第38回詩人バトル
エントリ 作品 作者 文字数
1 夢と僕の隠れんぼ 児島柚樹 487
2 心の奥に 今 紀仁 107
3 哀れなポンポコタヌキさん やまなか たつや 822
4 楽園 有機機械 255
5 東京 佐藤yuupopic 731
6 L Y L 水上 秋霞 220
7 詠理 0
8 生き方。 575
9 今日の名残 木葉一刀(コバカズト) 250
10 ソラ 佐賀 優子 162
11 細きん腐とた 155
12 花見 相川拓也 101
13 死ガ積ム ヨケマキル 172
14 趣味の悪いふたり マリコ 59
15 可愛さの極致 ぶるぶる☆どっぐちゃん 425
16 明日は明日の風が吹く 912
17 tears of diamond 葉月みか 903
18 フラッシュバック 大覚アキラ 90
19 箱小猫 さと 226
20 つながる道、行き止まる道 空人 345
21 独吟 どこからともなく漕いでくる ながしろばんり 710
22 麻葉 490
23 セカンド 五月原華弥 151
24 世間話症候群 鈴矢大門 461
25 (作者の要望により掲載終了しました)
26 虚憎 272

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エントリ1  夢と僕の隠れんぼ     児島柚樹


夢を見つけた

その日から
世界が変わった

電線に止まる雀は孔雀より綺麗に見えて
通学路は赤絨毯を敷いてるように立派に見えて
鉛筆は羽ペンみたく素晴らしく見えた

何もかもが綺麗に見えて
何もかもが楽しくなった

けど

親には言えず

ずっと夢は隠れんぼ

「もういいかい?」
「まだだよ。」

「もういいかい?」
「まだだよ。」

「まだ?」
「まだ。」

「いつになったらいいの?」
「自分に自信がつくまでだよ。」

「いつまでも隠れてられないよ?」

恐いんだ

馬鹿にさせられるのが
反対されるのが

何かを言われたら
きっと言い返せない
私が弱いから

「君の夢は遠いの?」
「そうかもね。」
「友達の家より?地平線の向こうより?」

「ううん。」
「すぐ隣にあるんだ。」

「でも、遠い。」
「なんで?」
「掴もうとしてもすり抜けるから。」
「猫じゃらしみたくスルスルとぬけてくんだ。」

夢というものは多分近いところにあるんだと思うんだ
でもなかなか掴めないんだ

だから追いかけるんだよ
本気で
ただそれだけ見て

歩く
走る



捕まえたよ
逃がさないよ

足は傷だらけ
けど
不思議と痛くない

満足感と達成感
そして
手にした瞬間に
恐さを超えた
何かを手に入れる





「もういいかい?」


「もういいよ。」




エントリ2  心の奥に    今 紀仁


太陽・・・
まぶしい光・・・・・
柊の葉の下で私はその木漏れ日を見ていた。
青い風に揺れて光が万華鏡のようにきれいだった・・・
私はただたたずんでいた。
ただこの景色を目に焼き付けたかった・・
私の胸の奥がポォッと暖かかった・・




エントリ3  哀れなポンポコタヌキさん    やまなか たつや


ポンポコタヌキがやってきた。
痛い痛いと言っている。
ポンポコタヌキは保険証見せて、
三割かぁとつぶやいた。

ポンポコタヌキは青あざ作って、
とってもいたそうおおいたた。
どうしたんだとお医者が聞けば、
キツネにつままれたんだとさ。

お医者がタヌキに病歴聞けば、
今まで病気はしたことない。
健康にならタヌキ一倍、
気を遣っているからと。

アテネも近いことですし、
お体大事にしなくては、
若者ならばいいけれど、
この歳ならばついていく
ことは出来ない時の差に。

とりあえず検査しますから、
寝てくださいと言うお医者。
ポンポコタヌキがベッドに寝れば、
検査ですよと看護士さん、
効かぬ薬と注射器を、
持っている手は震えてる。

山奥の奥の崖っぷち、
どでかい公立病院は、
お紐のついた大金で、
建てられたのさその昔。

だって崖っぷちならば、
建ててもいいと言うお上。
だって大きく作るなら、
投資するよと言うお上。

ポンポコタヌキは次の日死んだ。
全身病に犯されて。
なんでなのさと起こってみても、
真に遺憾と繰り返し、
頭ぺこぺこ院長は。

親戚一同集まった。
はてまてあなたはどちら様。
名前を聞くのも初めてよ。
だってわたしら核家族。

きっとストレスなんですよ、
慰めるように語る叔母。
だってタヌキは外交官、
あの国のため働いた。
北の国から来るものは、
怪しい船とウランの香り。
西の国へと行くものは、
お人のためと語りつつ、
鉄砲下げて旅に出た。
その人思い、悩んでた。

ポンポコタヌキの奥さん来たよ、
生命保険を受け取りに。
けれどゼロ円保険金、
加入の際の告知義務、
違反したから出せないと。

過去の病気をなぜ知ると、
問いただしたよ奥さんが。
そしたら保険会社は言う、
詳しい個人情報なら、
プロバイダから聞きました。

ポンポコタヌキは苦しい生活、
家族で耐えて頑張って、
高い保険をかけてたよ。
なぜならばってこの国は、
長寿国でも一つだけ、
寿命が短い、年金は。

そんなポンポコタヌキさん、
病気になったその訳は、
うまいうまいと毎晩食った
経歴詐称の牛さんだ。

作者付記:    ※ この文章の著作権は以下の者が有します。
         やまなか たつや
             <uem42931@biglobe.ne.jp>
        09時45分04秒 2004年03月09日




エントリ4  楽園    有機機械


この都会の真ん中の真っ暗な部屋の中で、

僕はよく田舎での子供時代の夢を見る。

誰もが友達同士で、

みんな陽気に笑っていて、

ときには無邪気な恋に悩んだりもしていた。

とにかく僕らは希望に満ち溢れていた。

でも、いつの時代のどんな場所にも、

僕らがいる限り人間の醜さや未来への不安が潜んでいただろうし、

今は忘れてしまったたくさんの悲劇や絶望が僕らをおそったことだろう。

楽園なんてどこにもない。

あるとすればそれは母の胎内か墓の土の中か。

それ以外はかわりばえしない人という生き物の一生、

残酷な現実、

そして僕らがいる限り溢れる希望。




エントリ5  東京    佐藤yuupopic


雨、降り止まず。


「テロ防止対策として駅構内のゴミ箱の使用を中止しています」
車内放送に背中、ピリつき
無意識下、
身構え

(無意識?
冴えない嘘つくな。
意識し過ぎなくらい身構えてるくせして)

そう云えばここ数日、明治神宮前のゴミ箱も撤去されていたように思う
符号合う
かちりと
胸の奥
も、一度ピリつき

(わたしの日々がその連なりが成す日々が一切価値なきモノと
誰が判断を下す)

知らぬ間に
背中あわせて
知らぬ間に消えて往くほど怖いことは
ない


狸穴坂を上り
六本木界隈を往きながら見たことのない医学学会の看板を発見
世の中には単にわたしが知らぬだけで無数の組織が存在し
単にわたしが所属していないだけで
いま、まさに、この時
名も知らぬ会合が開かれ閉会しているのだと
不意に
気づかされる

歩き
歩き、
歩く

土踏まずが足りず
思いの外、疲弊
ビニル傘を透かして逆さに映るタワー

大粒
ぼたり
と撃つ
雨、

歩き
歩き、
歩く

打合せ終了
東京法務局港出張所にて
登記簿謄本三通、印鑑証明一通を取得

営団地下鉄は
じき名称を変えると云う
営団地下鉄と東京メトロは同一物であって
その実、
全くの別物である
名は必然的に体を顕す
これはしごく当然で得てして気に止まりにくいが、非常に重要な真実である
数時間後には営団地下鉄ではなきモノと化す乗車物への降り口に往き当たる

傘を閉じる
しずく
赤茶の髪

睫の先

から
袖口
服地をつたいスカートに滑り落ちる
立体の水玉模様
きらきらり
こんなモノがあまりに美しくって

(わたしの日々が日々と日々の連なりが
誰かにとって取るに足らない無数の中の一つであったとしても)



「テロ防止対策として駅構内のゴミ箱の使用を中止しています」


箱電車の、
朝が、
また来る
今日は
昨日から見たら
明日
でも、

決して
昨日の続きではない。





エントリ6  L Y L    水上 秋霞


 何か恥かしい事が言いたいなら日曜の夕方が良い。
世界の終わりがすぐそこに迫っているから。また、新しくなるから。

 何か大きな事がやりたいなら月曜の朝が良い。
世界が新しく作られた朝だから。刻はまだ残っているから。

 全てを諦めたいなら木曜の朝が良い。
何かをするにも、何かを考えるにも遅い朝焼けがあなたを迎えるから。

 但し……、癒されたいならその刻はいつでも良い。
癒されたいならただ身を任せるだけで良いから。
何も考えず、そう。ゆら、ゆら、ゆらら……。

作者付記: 余り捻らずに有りのまま書いてみました。稚拙な中に何かを感じて頂ければ幸いです。



エントリ7      詠理


こおれる花びらが、
アスファルトから駆けあがり、
華奢にえがかれた大地より、
舞いちり、
湧きたち、
よみがえり、
群衆は夢のように、
やさしき恥じらいをささやいて、
人形のごとくに、
なつかしい匂いを叫び、
美しくなめらかにさざめく。
私はいっそう、
肉の煙をくゆらせる。
くもった恋のようにのぼる心は、
はるかな潮を忘れかねて、
かよいなれた岸辺の波の、
こだまする時にふるえ、
花のつめたさばかり、
ながめている。
やがて細やかな植物が滝のように、
おち、
うばわれた瞳は波だつ。
ゆらゆらなだれ、
いざなわれ、
いくつもの疾風を踏みつみ、
ただ一心に、
私は憧れをおいていく。
おしまれる幼さを、
重たく剥いでいくだろう。
やしの木陰で少女が、
伸びあがったりかがんだり、
なる葉のしらべをつかもうとしている。
うっとりと寄りそうからだに、
かなたの季節がおとずれ、
ながれあい、
ここちよいうれいと、
つもるひとりの空想に、
ひたすら夢中になっている。
まぼろしを知らぬ昔、
ああ、
人知れず踏みつむかかとの、
すてていく唯一の土地はすさまじい。
目をあげて、
うつつを越えて、
おどりくる薄光りの大地を、
私ははだしで走りぬける。
そよげ。
かげろうを破り、
かえらない道をいけ。
かわりはてた青草をなかばにめぐり、
うつろいつづける慰めに、
日がさし入り、
したわしいひかりが溢れ、
こいしいぬくさが横切って、
思いはうまれ、
かきおこり、
朽ちぬのぞみにわなないて、
からだはただ、
かなしい。
空はたなびいて、
すこしつかれた雲がゆきかい、
影にうるおい、
暮れていくさびしい土地の、
ありふれたなごりを、
つぶらに見上げ、
胸はどこまでもすんで、
いとおしい血の熱がたぎる。
そよげ。
私はかえらない。
硬質になって、
ぼんやりおびえたり、
しきりに逃げようとはせず、
透きとおることなく、
とおくふかく、
よびたい。
いまあらわれては消える、
まばゆくおとなしい、
幾重にかかるおもかげは、
無数のみどりをいっぱいにふくみ、
ささやかにひらく。
晴れていけ。
感官をまっすぐにのばし、
だれに悟られることもなく、
かぐわしい気配、
きたる若菜を、
あけはなて。




エントリ8  生き方。    波


そこは真っ白だった。なにもない。自分さえも真っ白に見えてしまうくらい白かった。ここはどこなのだろうか?私は死んだのだのか…?もし死んだとしたらこのような真っ白な世界なのか?この世界も悪くない。なにもなくて誰もいない。一人ぼっちの世界。決して良いとはいえないが、悪いともいえないと思う。孤独でもいいと思う。そう私はいままでずっと孤独だった。一人ぼっちだった。友達はいないし親にも見離されて…。私は…生きていても死んでいても同じなのかもしれない。そう…ずっとこのままで…。

ジリリリリリッ!!

……夢だった。なにもかも夢だった。真っ白な世界…。あれは自分の想像だったのか…?

死ぬなんて…死にたいなんて言うのは現実から逃げているだけなんだ。私は今、孤独だ。死んでしまったら変えようのないことだけど、今生きているならば……変えられる。何度失敗してもやり直すことができるんだ。

…生きよう。自分の人生が疲れたというまで精いっぱい生きよう。この世界には生きたくても生きられない人がたくさんいる。その人たちの気持ちはもちろん分からない。生きたくても生きられないと知った時、初めてその人たちの気持ちが分かるはず。でも…そういう気持ちが分からずに自分から死に向かう人は生きたくても生きられない人たちに失礼だ。だから、生きよう。人生の最後まで。

と自分に言い聞かせてみた。

作者付記:初めて投稿しました。この作品は私が初めて書いた詩です。生き方を自分なりに考えながら書きました。少し長くなってしまったのですが、是非、読んでみて下さい。



エントリ9  今日の名残    木葉一刀(コバカズト)


もう何時間が過ぎたのだろう

青空は眩しくて見上げられない
手のひさしでベランダに揺れる
干し切ったばかりの洗濯物を
見上げて居た君が涙を流していたときに

僕は

いつものように
マンドリンを膝に乗せ
奏でることなく
ただ膝の上に乗せ

やがて青が黄色を帯びた頃
部屋の一角に座る青い影だけを僕は見ていた

しかし
瞬く間に黄は赤へと移り変わる

初めて気が付いた
青い影はやがて夜に沈む

畳に足を捕られながらも
ベランダに駆け寄り
洗濯物をなぎ払う

見つめた空の先には
既に落ちきった
赤い今日の名残

部屋のドアを開け放ったまま
駆け出した
はだしのままで




エントリ10  ソラ    佐賀 優子


はるか遠くで 
はるか昔に 死にゆく星がはなつた光

今 この星に届いて 
今 はるか先の未来を願ふ いま君が


 命は 永遠 
    限りない螺旋

 命は 限りなく大きい
   
しかし
    君は うたかたに生き
    限りなく 小さい


    それは 限りない奇跡。

だから 自分の胸に耳をすませば

      宇宙の歌が 響いているのです。




エントリ11      細きん腐とた


煙草吸った
飯食った
水飲んだ
手洗った

煙草吸った
飯食った
水飲んだ
手洗った

煙草吸った
酒飲んだ
床にこぼした
手洗った

風呂沸かした
風呂入った
体拭いた
歯磨いた
煙草吸った

布団入った
寒くなった
毛布出した
上にかけた
まだ寒い
毛布、今度は体に巻いた
暖かくなった

夢を見た
夢から覚めた
覚えていない

ある日死んだ
生まれ変わった
おぎゃーと泣いた




エントリ12  花見    相川拓也


ほう
ほけきょ と春の日
のたり
快晴に
一面の桜花
日ざし
やわらかくかぜがとけていく

桜の下
二人でいる 春の日
並んで
散りゆく桜
お互い
無言で
見やることもなく眺める

咲き乱れ
乱れ散る
桜の花弁
鮮やかに燃えて
春が駆けていく




エントリ13  死ガ積ム    ヨケマキル


嗄声が張られたくぐもり空に
不協和を具備した心の電鈴が
きりりと頭を圧縮し
罅いた


遅日
ただいまあ おかえりい
ただいま帰りました おかえりなさい

青と朱色の封じ目に
鳴るは遅鈍屋の鐘の音か
ちぃんどん ちぃどん 
ちぃんどんどん

つぎはぎの
黒白写真の その裏の
今は滲みし 亡友の夢


ああ 私の目は見るためにあって
死が積む夜明けにしんしんと
聞こえるような耳があって




エントリ14  趣味の悪いふたり    マリコ


あなたは私をかわいいと言う。
私はあなたをかわいいと思う。
他の誰もそんなこと言わないけど。
趣味の悪いふたりでよかったね。



エントリ15  可愛さの極致    ぶるぶる☆どっぐちゃん


高い高いビルの壁に黒いレザーのバニーガールドレス
黒いレザーのピンヒール
そしてその上に妹の手を借りて雅やかな十二単を三つ重ねてボルトで固定する

歩くたびに
ガラス がちゃがちゃと割れる
歩くたびに
ギター めちゃめちゃに歪む

電信柱ばかりが残された風景

行き止まりではボタン一つで全てがばらばらになる
露わになるのだ全てが
露わなのだ滑らかな女の肌が
ねえだからみなさん、そんなものを撮ってないで、これらを撮ったらどうですか? エベレストだとか富士山だとか、モノクロで写した林立するビルの感じだとか、廃墟だとか、接写だとか望遠レンズだとか、そのようなものはよして、これらを撮ったらどうですか?楽しいですよ? わたしも撮りましたが、とても楽しいですよ? 白い裸体は楽しいです。
最後ですよみなさん。これが、最後なんですよ。アンナもノゾミもカナエもタマエも、これで最後にしてしまいますからね。だからみなさん、これを撮ったらどうですか? みなさん、どうですか? どうなんですかみなさん。




エントリ16  明日は明日の風が吹く    陽


明日は明日の風が吹く。

けどね、
昨日を捨てられる訳じゃないんだよ。
だから、僕らは慎重に選択していかなくてはならない。
人生はゲームのコンティニューみたいにやり直しができないから、
せめて、「ああすれば良かった」っていう「後悔」だけはしたくないんだ。

でもね、
失敗してしまうこともある。
その失敗にも結構な大きさの範囲があって、
「ごめんね」ですむものと
「ごめんね」じゃすまないものがあるんだ。
後悔がどんどん押し寄せてきて、時に泣きたくなる。
「何で僕はこれを選択したんだろう」
てね。

ごめんねですまない時、君ならどうする?
死にたくなっちゃう?
どこか遠くに逃げ出しちゃう?
携帯を解約して、行方不明になっちゃう?

それらをすれば逃げられるかもしれない。
けど、
無くなった訳じゃない。
君は、これらの責任を背負わなくちゃいけない。
それは凄く辛いことだ。
責任てのは五トントラックより精神的に重いから。
それらを背負うのは大変。
人によっては潰されちゃう人もいる。
潰されないために、
まずは考えるんだ。
自分ひとりで。
次に友達や上司、近所のおばさんといった
他人に相談するんだ。
背負うのは君。
でも、他人の価値観は必ず君を救う手立てになる。

他人は他人。
失敗するのは自分。
これらの間にジレンマが生じるかもしれないよ。
だけど、三人寄れば何とかの知恵。
三本の矢はおれぬ。
失敗の成功の母・・・あれ?
まぁ、色々いうじゃない?

だからね、自分で考えたあと、周りに尋ねるんだ。
相談した相手が君のことを好きであったなら
責任の重みを少し分けてもってくれるだろう。
それは凄く幸せなことだ。
話すことによって、気持ちが軽くなるってことあるだろう?
あれもそのひとつだと思っていい。

僕がなんでこんなに偉そうかだって?
だって僕は君の一部だから、
だから君のことが一番良く分かるんだ。
考えてごらん。
きっと僕と同じ答えにいきつくから。

そうそう最後に、
涙より笑顔の方が幸せになれるよ。
幸せの価値観はそれぞれだけど、少なくとも君の幸せには十分だろう。
さぁ。前を向こう。
背筋を伸ばして、
目を見開いて。
昨日の続きだけど、君自身も昨日と一緒とは限らないのさ。
僕っていいこというだろう?
なんたって、君自身なんだからね。




エントリ17  tears of diamond    葉月みか


知らない番号からの着信
いつもだったら取ったりなんてしないのに
その日は何かに誘われるように
通話ボタンを押した

たった一本の電話で
ほんの短い言葉だけで
こうもあっけなく世界から切り離されてしまうなんて
その時まで全然知らなかった

誰かの肩がぶつかって
人の波に押されるようにして
私の脚は動き出したけれど
歩いてる感じなんてちっともしなくて
不安定に宙に浮いてるみたいだった

やがて人の波は途切れ
気が付けば暗い路地が現れていた
いつもの帰り道なのに知らない道みたいで
足を踏み出すことができなくて
ぼんやりと発光する自動販売機に
身体を預けるようにして座り込んだ


頭上には かすかな蛾の羽音 頼りない三日月


右手の薬指にはめたリング
ダイヤに似せたガラスが一粒光る安物のリング
周りにあるすべてのものは輪郭が溶けて遠くあやふやな中で
そのリングだけがやけにハッキリと存在していた

しばらく眺めて それから外して そっと左手にはめた

たった 一度だけ


ねえ
いつか本物のダイヤを贈るからって言ったじゃない
ねえ
私に似合うとびきりのを選ぶって言ったじゃない
ねえ
だからその時まで左手は空けておいてって言ったじゃない
ねえ
私は遅刻して待たされるのが嫌いって言ったじゃない
約束を破られるのはもっと嫌いって言ったじゃない
待たせるだけ待たせて居なくなっちゃうなんて最低じゃない
ねえ
こんな安物だけ遺していくなんて話が違うじゃない
ねえ
このリングをどうしたらいいか判らないじゃない
痛くて外せないじゃない
ねえ
今すぐここに来て言い訳の一つくらいしてみなさいよ
じゃないとこんなのあんまりじゃない
ねえ
お願いだから嘘だって言ってよ
悪い冗談だって
ねえ
言ってよ


固くて冷たいリングの上に
次から次へと涙がこぼれて
濡れたガラスがゆらゆら煌いて
――キレイ
乾いた唇で思わず呟いた

ガラスじゃダイヤになれない
もろくてはかなすぎるのよ

安いリング 安いドラマ 安いヒロイン
欲しかったのはこんなものじゃなかった


背中から伝わる熱とモーター音
三日月は私を引き揚げるにはあまりにか細く
蛾の羽は私を慰めるにはあまりに醜い
ただ星が見えないほど汚れた空気に感謝した


これは何の続きで
ここから何処へ行けばいい?
ねえ 教えてよ

ねえ





エントリ18  フラッシュバック    大覚アキラ


通り過ぎる車のライト
棘のように
瞼に突き刺さって抜けない

つめたい耳朶に
くちびるを寄せる

わたしは
誰でもなく
ここは
何処でもない

通り過ぎた車のテールランプの
深い紅色
重い闇に溶けて
もう
消えた




エントリ19  箱小猫    さと


 
 そそと そそくさと そら 空 見上げ  
 泣きに泣いて 濡れ 濡れ濡れに  
 乱夜の箱は どこ捨てた  
    
 鳶色の瞳が 見つめる空は  
 四角く 死角の 夜空のみ  
    
 泣いて 掻いて 笑って 怒って  
 咲いて 散って 舞って 去って  
    
 生くるの 死ぬるの かまわない  
 それが あんたの 逝くところ  
    
 そそと そそくさと そら 空 見上げ  
 泣きに泣いて 濡れ 濡れ濡れに  
 乱夜の猫は どこ捨てた




エントリ20  つながる道、行き止まる道    空人


とくべつ 用があるわけでもないのに
僕はクルマに乗って 1月の街を走る
知らない道を走るのが 好きだ
もう 何年も住んでいる街なのに
いちども通ったことのない道は
きっと いくつもあるんだろうな

夕暮れの街は ドラマチックで
通りにならぶ店を見ながら
ラジオから流れるニュースに 耳を傾けている
パラシュートが開かず 死んでしまったスカイダイバー
火事で逃げ遅れた老人
下水に迷い込んで 助けられた仔犬
暖房のきいたクルマのなかで 僕は
そんな話でしか 生きていることを実感できない

知らない道を どれだけ通り過ぎただろう
もう 何年も住んでいる街なのに
通ったことのある道は
たぶん 数えるくらいなのだろう

信号待ちで 点滅する前のクルマのウィンカーを
じっと見つめている
いまこの瞬間 命も
その灯火を点けたり 消したりしている




エントリ21  独吟 どこからともなく漕いでくる    ながしろばんり


発句 春の海どこからともなく漕いでくる  山頭火
脇  渦潮を見にひらひらと櫂
第三 葉桜の腕に枕を備えおり
雑  油代にもならぬ都都逸
夏月 罷り出て月のちりちりと熱くある
雑  百万分の一の耀(かがや)き  ※1
   
恋  きみに騎乗(の)られ赤光に眼を細むなり
雑  四〇〇〇円のことを思いつつ
秋  彼岸まで夜間兎走の甲斐ありや
秋  食欲の秋は這這の体
雑  ひと口のケーキを山と積みあげつ
雑  瞬時に消せる女の魔術
雑  科学なり三千世界にたまははき  ※2
雑  MIT  ※3
月  月光」をアポロに聴かすハロウイン  ※4
雑  わをんと吼える声の響きぬ
冬花 花屋よりシリウス見えり屋根の上  ※5
雑  コンビニ袋にトリスの小瓶
   
新年 詣(もうで)帰り小脇にいつものごとくある
新年 確か(しっか)と破魔矢握り締めて子ら
雑  残念は正ちゃん帽のほつれなり  ※6
雑  豆こぼしつつ暮れの十字路
雑  ひたひたとぬらりひょんなどすれ違い  ※7
春  眉唾をしてどぜう屋に入る
雑  梁の色を穴があくほど見つめおり
雑  口の端から漏れるいままで
夏恋 花火なり頬を張られて燃えあがる
雑  一、二、三でもダーでもなくて  ※8
月  夜空に穴をあけるほど尖り月
秋  ミルキイウェイをわたる白鳥  ※9
   
雑  をのこ海人工衛星受けとめて
雑  カオス一つの傷にもあらねど  ※10
冬花 空ふくべ庭の山茶花ふくみけり  ※11
冬  鰒(ふぐ)煮えるまで縁側の雪
雑  赤子笑む声に一町耳を傾(む)け
挙句 青龍のごと凧凧上がれ

作者付記:註
1 満月の明るさは太陽の百万分の一、だそうな。
2 たまははき→玉箒木。道を掃いて清めとする。
3 まさちゅーせっつこうかだいがく。
4 月光→ベートーヴェン作曲。
5 シリウス→おおいぬ座の一等星。
6 正ちゃん帽→毛糸で編んだ、頂に毛糸の玉を付けた帽子。1923年(大正12)10月から朝日新聞に連載した絵物語「正チャンの冒険」の主人公がかぶっていたことからいう。(広辞苑第五版より)
7 ぬらりひょん→滑瓢。忙しい最中に家の居間に座っていたりする妖怪。ぬらりくらり、とも。
8 プロレスラー、アントニオ猪木。
9 milkyway.和名天の川。
10 chaos。秩序(cosmos)と対になるところの混沌。
11 禅思想。内は外であり外は内であるという一元論。 cf.)瓢鮎図



エントリ22      麻葉


ゼリービーンズに囲まれてたあの時が
僕の人生で一番色鮮やかではあったけど
モノトーンに包まれていても
やけに明るいと感じるのは
当たり前ながら気の持ちようで
そんな今の自分を僕は結構好き

僕が好きな僕だから
僕の好きな人は僕のことを好きになってくれると思う
そう考えたらまた嬉しくて
わざと黒のスーツを着て夜遊びに出かける
ほぼ黒髪に戻った僕の頭が
余計に空やアスファルトと一体化して
またおもしろくて

僕はこんなにも色に縁のない人に育ったけど
中にある血の色は変わらないように
中にある色は消えてなくて
それを見つけてくれたから好きなんじゃなくて
それを見せられるほど好きってこと

好きがいっぱいで
ここずっといろんな人に好きって言ってて
もちろんみんな違う好きで
でもそれぞれ大好きで 本当に好きで
嬉しくて笑いそうになって
堪えてお風呂でアヒルに向かって笑ってみたり

本当はそういう僕なんです
想像して 想像して
気持ち悪い?
うん そう思う
けどなんだか嬉しいから
  なんだか楽しいから
好きって言えば陽が差し込むから
素直になって
同じように寂しい時に寂しいって言って
そうやって
確認して
また好きに戻る
それの繰り返し


たくさん話をしよう




エントリ23  セカンド    五月原華弥


やった
やられた
あげた
捨てた
取られた
なんでもいいじゃない
あなた以外の人と
前に付き合ってた人と
関係があったのは事実なんだから
オレッテニバンメ?
何言ってるの
あなただって初めてじゃないくせに
恋人いたこと知ってるくせに
そこで落胆するなんて
矛盾極まりないでしょ
私が同じことを望んだら
真っ向から否定しようとするくせに




エントリ24  世間話症候群    鈴矢大門


ああ、君に会いたいよ
メールなんかでは物足りない
ほんとのこの気持ちを
いつまでも残したまま
隠したまま
そんなふうになってしまったのは私の責任だけど
今更だけど
君に会いたいよ

絵文字だらけのメールなんかじゃ
君の事はわからないよ
もっと知りたいと
思うのはやっぱり
気持ち悪い?

会いたいんだって
叫びたくなるよ
君のそばに行っていつまでも
終わらないような昔話をして
いっしょに布団で眠るのさ

妄想なんだ
わかっているよ
それでも君に会いたいんだ
会いたい
話したい

君に
いつか私のこの思いを伝えられるのかな
君は逃げてしまわないだろうか
こんな細い細い関係でもいい
ずっと続いてくれるのならそれで
でも
途切れてしまうのなら、
いっそ
君に伝えて
しまう方がいいのかな
そうして
とぎられてしまう方が
ねえ

そんなことをずっと考えてしまうんだ
会いたいんだ
でも離れたくない
ねえ

好きだよ
だから大事にする
踏み出せない私の事を
どうか気づかないままで

ずっと続くのなら、
このままでもいいなんて
思う私の臆病を
どうか知らないままで

また今度
メールするよ
他愛もない世間話だけが
君と私を繋ぐ
たった一つの真実




エントリ26  虚憎    庭


無尽の憎

醜悪で耐えられない皮膚の枯渇


無口な老

労働せず金がなく
物欲ばかりがその繊維質に変貌した脳を駆けめぐり
一瞬 現実へ

いやになった
ワシはもういやになった

そのいらだちを
当たり散らすかのように
ぶつけ散らすように 憎
ドアを開け閉めして 無尽
毎日がその繰り返しとなって いっそ
狂ってしまえば楽でしょうし
お得意の恍惚
それも逃げとしては有効ですな

だが

醜さ
労働せよ


向けられる憎悪の念
それは無尽でしかも
あらゆる方向より無口な民であればあるほど


滾る悪意
言葉は湾曲してその耳を越え
神経の分断された雑種の爛れに蓄えられることもなく
ただ放置
だから


駄目
無尽に
駄目





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