだろうか

夜になって
ダイナモの光を頼りに家へ帰っても
青々と膨らんだ乳房のような
林檎の陰が目から離れない
幾億の
残像の下で
目に映る影に怯えて
びょうびょうと寒風が入り込むのに
こんなにも原稿用紙が吹きあげられているのに
僕は入口の扉を
締められないでいる。




エントリ22  満月と雪道、そして出口    空人


こんなに どうしようもない気持ちを抱えて歩く帰り道
外灯のない ほの暗い雪道
わたしは やっぱりうまく言えなくて
泣いてばかりで あの人を困らせて

複雑にからみあった迷路のなかを
行っては戻って また違う道を探して
それでも また行き止まって
いつのまにか 深い沼のなかに落ちてしまった

意味もなく 手を握ったり開いたり
涙はまだ止まらない
流れ出た瞬間だけ熱い 涙は
すぐにつめたくなってしまう白状なヤツだ

見上げれば この雪道を照らす 丸い月が
ただひとつの 出口のように思える
ここにいるかぎり あまりにも小さく
追いかけても 決して大きくなることはない あの満月だけが

ふたつめの角に いつもより明るく照らす自動販売機
わたしはノドが渇いていることに気づく
白と青に くっきり色分けされたポカリスウェット
だれもいないこの道に ガラガラとあわてた音がひびく

さむいのに 冷たいスポーツドリンクなんておかしい
はじめて口元が緩んだ
飲み干すと すこしだけ 涙の味がした
あの人はもう 家に帰ったのだろうか

もし 家に帰ってたら だれと話してるんだろう
だまって テレビなんかを 見てるのかもしれない
歯磨きをしているのかもしれない
もしそうなら 鏡を見つめるあの人の横顔に 問い掛けてみたい

こんなに どうしようもない気持ちを抱えて歩く帰り道
外灯のない ほの暗い雪道
そして 迷路
満月の出口は やっぱり遠く 小さい




エントリ23  情熱    木葉一刀(こばかずと)


このパンチを当てた拳の痛みも
キックを喰らったレバーの痛みも心地好い

大の字に倒れた泥濘の校庭
空の青さが気持ち好い

あぁ
俺と同じ
青さ




エントリ24  砂と草    詠理


人だ
黙々と日の沈んでいく砂浜には
人波がまるで草原となってなびいている
ステップはマーチ

唇は紅色染料のいろをして
ぼうとした胞子を噴きあげる
うっとり小波をくり返しながら
産声のない飴のようにかおる

草だ
腐ることのないうしろ姿
気のふれた真似をした泣き声だ
なんて弱々しく、執念ぶかい醜さだろう

私はくべなくてはいけない
やわらかい薪をくべなくては
今朝がたであった灰の流星のように
気の遠くなる薪をくべなくてはいけない

立ち昇らせるのは
赤富士のてっぺん、山火事の輝き
思春期のつまらない言葉ではなかったか
けれどまったく忘れてしまった

草原はざらざらとなびく
表面に赤白いカビを生やして
ステップはマーチ
人は条件づきの行進をつづける

私は拍子にあわせて砂浜に駆け込んだ
薪を探してはときにぼうと胞子を噴き
踵をどうにか余所に返したいのに
草原の背にまじって、また一本の草になる

なんと言おうとも私は
この自動操縦の波を四方にわけて
ゆっくりと根っこから燃やしてやろう
そうして砂に人形だけを残そうと思う




エントリ25  スーパーマーケットへ行こう    8148(略)ソラン


100000種類が勢揃い。

生鮮食料は色鮮やか。
日用雑貨はきめ細か。
さすがにすごいね。
試食もうまいし。

何でも揃う。
でも、欲しい物無し。
それっておかしい?
ここが?
俺が?

とりあえずつまらんから、
助走をつけて、
買い物カートでドリフトしてやる。

こうでもしないと、
うまく笑えないんだ。
ここ最近。




エントリ26  存在    日向さち


手のひらで雪を受け止めたけれど
感触を確かめる前に
消えてなくなってしまった
それと同じくらいの自然さで
あなたは隣にいる

いる、ように見えるだけかもしれない

でも
あなたが抱きしめてくれるなら
熱も鼓動もすべてを分かち合えるなら
そう思ってあなたの顔を見る

あなたと視線が絡んでしまって
それ以上
視線を動かせなくて
立っているのも精一杯で
地面が揺れてるような気がする
息苦しい快感が巡る


この瞬間が
雪のように消えてしまわないで




エントリ27  『量産願望』    橘内 潤


おまえは泣いたはずだ
あのとき、白いベッドに横たわる死体を見て、泣いたはずだ

それなのに、おまえは死体をつくることを望む

目の前を 不注意な子供や老人、犬猫が横切る瞬間を待っている
仕方なく殺したい そう願うのはなぜだ?

肉を嫌うおまえは野菜を食べる。引き千切り、噛み砕く
虫が嫌いで、洗剤をかけて殺す
裏返しになり数十の脚をのたくらせて絶命していく塊を、気味悪そうに眺めている
触るのも見るのも嫌で、掃除機で吸って忘れてしまう


おまえは泣いたはずだ
あのとき、浮腫んだ屍を見つめ、泣いたはずだ

見ることを拒否したわたしに、「強いんだね」と言ったおまえは、
今日もまた、死体を探して、アクセルを踏む





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